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美味しいもの食って写真撮って、あとで振り返ってのブログ

食べ歩きの記録です。よく食べ、よく歩きます。

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鹿児島の「伊場カレー」で伊場カレー(苺、豚軟骨、有機野菜他)。

2月8日(木)、久しぶりに鹿児島にきました。
 
今年の鹿児島は大河ドラマモードですね。
2008年の「篤姫」以来、西郷さんと篤姫が2大キャラクターのように並び立っていたりもしましたが、現在はすっかり西郷さん一色状態。
 
もともと鹿児島における西郷さんの存在というのは、単なる「人気キャラクター」でないのはもちろん「偉人」という感じですらなくて、いわば「心の拠り所」みたいなものだというイメージがあります。
「2018年大河ドラマ『西郷どん』に決定」みたいな、発表された当時の地元紙の大見出し切り抜いて貼ってあるところとか、今回の短い滞在で何度も目にしたほどで。
 
いまの鹿児島、とても雰囲気ですよ。
 
と、突然の鹿児島PRから長々と始まりましたが、やってきたのは僕の「心の拠り所」。
 
裏手に市役所、正面に裁判所と、権力に挟まれた形で営業する「伊場カレー」さんです。
 
「カウンターに緊張感のあるお店ですけど大丈夫ですか?」
と温かく迎え入れていただいて着席。
 
アットホームな雰囲気で、ご主人がお客さんとほのぼのと会話していらっしゃいました。
 
お任せでお願いしたカレー、辛さだけ確認していただきましたが結局「お任せで」と答えてしまいました。
 
よどみのない手さばきでサクサクと仕上げてくださいましたが、
「今色々入れていますけど、どんな風にするかとか何も考えてないんですよね」
とご主人。
 
「結構食べられます?」
僕、野菜と果物に関してはいくらでも食べられる気がしています。
「分かりました」
 
という会話のせいもあってか、モリモリにしてくださいました。
煽ってしまった形になってしまって申し訳ありませんでしたが、熱々のカレーの上の鰹節以上に心躍ります。
 
苺。
「『一期一会』ということで!言葉遊びお好きですもんね(^^)」
 
絶好調ですね(‛・ω・´;)
 
この日のカレーはビターでシャープ。
ざっくりした形容詞で言うなら「カッコイイ」味がしました。
 
結構パンチの強い味はしますが香りは深いところにある感じで、表向きは野菜など具材の香りがはっきりと発揮されているのが心地よいバランス。
 
というわけで本日の主役たち。
 
ブロッコリー、春菊、人参、特にこの辺りがハチャメチャに味が濃くて野菜としてシンプルに美味しかったです。
 
苺の味はカレーにやや飲まれ気味で、そこが却って「浮わついた」ところがなくまとまりのある味わいになっていた気がします。
 
お肉は軟骨とロースか肩ロース辺りの2種類かな?
ロースか肩ロースの方の優しい火入れが相変わらずの出来ばえで、上品な味に仕上がっていました。
 
初めて遠路はるばるいらっしゃったという先客さんは「また来ます!」という言葉を残して、この人は本当にまた来るな…と感じさせる満面の笑みで退店。
 
お客さんが引けたタイミングでご主人が色々お話を聞かせてくださいました。
ご主人のカレーを作るうえでの哲学のようなものをざっくり要約すると、「カレーはこう作るもの」「この食材はこう調理するもの」みたいな伝統のようなものには縛られたくないと。
自分で1番美味しいと、良いと感じられるように調理したいのだと。
でもそれが結局突き詰めるとフレンチだとかイタリアンだとかのちゃんとした調理法に通ずるものになっていたり、野菜は「有機野菜」とこだわっているわけではないけど、いいと思うものを選んだ結果ほとんど有機野菜になってしまっていたりする。
で築き上げたものが自分の中で「伝統のようなもの」になってしまっていて、それに結局それに縛られていたりする…と悩ましい想いがあるようでした。
 
その話を伺ったとき、ちょうど先日も書いたシェ・イノの話を思い出してちょっと鳥肌モノでした。
井上シェフは「フレンチの伝統を崩さない」というポリシーを示したうえで「創造のない伝統に進歩はない」と付け加えて、伝統を守るために新しいものを創造していくものとして、日々の仕事を表現されていたのですよ。
対して伊場さんは、「伝統に縛られたくない」と基本姿勢は真逆ながら、日々の仕事は「創造のない伝統に進歩はない」と話す井上シェフと重なっているように思えるのですよね。
 
「創造のない伝統に進歩はない。伝統を持たない創造には、持続力がない」
 
伊場さんはこの日のカレーにも「詳細は言えないけど、普通は入れないレベルのあるものをガッツリ入れた」そうで「65さんももっと頻繁にいらっしゃっていただけるなら面白いもの色々出したいんですけどね」と仰ってくださいました。
"伝統"には目もくれない今の伊場さんは、レシピも何も作らず「持続力」はなくとも日々「美味しいもの」を作っていらっしゃるのですよね。
 
「伝統のようなもの」が出來てしまうと仰っていらっしゃいましたが、それが何か伊場さんの中で「伝統」として確固たるものとなる日が来たとき「創造」が「伝統」を持って「持続力」のあるものができあがっていくのかもしれません。
 
今回も美味しかったです。
 
長くなりました。
ご清聴ありがとうございました。

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