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美味しいもの食って写真撮って、あとで振り返ってのブログ

食べ歩きの記録です。よく食べ、よく歩きます。

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白金高輪の「コート・ドール」でお昼のセット(メイン追加)(スペイン産栗豚のソテー、平目のポワレ、野菜のエチュベコリアンダー風味他)。

築地を離れて御茶ノ水で用事を済ませた後、たったか移動してやってきたのは白金高輪
ゴールデンウィークのテーマにしていた「初訪問」の一環として、この日のランチはフレンチの予約をしてあったのです。


コート・ドール。
言わずと知れたフレンチの名店。
1986年オープンということですから今年で30年目、僕なんかより軽く先輩ですね^_^;

以前から当然「いつか」とは思い焦がれていたお店ですが、先日シェフの書籍を読んでグッと心を掴まれてすぐさま予約の電話をかけてしまいました。
すぐさまというか、正直に言うと読み終わらないうちに予約しました(笑)。


お店に入って名前を告げて、スッと席へ。
僕みたいなしょぼい客相手にも手加減なしのプロのサービスマンの仕事で、いちいちグッときます。

アラカルトも頼めるのですけど、ここはお昼のセット(5000円)を。
前菜、メインをそれぞれ2種から選ぶプリフィクススタイルで、デザートはおまかせ、食後にはドリンクが付きます。
メインを肉か魚かで決めあぐねてサービスの方に相談したところ、二言三言会話して、
「でしたら魚がよろしいかと思います。」
とキッパリ答えてくださいました。
この辺りもグッとくるポイント、素敵すぎました。


まずバターが登場。
この後パンが出るまで大分かかったので、ちょっと前のめりになりました(苦笑)。


スペシャリテの赤ピーマンのムースからスタート。
この料理の考案者であるベルナール氏とシェフの素敵なエピソードの数々が頭をよぎって、感動もひとしお。

かなり期待を膨らませてハードルを上げて臨みましたがそれを軽々飛び越えて、思わず「わあ・・・」と声が漏れてしまう麗しき佇まい。


どう甘みを出し、どうえぐみや青臭さを消し、そして「赤ピーマン以上」の味に仕上げるか。

想像していたよりも生クリームが多そうで、のっぺりと濃厚な舌触り。
コクが出すぎて一辺倒になりそうなところですが、しっかりと野菜が香ります。


生クリームが濃いのですけど、じわじわちゃんと赤ピーマンの甘みが勝ってきます。
トマトのクーリは涼し気に、鮮烈に。

せっかくサービスの方に潔く勧めていただいたので、メインは魚料理をお願いしていたのですが、この1皿で覚悟が決まりました。

「すみません、肉料理追加で(-""-)」

後悔も心残りも置いて行かないよう、満足に満喫して満腹で帰りますよ!


と、すっかり忘れかけていたこのタイミングでパン(笑)。
パンは三越のジョアンのものだとか。
バターも多分国産の普通のものっぽくて、特別質のいいものではありませんでした。

が、なぜかせっせとパンにバターをつけて、進むこと進むこと。
ひと掬いのムースをいただいただけですが、すっかり舌がコート・ドールの魔法にかかってしまったようです。


野菜のエチュベ。
こちらもスペシャリテ
塩、胡椒、レモン、コリアンダーでエチュベ(蒸し煮)しただけというシンプルな1皿ですが、これを食べるために全国からファンが集まってくると言っても過言ではないほどだそうです。


カリフラワー、大根、人参、セロリ、キュウリ、ズッキーニ、スナップエンドウ、ヤングコーン、トマト、葱。

それぞれの野菜の食感、食味がともに強く出た仕上がり。
個々にベストの仕上がりになっているので炊き合わせかと思うほどですが、鍋に入れる順番で調整しているだけだそうです。


強火で短時間で調理するからこそのこの鮮やかな色合い。

別テーブルでのサービスの方の説明が漏れ聞こえてきたのですけど、ランチ前に仕込んだものを夜にも出すので味に変化があるのだとか?
となると夜も気になりますねえ。

スペシャリテのこの料理は基本いつでも用意してあるそうですが、出ていない日があったらそれはシェフが仕上がりに納得がいかなかった日と思っていいそうです。
シンプルで力強い、コート・ドールのイメージをぴったり表現した一品だと思いました。


クリストフのシルバー、これも「本で見たヤツ」でちょっと興奮。
すっかりおのぼりさんです。

そんなド素人の僕には分からなかったのですけど、魚料理の前に用意されたこの右側のバターナイフ(?)はどう使えばよかったのでしょう・・・?


平目のポワレ。
「平たくない平目のポワレでございます。」
ちょいちょい笑かしにきてくださるのですけど、こういうのがきっかけになって各テーブルで会話が起こるのですよね。


確かに厚みのある平目、上に乗るのはコシアブラ
コシアブラを天ぷら以外でいただくのは初めて、春菊なんかに近い香りがふっと香りますね。


わりとサラッとした、シンプルにクラシカルの王道を行くようなソースです。
最近のフレンチとは、ソースに対する感覚がまるで違っている気がします。
「作る」ものではなくあくまで「作れる」ものであるとでも言いますか、自然体の力みのなさなのですよね。


厚みに偽りなく脂の乗った平目。
うっすらピンクを残した火入れの白身、ちゅわっと若い味が溢れます。
コクと香ばしさの加わった表面の焼きやソースを合わせながら変化も楽しめますね。


肉料理はスペイン・ガリシア産の栗豚のソテー。
スペインの銘柄豚でいうとドングリだけを食べるイベリコ豚が有名ですが、こちらは栗だけを餌として食べて育った豚です。

43%以上の霜降りでないと栗豚を名乗れないのだそう。


付け合わせはアスパラと葉玉ねぎ。
アスパラは日本の普通のアスパラだったのではないかとは思いますが、火入れの力なのか特有の香りが物凄く出ていました。


こちらは玉ねぎだったと思いますが、もしかしたらこっちも葉玉ねぎだったのかな?
胡椒が効いてはいますが、やはりとてもシンプルなソース。
難しくせず、美味しい肉を美味しく召し上がれ!と言われているような。


焼き色という焼き色を付けずに上品なピンクに仕上がった身は、パツンパツンに張りのある弾力。

ジョッキッと噛み切ると、見た目以上に豊潤な脂が溢れます。
さすが、さすが43%以上。

上記にソースのことも書きましたが、火入れもそう。
感覚がとてもシンプルに、料理の本質だけを捉えている気がします。
そこだけに固執しているというのでもなく、「だって大事なのはそこだけでしょ?」といった極々自然なスタンスで。

「料理」観を激しく揺さぶられる経験でした。


最初のセッティングもそうでしたが、このスプーンはやや内を向いた角度で配されます。
この角度で置くときのさり気なさひとつを取っても、歴史に裏打ちされた格式を感じます。


口直しにみかんのシャーベット。
鮮やかなオレンジ、口にする前から色濃さが味濃さを物語ります。


基本ねっとりと甘く濃厚なシャーベットですが、時折ジャリッ、ガリッと氷のムラがあるのはご愛嬌。
このところアイスや氷系の充実した日々を送っています。


デザートはパッションフルーツのシャルロット。
お酒がびしょびしょに浸みた生地でパッションフルーツのムースを包んだものです。


想像していた以上にぐっしょりとお酒に浸った生地がしゅわしゅわと口の中でほどけます。
パッションフルーツのムースも鮮烈な南国の香りで、正直デザートまで完食できるか自信がなかったのですけどこれはペロリでした。


ハーブティーとミニャルディーズ。

先日のオギノさんもそうでしたけど、ハーブティーってこんな感じなのですね。
個人的にはカモミールティーみたいな、薄いレモン色を想像してしまうのですけど。


ミニャルディーズはキャラメルのマカロン、フィナンシェ、生チョコ。
どれも突き抜ける絶品感というほどではありませんでしたが、抜かりなく丁寧に作り込まれていて、最後にほっこりした気持ちになりました。

ハーブティーを飲み切ったところでおかわりを注いでくださりそうでしたが、さすがに丁重にお断りしてお会計を(苦笑)。

斉須シェフの書籍を読まれた方はお分かりいただけると思いますが、青い青い恥ずかしくなるほどに青い青春物語なのですよ。
料理しかない不器用な青年が異国の地で奮闘する、ときにはぶつかって、人生を変える出会いもあって。

その青春物語の結実した大円団を眼前に見せつけられて、正直自分が情けなくて仕方なくなります。
どうして自分はもっと真っ直ぐ歩き続けられなかったのかと。

もう嫌んなっちゃうほど素晴らしかったです(苦笑)。
もっと僕も青いうちに食べに来たかったな。
でもなんだか、すごく熱いものがこみ上げてきて、それを上手いことエネルギーに転換できそうです。

来てよかった。
また来ます!

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