北山珈琲店。
上野と入谷の中間くらい、昭和通りから脇道に少し入ったところにお店は有ります。
こちらのお店、ネットで検索するととにかくアクの強い噂ばかり出てくるのですけど・・・
「当店は珈琲を飲む為だけの店です。多目的にはご利用にはなれません。」「待ち合せ、商談、読書、事ム処理など珈琲を飲む為以外でのご利用は固くおことわり致します。ご来店後30分程でお開きにさせて頂いております。」
とまあ、噂通りなことがお店に入る前から分かります( ̄▽ ̄)
なお店内撮影不可のため、ここからは文章のみで。
まず賛否あるのが入店時の対応。
「いらっしゃいませ」も何もなくいきなり「お店の前の注意をお読みいただけましたか?そういう店ですが大丈夫ですか?」と聞かれます。
最初何を言われたのか分からずちょっと面喰いましたが、僕の後のお客さんも一様に戸惑っていました。
かと思うと接客はとても丁寧で、質問にも気軽にお答えいただけました。
とはいっても再訪はないかもなあと思ったので、お店のスペシャリテを頼んでおくことに。
20年熟成の豆だという「雅」とお店オリジナルのドリンク「雫」のセットで3200円です。
テーブルの上の「お店流の珈琲の飲み方」やカウンター上に貼られた「半可通、俄鑑定士、来店ご遠慮ください」や「メモを取りながら飲まないでください」などの独特の注意書きを読みながら待ちます。
30分ルールがあるわりには最初の雅が出るまで15分以上待ちました。
カウンターの中は見えないような造りになっているので淹れ方は拝見できませんでしたが、バスッバスッと叩く音が聞こえたので多分ネルドリップ。
デミタスのようなとろみのある珈琲が、デミタスよりは多め、普通の1杯よりは少なめに提供されます。
ちょっとブルーを帯びた赤色で、熟成した赤ワインのような大人っぽい色です。
とことん旨みを追求した味は、複雑さはあるものの広がりはあまり感じられず絞り込まれている印象。
1点に絞ってとにかく旨みを伸ばしていらっしゃるようなイメージですね。
この量いただくにはかなり強い味わいなので、お店のおすすめに従って後半はグラニュー糖やクリームを試してみましたが、悪くはないもののせっかくの特異性が弱まってしまってもったいないようにも思いました。
飲んでいるうちに乾いた木のような心地よい香りのする珈琲だという気がしてくるのですけど、単純にウェスタン調のウッディな店内から香っていただけかもしれません。
自家焙煎もしていらっしゃるので店内の木にも珈琲の香りが浸みているでしょうし、その辺り混じり合って北山珈琲店の香りを醸し出していたのだと思います。
雅を飲み終わったところで雫が提供されます。
こちらは小振りでスマートなグラスで登場。
「冷たいうちに3,4口でお召し上がりください。」とのことでしたので言われたままに。
やはり濃厚に淹れられた珈琲ですが、こちらはたっぷりのグラニュー糖で甘く仕立て、その上に生クリームを贅沢に浮かべてあります。
これはもはやドリンクというよりスイーツですね。
贅沢なコーヒーゼリーをいただいているような感覚。
意外にもスッと香りが切れました。
お店の姿勢はとにかくトラブルを避けているというか、賛否を避けているように感じました。
「誰に何と言われようが俺はこの味を作るんだよ」という矜持というか、こだわりの強さがあったように思います。
その分1点に絞り込んだ図太い旨みがズンと腹の底に響く珈琲が出来上がったのではないかと。
もっと他にやりようがあるような気はしないではないですけど、こういうやり方でやってきたからこそこの味で、それはとても面白いことだと思いました。
お店を出る際はとてもにこやかに「ありがとうございました!」と送り出してくださいました。
伺ってよかったです。