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美味しいもの食って写真撮って、あとで振り返ってのブログ

食べ歩きの記録です。よく食べ、よく歩きます。

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新富町の「鮨はしもと」でおまかせコース⑧。

一旦池袋まで出て、そこからてくてく歩いて新富町まで戻ります。
 
すっかり予約の取れなくなってしまった鮨はしもとさんへ。
前回の訪問から1か月と空いていませんが、どんな変化があるか楽しみです。
 
2回転を回すのは今の布陣だと結構厳しいそうで、1.5回転くらいで営業されているそう。
この日は2席空けて6名でのスタートとなりました。
 
では、いただきます。
 
もずくとじゅんさい。
夏を感じさせるさっぱりとしたスタート。
 
ちゅるちゅるじゅるんっ。
じゅんさいの強い繊維質を感じます。
 
ひとくちですが、お出汁もしっかり効いています。
 
さて、醤油、塩、わさびが用意されてツマミが始まります。
 
まずはいつも通り白身から・・・
 
銚子の鮎魚女(アイナメ)。
準備されているのを見ている段階ではイサキだと思っていましたが、いやはや鮎魚女とは珍しい。
 
ご主人も「初めて使うかも」とのこと。
 
珍しい魚を入れるには入れるなりの理由があるようで。
柵を見せていただきましたが、かなりの大物。
脂乗りも相当なもので、とろけるような食感ではないのですけどもっちりねっとり舌に絡みます。
 
まろやかな旨みは濃厚、皮目の香ばしさがアクセント。
水分の抜けと脂の入りが絶妙なバランスでした。
 
網走の北寄貝。
いつもは長万部を使われるそうですが、こちらもものがよかったので珍しい産地を使ってみたそう。
 
むっちんと張りのある弾力。
いつもよりは甘みが薄めで旨みが前面に出ています。
醤油も塩もわさびも要らなかったな♪
 
蒸し黒アワビ 肝ソース。
アワビは勝浦、2時間かけてふるんっとやわらかに蒸し上げてあります。
 
ほんの少し歯応えのあるモツのようなゼラチン質系の弾力。
 
「肝ソースは少し残しておいてください」とご主人から一言。
となるともちろん・・・
 
追いシャリ!アオリイカも入ります。
よく和えていただきます。
パラッと炊かれたシャリにねっとりとしたアオリイカ、ともに少し歯に付く食感。
肝ソースがよく絡んであっという間になくなってしまいます。
 
穴子の茶わん蒸し。
他のお客さんは桜海老の茶わん蒸しでしたが、僕は前回いただいていたので変化を付けてくださったようです。
ありがとうございます。
 
甘いツメにわさび、と煮穴子仕上げになっています。
正直甘いツメは、プリンみたいになってしまうのではとあまり気が進まなかったのですが・・・
 
穴子と一緒に口に入ると吸い込まれるように甘さが全く気にならなくなります。
恐らくそれと分からないところで味のベースになっているのだと思います。
卵生地の出汁が口に残って、滞空時間の長い跳躍をスローモーションで見ているような穏やかな味の広がりに包まれます。
 
うっとり。
 
さ、ツマミも終盤。
目の前のロースターに入っている焼き物は何か気になりつつ・・・
 
子持ち蝦蛄。
宮城の七ヶ浜。
あまり蝦蛄は食べ慣れない僕でもはっきり分かる、大きな蝦蛄です。
 
今回は醤油に漬け込んであるそう。
身がちょっと締まって、卵の食感がより強調されています。
 
ちょっとひと悶着あってから登場した焼き物は・・・
 
カマス。
イメージは秋の魚ですが、この時期も大きいのはいるみたいですね。
 
焼き上がる最後に醤油を塗って仕上げます。
 
はしもとさんの焼き物としては塩気が控えめで好みに近かったです。
脂は少ないもののふっくらほんわりとした食感。
水分は抜けて凝縮した旨み、醤油も加わった鼻孔をくすぐる香ばしさ。
 
焼き物が出たらツマミは終了。
この日のガリは比較的厚めのカット。
 
熱々のお茶と改めて出されるおしぼりでリセットして、握りを迎える準備は万端!
 
まずは定番の天草の小肌から。
サイズ、厚みがあって、結構な脂乗り。
新子の季節を目前に控えたこの時期の小肌といえるかもしれません。
 
丁寧な仕事で引き出されたシャープな旨みが脂に乗って広がります。
厚い身にたんまり蓄えた旨みと豊潤な脂は、いつもの小肌と比べてもスケールの大きな味わいでした。
 
こちらも定番の春子鯛昆布締め。
やや脂は薄めですが、その分香りがくっきりと出ます。
 
まぐろ赤身漬け。
これは噴火湾のもの。
 
「赤身だけど少し脂が入っていた」そうで、確かに赤身にはない口どけ。
とはいえちゃんとそれらしい酸味も出ていて、赤身であることは間違いなさそう。
 
「赤身」「トロ」とは結局後付けの区切りでしかなくて、生きたもののことですから線引きの出来ないところがありますね。
面白いです。
 
三陸の本ます。
前回に続いて藁で燻して香りを付けたものです。
 
クリーミーな濃厚さのある脂、皮目の香ばしさに藁の香り。
ちょっとますの香りは弱かったようにも思いますが、脂リッチでやはりインパクトは随一の1貫でした。
 
とり貝。
磯の香りと貝の甘みががっしりタッグを組んだ、夏向けの爽やかなネタですね。
ワタの側だけをサッとボイルして、歯応えは強めに残してあります。
 
さてさて、大詰めですよ。
追加分のことなども考えつつ、心して。
 
トロ(蛇腹)。
はしもとさんでは脂の強いのはそれほど使われませんが、今回は買いやすい値段であったのだそうでこんなお腹の部分を。
こちらは赤身で出たマグロとは別物で、境港のものだそう。
 
このスジを噛みしめて脂を搾り出すようにしていただきます。
季節柄か個体差か、甘みはほどほどでトロにしては爽やかな酸味を感じます。
 
ヤヴァヤヴァ。
 
島根県浜田の鯵。
ある程度以上のレベルのお店は釣り鯵を使う傾向がありますが、はしもとさんは一貫して網で獲ったものを使っていらっしゃいます。
 
釣りの方がもっとちゅるりと脂が食感にモロに出ている感じだったかな。
こちらは比較的身が詰まって、香りと旨みベースの味わい。
 
車海老。
いつも通り尻尾を落として提供されます。
締まりのある身がぷりっぷり、照り返る赤と白のコントラスト。
 
今回は火入れがかなり強め。
食感に透明感はありませんが、海老の味が濃く出ています。
いつもは甘みが強く感じられますが、今回はそれ以外の要素も強く感じられました。
ベストのタイミングは過ぎている気がしましたが、違いを楽しむことができたのは結構アリ。
 
次はどう来るか。
 
「あとウニ、穴子が出て、玉子とお椀で一通りです。」
ということで、出ていないネタを確認して追加するものを決めましょ。
 
長崎・壱岐の赤ウニ。
小鉢にシャリを盛って赤ウニをトッピング、仕上げに醤油をひと刷毛。
 
暑い季節は身がだれにくい赤ウニ。
 
甘みは深く、香りは強く。
 
ここで改めてシャリとわさびも味わいます。
 
穴子。
前回はいい穴子がないということでいただけませんでしたが、今回は茶わん蒸しに続いて握りもしっかり堪能できました。
まろやかな甘み、スイーツ系の1貫です。
 
さて、ここからお楽しみの追加タイム。
僕が今回お願いしたのは2貫!まずは・・・
 
鮎魚女!
次にいついただけるのか・・・いや果たしてまたいただける機会があるのかさえ分かったものではありませんからね。
一魚一会、機会を大切にしましょう。
 
ちなみにはしもとさんもあまり握った経験がないそうで、
「皮目は付いたままの方がいいですか?」
「わざわざ聞かれるということは、付いたままだと握りにくいですか?」
「ふふふ」
「ふふふ、握りやすいようにしてください。」
 
ありがとうございます(笑)。
 
ツマミでいただいたときに結構食感があったのでどう仕上げてくるかと思いましたが、薄く切って3枚付け!
皮目で描く市松模様のおまけ付き。
 
完璧だよ・・・完璧だよはしもとさん。
ミルキーさを湛えた脂に白身の旨み、皮目の香ばしさが口の中で弾けるように広がって、薄く切りたてた身がシャリを文字通り包み込みます。
 
こりゃ美味い!
ぜひまた入れて欲しい!
 
最後は鰯。
銚子だったかな?
酢〆にして脂が凝固してぽってりとした歯応え。
 
これから北上してトロのように脂が乗ってきますとのこと。
去年の鰯は爆発的によかっただけに反動が心配だったりしますが、素直に楽しみにして待ちましょう。
 
玉子。
海老の香りがしっかり、表面はさっくり香ばしく中はしっとり。
 
最後はしじみのお椀。
芯に鋭さはありませんが、穏やかに太く重いしじみの滋味を軸に濃厚な香りが漂います。
霧深い空間に入り込んでいくような味わいです。
 
あまり使ったことのない鮎魚女を使うことに関して、
「本当はそんなのをお出しするのは失礼なんですけどね」
とご主人はこの日恐縮しきりでした。
でもこの日は爆発的に大成功だったと思います♪
 
実に3000種類以上も存在するという魚介類を武器に戦うわけですから、新しいものにいくら挑戦したって挑戦しすぎるということはない気がします。
もちろん「鮨はしもとらしいもの」を求めていらっしゃるお客さんもいるでしょうから、その辺のバランスは考える必要があるのでしょうけど。
 
とにかくご主人の好きなように、楽しめるようにやっていただきたいものです。
 
幸せな夜でした。

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