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美味しいもの食って写真撮って、あとで振り返ってのブログ

食べ歩きの記録です。よく食べ、よく歩きます。

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新富町の「鮨はしもと」でおまかせコース14。

4月5日(木)、仕事帰りに鮨はしもとさんへ。
 
お寿司の魅力として「季節を感じられる」ということが語られることがありますが、中でも"冬"というものは特別で、冬しかないもの、通年あっても冬がとび抜けて美味しいものがネタ箱にあふれんばかりに並ぶのですよね。
 
どんな厳冬でも、お寿司屋さんがある限り冬が待ち遠しく、冬がくれば去るのが侘びしく思われるのが食い意地というもので。
 
では他の季節はつまらないかというと、そういうわけではないのが、寿司が「季節を感じられる」と言われる所以。
 
雑な言い方をしてしまえば、12球団の4番を集めたようなスターチームの見栄えも良し、一見見劣りする伏兵集団がスターチームを凌駕するのもまだ味があって良し。
 
やっぱり寿司って素晴らしいなあと、改めて感じることのできる季節が始まる気もするのですよね。
 
さて、着席。
 
この日のカウンターは壁の低い方が揃っていらっしゃって、何やら楽しくなりそうな気配。
 
お茶をいただきまして、コースがスタートします。
 
そら豆。
塩気はしっかり付けてあったように思います。
 
そら豆の皮は、食べちゃう派です。
 
子どもの頃は剥いて食べるように教わったのか剥いていた記憶がありますが、あるとき「食べれば食物繊維こそあれ、害はない」と聞いてからは何も考えずに食べてしまうようになっています。
 
こういうお店とか、日本料理のお店で出されたときはどうするのがベターとかあるのでしょうかねえ。
 
醤油、わさび、塩が出たらツマミがスタートの合図。
 
個人的にあまりこの辺りのアイテムは使うことはないのですけど、わさびだけはちびちびと食べてあっという間になくなってしまいます。
 
お寿司屋さんで「築地の~~で買ってる」と伺ったりもするので、買ってみようと思ったこともあるのですけど、こういうのはいいわさびであることはもちろん、おろし手の器量にもよるようですからね。
 
最初は定番の青森のひらめと、ちょっと珍しいあいなめ。
 
ひらめは、毎回分かっちゃいるのですけど想像を超えてくるソフトな質感で、朝締めというのがにわかには信じられないほど。
 
気仙沼のあいなめ。
 
以前にも1度いただいて、大変印象に残っているネタ。
香ばしい皮目、ほどよい脂に、噛むとムチッと筋が粘る感じの歯切れ。
 
初鰹。
 
4月になれば北の方にきているのかな、と思いきや、鹿児島のものだそう。
 
ご主人曰く「鉄分が少ない感じ」とのことで、なるほど確かに香りが澄んで感じられます。
 
鰹好きな花沢さん系の方は物足りなく感じられる懸念があるかもしれませんが、爽やかな酸のある香りが鮮烈なのでご心配なく。
 
ほたるいか、花わさび、シャリ。
ご主人が目の前で一心不乱にほたるいかを刻んでいらっしゃったのでどうなることかと固唾を飲んで見守っておりましたが、こうなるのですねえ。
 
ほたるいかの肝と相性のいい酸味があるのは何だっけ…と一瞬考えましたが、シャリの酸味ですねえ。
 
胡麻は香り良し、食感良しで流行りの二刀流。
 
花わさびはお出汁に漬け込んでいらっしゃるのだったか、ジャキジャキッとこちらも食感のバリエーションに。
 
これは何か似た形ででも真似してみたいかも。
 
炙った平貝とオリーブオイルで焼いた牡蠣。
ひたひたになっているのは土佐酢。
 
あしらってある青みは、うるい、こごみ、山うど。
 
平貝はギュギュと詰まったような強い弾力がありますが、弾けるような歯切れよい食感。
 
甘さを抑えた旨み推しの味わいに、炙って開放された春らしい貝の香り。
 
牡蠣は、クリーミーにすら感じられるなめらかな食感で、独特の香りが飛んで淡い旨み。
 
味気ないわけではなくて、水彩画で描いたような繊細な魅力があります。
 
これまたキャンバスが土佐酢だからこそ、淡い色も映えているように感じられました。
 
ふう。
 
最高。
 
定番の茶わん蒸し。
 
茶わんが変わりましたねえ。
意図してのことか分かりませんが、少し小振りになったような。
 
はまぐりと根三つ葉。
 
はまぐりの香りに凄み。。
抜けのよい香りは、勢いすら感じます。
 
以前よりも少ししっかりめの食感になっていたような気もしますが、振れ幅の範疇かもしれません。
 
意外な組み合わせを選ばれることもありましたが、今回はシンプルながらとにかく味が良くて、今までいただいた中でもトップレベルに印象に残る茶わん蒸しでした。
 
まかじき塩漬け、あん肝。
 
どのお料理も素晴らしいのですけど、このお皿が出たときは特に店内がざわつきました。
 
ざわつきの原因は、このまかじき塩漬け。
淡い桜色の生ハムのようなビジュアル。
 
塊のまま漬け込んでしっかり水分を抜くそうで、身の引き締まりに締まった具合はこのスライスの薄さから伝わるでしょうか。
 
凝縮した旨み、香りが素晴らしかったです。
 
あん肝は定番の甘く炊いたもの。
 
受験生の頃に、極限まで追い込んだ脳にキャラメルを補給して、稲妻が走るようにエネルギーがみなぎったのを思い出します。
 
焼き物は、えぼだい。
はしもとさんの焼き物は、通い始めはちょっと好みと外れるイメージがあったのですが、段々好みに近付いてきている気がするのは、僕の好みがはしもとさんの魅力に吸い寄せられているだけなのでしょうか。
 
今回は、身をふっくら仕上げながらもすごかったのが、皮目。
パキパキに割れて砕け散るのです。
 
顕微鏡の観察でプレパラートの上に乗せるカバーガラスのような。
「ほおお…!」と思わずため息の漏れてしまう、見事な火入れでした。
 
ガリが登場したら、握りのスタート。
 
定番の天草の小肌から。
 
酢は淡く、厚みのある身の旨みが前面に。
はしもとさんの小肌は後から追うように脂がぐーーっと支配的な味わいになることもありますが、今回の脂は穏やかでした。
シャリが映えます。
 
あおりいか。
身を3枚(だったかな?)に薄く引いて、千切りのようにしたものをギュッとまとめて1貫に。
 
熟成を深めないでも、包丁を細かく入れることで甘みが出るのだとか。
 
下田のまぐろ、この日は同じまぐろで3種出ましたが、まずは赤身。
 
赤身とはいってもやや白んだ色味で、じんわり脂が広がります。
旨いです。
 
一旦落ち着きまして。
 
鳥貝。
つい先日にいただいた「鮨由う」さんよりも艶めかしい舌触りに感じたのですけど、ご主人曰く「普通に火を入れていますよ」とのこと。
この辺りの感覚は職人さんごとに基準が違うのでしょうね。
 
続いてのまぐろは中トロ。
口に入れてまず感じるのは、とろんとまどろむような舌触り。
 
一瞬「あら?」と思いますが、随分ゆっくりと脂のミルキーな甘みが現れる印象。
「…おー…おーー……おーーー」といただきました。
 
羅臼のマスノスケ。
1月にもいただきましたが、そのときは20kgを超える大物。
今回も15kgとなかなかのサイズだったようですが、前回のインパクトが強すぎてやや見劣りする感も。
美味しいものを食べる副作用が、こういうときに出ますね。
先に鮭鱒系の香りがきて、次第にバターに近い濃い脂の旨みに替わります。
 
鹿児島、吾妻の鯵。
片身1枚、小振りで肥った魚体。
 
脂ではなく旨み、とろけるのではなく芯のあるようなジャキッと歯切れのいい食感。
中に仕込んである薬味があとにまで余韻を残すのがまた秀逸な香りの印象を生みます。
 
3種目のまぐろ、最後の刺客は「剥がし」。
融けない固い筋のあるところを、筋に沿って剥がした大トロ。
薄いネタが舌に絡みます。
 
カウンターの反対の端から順に提供されていってみなさん大絶賛されていたのですけど、僕の前辺りでご主人が、
「寿司屋としてはまぐろで褒められても、それは職人の腕ではなくてネタの美味しさだから素直に喜べないところがあるんですよね…」
と苦笑いされたので、
「あーなるほど…」
と納得してからパクッといただきましたが、
「美味しいです!」
と言わずにはいられませんでしたごめんなさい。
 
車海老。
これまた「鮨由う」さんと比べると、かなり小振りに感じられたのですけど、味はやはりはしもとさんの海老が段違いにいいですね。
 
ちょっと火入れは浅めでしたが、味はまあまあ出ていました。
 
さあラストスパートです。
 
大間のムラサキウニ。
化粧箱に「ダイセン」とあるのは何か気になっていたのですけど、業者さんの名前のようですね。
他のお店でも見かけて、地名や漁港の名前かと思って検索してもみつからなくて不思議に思っていたのですよ。
 
見た目は悪いけど味はピカイチと説明されるこのウニ。
今回もピカイチでした。
甘いです。
 
対馬の穴子。
今回はやや身が薄かったような。
穴子自体はこれはこれで美味しくいただけますが、ツメはやや強く出てしまうような気がしますね。
 
シャリは穴子のときの握り方が、1番好きです。
 
追加分もお願いしながら、〆のしじみのお味噌汁を。
 
残りのネタをひと通り伺って、春なので"貝"に決定。
 
ミル貝。
想像したよりはるかに強い甘み。
 
ミル貝ってこんなに甘かったですっけねえ。
とはいえまだあまり場数を踏んでいないネタなので、見かけたらお勉強にいただいていこうと思います。
 
玉子。
一部、半熟といっても過言ではないほどの火入れでした。
そうなるといよいよスイーツ化してしましますが、個人的には好きです。
 
築地で食事をしていると季節の変化を感じられるようでいて、実は初物がいち早かったり、名残が最後の最後まで残っていたり。
変化はなだらかなのですよね。
はしもとさんではすっかり春になっていて、改めて気付かされました。
 
ごちそう様でした。
またよろしくお願いします。

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