1度家に帰って仮眠を取ってから、再び都内へ。
この日はやや遅めの予約をしてあったので、苦手な「夜ごはん」ではなく早めの日曜の「朝ごはん」ということにしてしまう作戦です(笑)。
鮨はしもと。
すっかり予約の取れないお店になってしまいましたが、今回は何とか2か月ぶりの訪問が叶いました。
カウンター8席に4名様、3名様、そして僕。
大人しくいただきましょう(笑)。
角席に着席。
この席は確か初めてですね。
ご主人とガッツリ向かい合う位置でした。
「本日はよろしくお願いします。」
よろしくお願いします!
お茶をいただきます。
いやいや、見晴らしのいい席ですね。
まずは空豆から。
いつもは皮ごと食べるのですけど、こちらはやや浅めの火入れだったのでちょっと迷いました。
皮を剥くと香りが物足りない気がしたので、最終的には皮ごといただく方を選びました。
醤油、塩、わさびが用意されて、ここからツマミのスタートです。
この日のわさびは少し辛味があったように思いますが、気のせいかな?
最初はマコガレイ。
マイルドでミルキーな脂、旨み。
かなり薄っぺらいところから始まって、じわじわと盛り上がりを見せます。
塩、醤油あたりがいいですね。
続いてカツオ。
塩で〆て水分を抜いて、和がらしを乗せてあります。
もっちりねっとり、水分が抜けて脂が密になった印象で、濃厚に脂が残ります。
かと思うと別のひと切れはさっぱりとした初ガツオらしい香りの立つものだったりしました。
爽やかな香りのいい魚ですが、香りを消すことなくニュアンスを加えるからしもいい働きをしていました。
ホッキと平貝。
ワタの付いていた側がムリュムリュと独特のやわらかさで秀逸。
甘みと香りが口に入れた瞬間から、もはややや食い気味にはっきり出ます。
平貝は甘さではなく、旨み旨み。
シャクッと繊維質を断たず、平行に歯が入る食感がいいですね。
茶碗蒸し、今回は桜海老。
先日訪問された方々の写真で拝見して楽しみにしていた一品です。
、
海老の脂がほんのり滲み出ているのが見て取れます。
香ばしい旨みの強い甲殻類の風味、甲殻類の中でも桜海老は甘さがないのが特徴ですね。
下の方にはゆり根を忍ばせてあって、シャックリもちり。
桜海老の食感もチチチと歯に当たって、楽しげな一品でした。
こちらは蝦蛄、産地は宮城県の七ヶ浜。
身を2センチ弱くらいの長さにカットして、上には爪をほぐしたものをトッピング。
蝦蛄自体はやや香りに乏しい気もしましたが、甘いツメと好対照の旨みが引き出されていました。
爪と胡麻の食感で変化が付くのもよかったです。
ちなみに「爪」は蝦蛄の爪のことで「ツメ」は甘いタレのことと書き分けてあります(笑)。
ほんの少しのことなのですけど、わざわざ細かな蝦蛄爪を取り出してくださる仕事の丁寧さに惹かれます。
そろそろツマミも終盤。
焼き物は何が出るか、頭をちらつき始めますがその前に…
あん肝。
修行元からの流れを感じる甘い味付け。
ぷりゅっとした舌触りと、ねっとり濃厚な口どけです。
鮟鱇と言えば冬のイメージですが、夏にも普通にあるそう。
夏と冬では桁が1つ変わるくらい価格差があるようで、夏場に安く仕入れたものを冬場に冷凍で出していたりするのですね。
確かに国産物の冷凍って、冬場に仕入れた鮟鱇を使っていたら安くしようがありませんよね(笑)。
焼き物は太刀魚でした。
太刀魚はやはり何といっても焼けた脂の香り、切れ味鋭く嗅覚から飛び込んで腹の底から感覚を喚起します。
いつもよりは身が締まっておらず、ふっくらとした焼き上がり。
小学校の頃顕微鏡に使ったカバーガラスを彷彿とさせる、極薄ながら固さのある皮目がチャキチャキと砕けます。
はしもとさんの焼き物は、定番の数種に決まってしまっている気がしますが、これはまた食べたかったんだよなと思わせる惹きの強さがあります。
ガリが出たら握りスタートです。
今回のガリは生姜らしい仕上がりといいますか、いつもは生姜にはない「ボリッ」という独特な食感が印象的なのですけど、今回はそれはなかったように思います。
生姜も季節変化はありますしね。
この日もスタートは小肌。
大きめ、肉厚な小肌で、塩、酢、砂糖の味に青魚の出汁が入った感じ。
とてもいい味。
ここの小肌はお茶とすごく合う感じ。
旨みと渋み、酸味と甘み、そして旨み。
酔ってしまいそうです(笑)。
続いて春子鯛。
こちらも結構大きく厚みがありました。
小肌と違って酸味や甘みは少なく、膨らみというより伸びのある味わい。
まぐろ赤身は京都・舞鶴のもの。
これはかなり軽い味わい。
季節柄こんなものといえばその通りですが、このお店でまぐろがこれだと物足りなさは感じます。
本ます。
宮城とかだったかな?
藁で燻した香りが鋭い味を形成しますが、脂のコクがまろやかに残ります。
本ますと桜マスの違いは諸説ありますが、最近実際お店で聞いている印象だと「3~5月に日本海側で獲れた本マスが桜マス」という決め方が一般的なのではないかと思います。
とり貝。
比較的貝類の多い日ですね。
ワタの付いていた面が表を向いたスタイル。
ふんにゃり弱々しそうな食感ですが、噛み切るところでジャッキリと甘みのある出汁が溢れます。
香りもしっかり。
とり貝だけ他のネタと比べてはっきり分かるほど冷たかったのですけど、あまり室温に戻しすぎると香りが強く出すぎてしまうのだとか。
何となく分かる気がしますね。
イサキ。
こちらは季節物ですね。
ひとつ間違えると「臭み」になってしまいそうな雄々しく野趣溢れる旨み。
焼いたときの味も思い出されるようなイサキの個性ある味がはっきりと出ます。
岩手 中トロ。
なんだか聞いたことのない漁港でした。
はじめは軽い酸味も出ますが、次第に脂のミルキーなコクが口に回って支配されます。
うっとり。
定番の出水の釣り鯵。
この日は特に脂が穏やかだったように思います。
はしもとさんの鯵は脂より旨みと香り重視、潮っぽさにガッチリとハマるこの味。
「いい味だからアジ」と安易に名付けられたのも頷ける、バランスの良さです。
車海老。
今回は少し火入れが深めでぶりぶりした食感。
甘みも峠を過ぎてやや抜けていたような印象を受けました。
ちょっとした「状況の変化」もあって、居合わせた方々とお話し始めたらこれがなかなか和やかな感じに。
このカウンターの並びで打ち解けていく感じはお寿司屋さんの醍醐味のひとつだったりしますよね。
僕はとても楽しかったのですけど、向こうも同じ感想だったかどうか……(笑)。
函館の雲丹。
毎回のことですが雲丹をいただくときが1番と言ってもいいほどシャリの味を強く感じる気がします。
普段はハマグリに甘いツメは使わないと仰っているのを聞いたことがありましたが、今回は〆の一品ということでツメで仕上げていらっしゃいました。
貝の旨みが甘みに引っ張られていつもとは違う方向へグーンと伸びていく感じ。
ではでは、ここから追加の握りを。
定番物もいくつかありましたが、食べたことのないネタですんなり決定。
最初はかなり緩いやわらかさかと思ったのですけど、しっかり歯が入るとサクッと歯応えもありました。
香りは穏やかで、甘みが特に強かった印象でした。
ミル貝。
アオリイカとはもちろん全く別物ですけど、こちらもやわらかな歯触りと最後の歯切れが印象的な食感。
ひと噛み、ふた噛みくらいでは全体が崩れず、ゆっくりと味わっていられるネタと言えるかもしれません。
欲を言えば中盤で食べたかったかも(笑)。
秋冬のイメージのネタですが「モノが十分よかったから入れた」とのこと。
端境期で仕入れの難しいタイミングですから、逆に色んなイレギュラーを楽しめる時期だったりするのかもしれません。
玉子。
この日はとろっとやわらか仕上げ。
握りだけでなく玉子もいつも指でヒョイとつまんでいただくのですけど、この日は油断したら潰してしまいそうでしたよ(笑)。
〆はしじみのお椀。
甘み、旨み、苦み、えぐみ、かなり色んな要素が詰まって、そして膨らんで広がって感じられます。
この日は話の流れで静岡の食材の話で盛り上がりました。
なかなかに興味深い話で今後の食べ歩きや築地での買い物の楽しみが膨らんだ夜でした。
ご一緒したお兄さんお姉さん方もお優しくてとても楽しく過ごすことができました♪
読まれてはいないと思いますけど、築地に興味がございましたらコメント下さい!(笑)