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美味しいもの食って写真撮って、あとで振り返ってのブログ

築地を中心に食べ歩いています。よく食べ、よく歩きます。

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白金台の「アルゴリズム」でブレス鳩 血と無花果と赤ワインのソース、真鯛のポアレ 焼き茄子のソース、赤足海老とマンゴスチン、エゾバフンウニ ウニのサバイヨン アールグレイのサブレ、鰯のピサラディエール。

「アルゴリズム」という言葉は、最近だとネット関係で聞くことが多いでしょうか。
一定の"公式"に従った計算によって事が進むというような意味合いで、分かりやすいところで言うと検索結果の表示順位の決まり方なんかがそうですよね。
 
ただ「一般化」「平均化」したようなフリをして、実はその"公式"自体が偏向や誘導をはらんでいるのではないかと批判にさらされたりもすることもあります。
 
"公式"といえば、学生時代の数学だって「公式を丸暗記すればいいわけではない。計算の過程が大事だ」みたいな話はあって、個人的にはどこかネガティブなイメージの付きまとう言葉なのですよね。
 
そんな「アルゴリズム」を店名に冠した白金台のフレンチレストランへ。
2017年オープンで、シェフはパリや東京の「カンテサンス」さんで修行した方。
 
国内外の様々な業態・種類のフランス料理店で得た経験・技術・感性を、料理・ワイン・空間等レストラン内すべての"アルゴリズム"を再考し、 昇華・洗練されたものを
具現化します。
 色々な角度からの「解」をお楽しみ頂けたら幸いです。
~お店公式HP「フレンチ方程式」~
「白紙のメニュー」が有名なカンテサンスさんに対して、こちらはタブレット端末を使ったムービー付きのコンセプト・メニューのプレゼンテーションでスタート。
 
メニューは各お料理3項目ずつ"ヒント"が呈示されています。
 
デザートの「カブトムシ」がインパクト大。
 
この日は驚いたことに、最初から最後まで僕ひとりの貸し切り状態で、お店の方に随分構っていただけました。
 
最初に結論を申し上げると、とても楽しい時間でした。
 
以下メニュー名は、タブレットでの表示通りにさせていただきます。
 
南仏、鰯、オニオンコンフィ。
 
南仏の郷土料理ピサラディエールに着想を得たアミューズ。
元ネタはピザのようなもののようです。
 
締まりのある脂はひやっと冷たい仕上がり。
 
上にはオリーブやタイムが乗ります。
 
土台はパンスフレというサクッと軽く、香ばしい生地。
 
間にはオニオンコンフィ、要するに飴色玉ねぎを挟んでありますね。
 
形状としてはお寿司の握りにも近いところがありますね。
 
塩気もまあまあ強めでしたが、香りや酸味、甘みに苦みと、味わいのキャラが立っていて舌の目を覚ましてくれるようなアミューズでした。
 
アミューズの大事な役割である「掴み」は完璧。
 
稚鮎、kiwi、手長タコ。
和歌山・紀ノ川の稚鮎をフリットにして、キウイを添え、ソースはタコをペースト状にしたもの。
 
食材の組み合わせといい、ソースといい、?マークが無数に浮かぶ構成です。
 
稚鮎は香ばしさと、味の強いワタと。
キウイは常温より少し温度が高いくらいでしょうか、酸味だけでなく甘みもしっかりと感じられます。
 
手長タコのソースは、分かりやすくタコの香りで旨みが強め。
うーむ、何というか不思議に一体感のある味わいにまとまっています。不思議。
 
例えばタコはカルパッチョなどでバルサミコ酢との相性はいいですから、フルーティーな甘酸っぱさとは相性がいいのかもしれませんね。
自分の中で整理のつかない味わいでしたが、見事にハマっているのは感じる組み合わせでした。
 
続いてスペシャリテの、2種の雲丹、サヴァイヨン、アールグレイ。
 
横に長い平皿が印象的。
 
サヴァイヨンというのは、卵黄を使って湯煎しながらとろみをつけて仕上げるソースですが、こちらはストレートにウニの風味を感じられるもの。
 
上からアールグレイの香りいいサブレを散らしてあります。
 
右利きなので、右からスプーンですくって食べ始めますが、最初はサヴァイヨンでまろやかでクリーミーなウニの風味。
 
2口目、3口目と生ウニを含む割合が増えてきて、より生々しい味わいにシフトしていきます。
 
この変化は目の見張るものがあって、痛快です。
 
そして、この無造作に散りばめられた岩塩。
 
最初は飾りくらいに思っていましたが、ポイントはこの平皿とスプーンの相性の悪さ。
右からズズー、ズズーッとすくい続けているうちに…
 
塩味を拾ってしまうという。
これは大変見事な仕掛けだなあと思った…のですが。
 
サービスの方にそれとなく聞いてみたところ、全然ピンときていないようだったので僕の深読みしすぎかもしれません。
(「左利きの人に出すときは向きを変えるんですか?」と聞きました…恥ずかしい…)
 
パンはこのタイミングで登場。
 
温かい状態で出していただけます。
 
テクスチャーのシンクロ、偶然の必然、宮古島の風。
 
赤足海老にマンゴスチン、日向夏、ミニトマトを添えて。
赤いルバーブのソースと塩漬けのもずく。
 
南国情緒漂うドレッセ。
 
メインの食材は海老とフルーツだと思いますが、その先の要素や配置の仕方が秀逸です。
 
海老とマンゴスチンの組み合わせはもともと使っていたそうですが、ある日ふとシェフがこの2つの食感が似ていることに気が付いたのだそう。
 
表面近くはぷよんと軽やかな弾力で、キュッと歯にかかったかなと思うと最後はジャキッと歯切れ。
 
本当によく似ていて面白いです。
 
味噌たっぷりの頭は揚げてあって、香ばしく、濃厚な味わいとバリバリとした食感を楽しめます。
 
酸味のあるさわやかな1皿の中で、見た目だけでなく大きな存在感があります。
 
放たれる旨み、焼き茄子、2週間熟成。
 
しなるアスペルジュソバージュに、何か大きな力が生まれる直前のような張り詰めた緊張感。
 
魚は明石の真鯛。
 
アスペルジュソバージュの他にジロール茸とフヌイユ、ソースは焼き茄子。
 
真鯛と言えば明石。
関東では出回りにくいこの最高峰の真鯛を使っているお店は信用していいと聞いたことがあります。
 
魚の王様たる品格を感じる、皮目の黄金色の輝き。
 
焼き茄子のソース、これ素晴らしかったです。
 
表現が稚拙で恐れ入りますが「何か似た味を知っているな…」と考えて行き当たった答えは「天丼に乗っている天つゆのしみたなす天とその衣」でした。
あれ美味しいですよね~
 
不変のalgorithme。
 
メインはフランス・ブレス産の鳩。
シンプルなローストに、赤ワインの香る内臓といちじくのソース。
「不変の」というのはつまり気を衒わないクラシカルな調理といったところでしょうか。
 
なぜか腿が後から追加されました。
 
特に説明なく置かれたのですけど、そういう演出だったのか、単に忘れただけだったのでしょうか。
 
赤ワインといちじくの甘く華やかに広がっていく香りに相対して、内臓や血は深く掘り下げていくような複雑な渋みが印象的。
 
はっきりとした味わい、香りがありながら、お肉の旨みを消さないところは身と内臓の組み合わせの妙なのでしょうか。
 
胸肉はロースト。
土っぽい味わいが濃厚。
 
しっとりというか、艶めかしい舌触りです。
 
腿はコンフィ。
表面がバリッとして、焼けた脂の香ばしいこと。
 
食べているときはバランスがいいと感じてはいましたが、今こうして振り返ると完全にソースばかりが思い出されます。
またこのお店のメインのソースを食べたい、とさえ思わせる素晴らしいソースでした。
 
安堵、Wコンソメ、滋味深さ+旨味。
 
口直しに野菜のコンソメを出すのだそう。
メインの脂が口に残ったのを洗い流す意味合いもあるとのこと。
 
複数種の香味野菜が入っているのだと思いますが、この日の中軸はセロリ。
 
口に含むと、セロリ以上にセロリの風味がして衝撃的でした。
 
メロン、ピーカンナッツ、カブトムシ。
 
デセールはメロンの皮を器にして登場。
最初のメニューで「カブトムシ」と見たときは何かと思いましたが、
 
「カブトムシ」という名前の日本酒でした。
 
こちらを仕上げにシュッと吹きかけて完成。
 
赤肉メロンとメロンのソルベ。
 
隠れていて見えませんが、下にはピーカンナッツのブランマンジェが隠れています。
 
ソルベは多分日本酒の香りが加わって、より濃いメロンの香りに。
 
冷たい中で、赤肉メロンも甘みを主張します。
 
ピーカンナッツといわれてイメージするところの香ばしさのようなものはありませんが、ピーカンナッツのオイル感が抽出されたような味わい。
 
何だか不思議な感覚でしたが、メロンと不思議によく合っていました。
 
家だったらまだまだ掘り下げるところですが、ここはお上品にこの辺で匙を置きます。
 
さっぱりいただけるデセールでよかったですね。
 
アカシア、マドレーヌ、粉と水。
 
食後のドリンクはコーヒーでお願いしました。
 
お茶菓子はアカシアの蜂蜜をたっぷり使ったマドレーヌ。
上のソースはパッションフルーツ。
「パッションフルーツの酸味がコーヒーに合うんです」
とのこと。
 
食材の組み合わせの意外性、かといって突飛ではないバランス感覚に秀でた各お料理でした。
 
定式を決めてそこに当てはめていくようなコース作りだったら窮屈だなあと懸念していましたが、その式を作る作業。
あるいは定式があるなら、それを1度崩して再構成するような、随所に創造性の光るコースでした。
 
偶然にも先日カンテサンスさんでいただいた「鮎とキウイ」の組み合わせだったり、サヴァイヨンソースだったり、経験が帰納的に再構成される様が俯瞰して見て取れる感じが興味深かったです。
 
このレベルになるとどこも美味しいのは当然ですが、こちらはさらに「好み」だなと思えるお料理でした。
また伺います。

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