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美味しいもの食って写真撮って、あとで振り返ってのブログ

食べ歩きの記録です。よく食べ、よく歩きます。

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清澄白河の「il tram」で6月のコース(マンガリッツァ豚のロースト、仔羊のアマトリチャーナ、カマスのロートロ他)。

お昼は予約していたil tram(イルトラム)さんへ。
 
今月のメインは「マンガリッツァ豚」とのことでしたので、パートナーはもちろんこの方
 
ご挨拶して着席、軽い近況報告を。
 
いいお寿司屋さんは予約が取れませんねえ。
 
フォカッチャが登場。
一時期は国産小麦とイタリア産小麦の配合割合を毎月変えていらっしゃいましたが、去年の8月頃からイタリア産のみに落ち着いていらっしゃいます。
 
その中でもあえて変化を付けていらっしゃるのか分かりませんが、当初に比べてかなりドライになってきた印象があります。
単体だとそんなに進まないのですけど、ソースと合わせたときに香りの立ち方が力強いタイプ。
 
ホワイトアスパラガスのズッパ 半熟卵 パルミジャーノのクロッカンテ。
 
HPで発表したメニューでは「グリーンアスパラ」だったそうですが、この日はホワイトアスパラがあったから使ってみたそう。
 
ホワイトアスパラの香りが心地よく詰まっていますが、独特の捉えどころのない香り。
そこへパルミジャーノの苦みが入ると味がバシッと決まる、この関係性はスペシャリテのチコリのローストとゴルゴンゾーラの関係に近いものがあるかもしれません。
 
ズッパの半熟卵(温玉?)は、必ずしも存在意義が感じられない月もあるのですけど、今回は卵を割った後の味のバランスもとても良かったように思います。
 
今月の"壺"は…
 
ブッラータ パプリカ レモン。
パプリカは、色味に見た目負けしない鮮やかな香り、レモンでさっぱりさわやか。
 
オレンジのパプリカをお使いなのかと思いきや、赤のパプリカを使ってこの色合いになるのだそうです。
 
入梅鰯 コリアンダー ラディッシュ アーモンド。
こちらもメニュー上は「初鰹」でしたが、変更があったそう。
 
梅雨どきの絶好調な鰯をいただけるとあれば、何の文句もございません。
 
鰯とラディッシュはシャンパンビネガーでマリネ、ローストしたアーモンドとピンクペッパーがアクセントになっています。
 
酸味が強いのとも違って「かなりさわやか」なシャンパンビネガーが全体を支配していて、とても軽い味わい。
とはいえ鰯はしっかり脂が乗って、またそれでいて落ち着いた食感。
ラディッシュは極薄にスライスしたうえに、表面に包丁を入れていたのか食感がとても軽くなっていました。
 
カマス 焼きとうもろこし オレガノ。
寒い季節の定番「ヴァポーレ」に替わって、これからの時期楽しみになる通称「グルグル」。
 
「塩をして2,3日、水分を抜いて使ってます」などという説明をカウンターでされると、寿司店にいるものと錯覚してしまいそう。
 
「今まではフワフワに仕上げていたのが、締まった感じになっています」
 
もちろん一夜干しの焼き物なんかと比べるとソフトな食感ですが、表面のキュッと締まった感じが中心部に近い方まで少し干渉しているようなイメージ。
そして味わいの面では、旨みに食感以上の凝縮感があります。
 
焼きとうもろこしは甘いのは当然のこと、旨みもしっかりしていました。
焼いているからなのかな?
 
甘いだけのとうもろこしだとカマスの味に「乗っかる」イメージになりますが、とうもろこしの旨みが強く出ると反対にカマスの脂の甘みなんかが強調されますね。
 
チコリの1時間ロースト ゴルゴンゾーラ・ピカンテ。
 
今回は定番の(と言いつつ最近は珍しく)ベルギー産、「久しぶりに丸々太ってる」チコリがあったのだそう。
 
「毎回食べても飽きない」「毎回感動できる」と幾度となく書いてきたこちらのスペシャリテですが、
 
今回は特に素晴らしかったです、本当に。
味が濃くて、くっきりしていて…今まで食べた中で1番だなあと思いながらいただきました。
 
逆に今回はゴルゴンゾーラがなくても味が完成されていたかも。
 
チコリだけでガンガン進んでしまって、珍しくゴルゴンゾーラを若干持て余し気味に。
 
チコリの個体差や、温度・湿度といった気候に関係なくいつも同じ調理にするのがこの料理のポリシー。
個体差、季節感が仕上がりに出るのを毎月の楽しみにできるようにしてくださっているのですよ。
 
また来月「今月が1番だ!」と言うかもしれませんが、それは僕の言葉が軽いのではなく、チコリと季節のせいだということをご理解いただければと思います。
でも今回は、ちゃんとこうして説明したくなるほどに本当に美味しかったです。
 
仔羊のアマトリチャーナ シブレット タリオリーニ。
ド定番トマトソースのパスタ、と見えるビジュアルですが、
肉料理並に満足感のある肉の量と、シェフ自ら干しているというセミドライトマトのフルーティーな味わいが"il tram流派"を感じさせます。
 
手打ちのタリオリーニはもっちもちで甘みのある麺。
 
トマトソースも甘みが印象的ですが、麺とは方向性の違う甘みなので味わいに深みが出ますね。
 
そして仔羊がたっぷり。
トマトソースで見えませんが、ソースの7,8割が肉だと思ってご覧いただければ幸いでございます。
 
そしてカウンター上方を見上げると、メインの豚が焼き上がってきました。
 
「ま!奥さん!アレがマンガリッツァ豚だそうだわよ!」
 
最近この一幕が定番化していて、最初は「楽しませてくださっている」のかと思っていましたが、実は「シェフが楽しんでいる」のではないかという気がし始めています。
 
マンガリッツァ豚のロースト ヒバーチ 柑橘類のモスタルダ。
 
ハンガリーの国宝銘柄豚「マンガリッツァ豚」に、沖縄の香辛料ヒバーチ、「モスタルダ」はマスタード風味のソースで、さらにバルサミコのソース、パプリカがあしらわれています。
 
どれだけ楽しめるんだ…この1皿は…
 
どれも美味しいのですけど、モスタルダやバルサミコ辺りを付けると、普通に美味しい豚肉の「あるある」な美味しさになってしまう気がしたので、個人的にはマンガリッツァをストレートに味わえるヒバーチやパプリカが好みかも。
 
モスタルダとバルサミコも美味しいですけどね!あえて言うなら、ということですからね!
 
お肉の質、シェフの火入れ。
双方が化学反応を起こして、混ぜるな危険とも言うべき爆発的な効果が出ています。
 
ブチンと赤身の繊維を噛みちぎると、ジュワッと肉汁。
旨い、甘い。
 
ベーコンで引き出されている豚肉の旨みにも近いかも、塩をして燻製をして…と手を加える中で凝縮されるその旨みにも似た明朗なウマさ。
 
そして脂の濃厚な味わいも特筆すべきポイント。
表面はカリッと焼き固めて、中からじゅんわりと流れ出てくる脂の暴流に僕の心は溺れてしまうというシステム。
 
マンガリッツァ豚はそれ自体破壊的に美味しいので、色んな調理のしようがあるかもしれませんが、ちょっと「コレ以上」が存在するというのは想像できません。
 
il tramさんのコースはどの料理も素晴らしくて、振り返って特によかった料理の感想を言おうとすると結局全部になってしまうことが多いのですが。
やはり最後にマンガリッツァ豚が出る月に限っては、マンガリッツァ豚のことだけで感想が延々続いてしまったりします。
 
今月も幸福な気持ちにさせていただきました。
ごちそうさまでした!

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