この日はお誘いいただいて新富町の鮨はしもとさんへ。
2014年の12月オープンですので、2周年のタイミングでした。
17時スタートでしたが、この暗さ。
この辺りに季節感が出ます。
ささ、冷えるので早く中に入りましょ。
本日もよろしくお願いします。
9月以来なので3か月ぶりくらいの訪問。
オープンしたての頃から最近に至るまで、意識せずともはっきり感じられる白木の香りが印象的でしたが、
ここに来て落ち付いてきたような気がします。
早くも熟れた感漂うご主人に倣うように、お店も少しずつ円熟味を蓄えていくのかもしれません。
まずはお茶をいただきます。
こちらの湯呑みはお初だったかな?
寒い季節はついつい湯呑みを両手で包んで暖まったりしてしまうので、質感のいいのが嬉しいです。
きぬかつぎ。
里芋の小芋を蒸したもの。
ぷちぷち弾ける胡麻の香りが強いものの、そこに塗り重ねるような里芋の香り。
里芋って「香り」がこんなにあったのか、とちょっと改めて気付かされた次第です。
3本指でつまむようにすると皮がスルッと剥けて食べやすいのですが、
案外少し皮が残ってしまったりして食べ方に困る一品。
小芋は皮が薄いのでそのまま食べてしまうのもひとつのような気がするのですけど、
「正しい食べ方」はあるのでしょうか?
青森の平目。
定番の朝〆。
ご主人曰く「握るなら1日寝かせたい」ということですが、ツマミとしては食感を楽しむ趣向で朝〆。
「塩か醤油で」とお声かけがあります。
口に入れてひと噛み、ふた噛みくらいだと、旨みを探してキョロキョロしてしまうような淡さなのですけど、
ひと度「味」を捉えた頃には、どこまでも深い旨みがそこに広がっていたことに気が付きます。。
味の濃い平目。
こちらはエンガワ。
プリッと弾けて、脂がジュワワ。
こちらは分かりやすい味濃さ。
室蘭の帆立を磯辺焼きで。
中心部までしっかり火は入っていましたが、身が締まってしまうことはない絶妙な仕上がり。
全体に浅めに火入れして、表面は強火で香ばしく。
甘みや旨み、香りが抜群に引き出されていました。
甲箱蟹。
内子や外子、ミソと蟹肉を和えて、仕上げにいくら。
これって、器は梅の花?
機を逸してご主人に伺えなかったのですけど、ちと気になりました。
外子が歯にクククと当たるのですけど、弾けそうで弾けない独特の粒感がクセになります。
味わいの良さは言わずもがな。
蟹というと、剥くのに集中してみんな黙って食べるのが有名ですが、
こちらでは、剥いてもらってはいるものの「言葉を失って」いただいてしまいました。
温かみのある質感。
ちびりちびり、といただきます。
白子茶わん蒸し。
昨年も12月にいただいています。
前回伺って驚いたのですけど、白子も生から入れて蒸すのだそうで。
茶わん蒸しとの火入れの到達点が一致するのか心配になりますが・・・
そこはもちろんパーフェクト。
母胎で誕生のときを待つ胎児のように安らかな。
つるんとなめらか、とらんとやわらか、ストレスを感じさせない玉子地。
白子はぷつっと口の中で弾けて、仕上げのポン酢の強めの酸味と相俟って、胎児が産声を上げたような鮮烈なインパクトが脳内に響き抜けます。
あん肝、牡蠣・干し数の子味噌漬け。
以前あん肝と牡蠣はいただいたことがありましたが、干し数の子は初めて。
はしもとさんのこれ系、ヤバいのですよねえ。
あん肝はご主人の修行元「都寿司(現・すぎた)」でも定番だった、甘めに炊いたもの。
お酒呑みの方などからは賛否あるようですが(賛の方が多そう)、個人的には非の打ち所のない一品。
某漫画では「フォアグラ」に例えられたりしていましたが、こちらはギシッと締まった食感になっていて、
むしろ言うなれば「鶏レバー」。
「フォアグラ」から「鶏レバー」というと格落ち感のあるレトリックでそれは本意でなく、
この味の強さ!あん肝からこんなに「魚の味」がするとは!
芸術的。
牡蠣味噌漬け。
これもまたすごいのですよね。
似た食感でいうと「豆腐の味噌漬け」とかでしょうか・・・同じ「味噌漬け」を挙げてしまう辺りセンスがないのですけど(^^;)
牡蠣からは想像のできない、ミチッと詰まってネットリ融ける、独特の食感を楽しめます。
やや味付けが甘めですが、そこから香り立つ牡蠣もまた一興。
今回ヒットだったのがこれで、干し数の子の味噌漬けなのだそう。
干し数の子って初めていただきましたが、見た目は普通の数の子とさほど変わらないのですけど、
ギュッと粒と粒の間が詰まって、ブッチンと歯を跳ね返しそうな弾力が面白いです。
味も干物らしくギュギュと凝縮されていて、とても気に入りました。
とても気に入ったので後日場外で探してみましたが、200gで7,500~15,000円となかなかのお値段する食材のようで断念しました。
4人くらいで購入して小分けにするのもありかもしれませんが、せっかくなら上級のものを選びたい気がして、
やっぱりなかなかしそうですね。
かなりの大物だったそうで、焼いているところから提供されるまで、見た目や音から脂乗りが想像されました。
あなや!あなや!
ふわりほぐれて、脂の溢れる白身。
皮目の食感は自身の脂で揚げ物調・・・もはや揚げ物超、思い出したのは顕微鏡の「カバーガラス」。
脂の味わい、香ばしさが勝っていて、今まで穴子とは次元の違うような一品でした。
ガリが出てきたら、握り始まりの合図。
高鳴る鼓動を落ち着けるように、ぽり、ぽり、ぽりと生姜の香りに酔いしれます。
天草の小肌。
小振りだったので〆は浅めにしたそうですが、個人的な好みよりはしっかり〆に感じられました。
でも口に入れると驚くほど脂が融けてきて、酢と混じり合ってもう一歩先の味が生まれる感覚は最っ高でした。
淡路島の真鯛。
初めて都寿司さんで真鯛をいただいたときの涙がこぼれそうなほどの感動を鮮明に思い出したこの1貫。
みなぎる脂の融ける様が、熟成したイカにも近いような、甘みと旨みに昇華されていくような見事な最後。
コリコリと歯に食感を残す皮目をひと思いに介錯いたします。
大間釣り赤身。
まだ香りはピークではありませんが、遠くからじわじわやってくる感じに波間にわずかに「冬のまぐろ」が見え隠れ。
三重のカンパチ。
思わず「シマアジですか?」と聞いてしまったこちらは、砂ずりの一番脂の乗ったところ。
口に入れてびっくり、サーモンのような濃厚にネットリと、舌との間に厚めの脂の層を設けているかのような触れることもできない1ランク上の脂乗り。
かと思うと、際を噛むとシマアジにも近いような歯応えがあったり、カンパチたるひんやりと舌の脇を抜けるような脂のさわやかさも感じられたり。
これも凄まじいインパクトを残してくれました。
鰹。
この1貫の中でのグラデーションは、もはやコントラストとも言えそうな濃淡比。
藁で燻した香りは、口に入れてからが本当の勝負。
脂は甘く、鰹らしい上品な酸味もツーッと舌に残りそうなところを、藁の香りでカットをかけます。
皮目のチャリチャリした食感と、皮ぎしに眠る秘宝のような光輝く脂。
高いレベルで「鰹らしい」、高いレベルで「バランスのいい」、そんな1貫でした。
韓国の赤貝。
食感はやわめ、結構はっきり海藻っぽいというか「磯」の香りの強さを感じました。
餌の関係かな?
赤貝はシャリとの馴染みの悪さが気になることも多いネタですが、これはそれはなかったです。
ついに握りも折り返し。
どんどん次も食べたい・・・でも終わりが近付いてしまう・・・もうちょっと待って・・・いややっぱり握ってください!
大間延縄中トロ。
赤身と同じく大間ですが、個体は違うそう。
口当たりはサラッとしていますが、酸味はあまり感じられずコクのある甘み。
銚子の鯖。
先日の寿司大さんの鯖も銚子でしたね。
白んだ身や血合いの色味から、〆の深さが伺えます。
しっかり効いた酢の香りや締まったからは想像できない脂がスプラッシュ。
すごい脂乗りですが、印象は完全に「さわやか」系。
鯖の香りがまたいいんだな。
宇部の車海老。
シャリ小さめでお願いしたら、尻尾を多めに落として中に握り込んでくださったようです。
今回はややレア気味で、食感はパッチンと強めに弾ける感じ。
火入れが浅い分、甘みや旨みといった味わいの総量は少なくなっていたかもしれません。
青森のムラサキウニ、落石のバフンウニ。
定番のウニは2種盛りで。
この日は甘みはムラサキ、香りはバフン。
あとは穴子と玉子、お椀でコースは全部。
「追加分」が頭をよぎり始めます。
さてさて、ラストスパートです。
穴子をいただきまして。
ここから追加分。
この日は2貫お願いしました。
まず1貫目は・・・
真鯛!
素晴らしかったので、ついついおかわりもう1貫。
いつも、どれも美味しいにも係らず、その中で頭ひとつふたつ飛び抜ける出会いがあるからお寿司はやめられませんねえ。
続いてお願いしたのは・・・
金目鯛。
追加ネタの定番的位置づけのネタですが、注文するのは1年以上ぶりだったと思います。
炙ってパリパリの皮目と、脂は今回は落ち着いた印象でミルキー。
金目は大抵誰かしらが追加するので、いつも炙りの香りだけ漂ってきて悶絶していましたが、今回は苦しめる側に( ̄▽ ̄)
デザートの玉子。
水分が抜けて軽い食感。
しじみのお椀。
今までで1番味噌が強く感じられたように思います。
今回はちょっと寄ってたかって追加をお願いしすぎまして、終わりの時間がバタバタに。
ササッと年末の挨拶などもしながら、ごちそうさまでした!
また来年もよろしくお願いいたします。