この日は買い物に回った後、久しぶりに場外の長生庵さんへ。
この時期これを食べないと春を迎えられない気がするほど、個人的に大事にしているあるお料理、
長生庵さんでいただけるのですよね。
店内満席で、それも多くのテーブルが相席になっていました。
僕も相席で。
考えてきた注文をお願いできそうなので、その通りにオーダーします。
まず出てきたのは、かきカレーぬき。
「ぬき」というのは、そばメニューを"そば抜き"で出してもらう注文用語で、
江戸発の文化のようなので全国的にいうとどの程度通じるのでしょうね。
今回は"かきカレーそば"の"そば抜き"ということになります。
カレーそばのお出汁にかき天が3つ。
うっすらと衣から透ける"かきのヒダ"の黒いところが食欲をそそりますね。
ぷんとカレーの香りと、ほんのり天ぷらの香ばしい香り。
お出汁は粘度があるので、衣にゆっくりゆっくり浸み入っているようです。
かきに火が入りすぎるのを衣がカバーしているような形。
さらには揚げ油とカレーが互いに干渉し合って、どのタイミングでいただくかで大きな違いが生まれそう!
うかうかしていると沈んでしまいそうなので、早速1つ!
うん!ほどよい!衣のサクサクを残しつつ、半身にカレーを纏う絶妙なタイミング。
降り始めの夕立を避けて本降りになるギリギリで雨宿りに駆け込んできた"雨も滴るイイ男"といったところ。
かきの火入れはバッチリ。
カレーのスパイス感が穏やかなので、ほどよく香りを纏う程度なのがいいバランスだと思います。
衣もサクサクのところと、カレー出汁が浸みてぶよっとしたところと、どちらもだらしなさがなくて大満足。
なかなかかき天が沈まないなあと不思議に思ってよく見ると、
豚肉と玉ねぎが底までたっぷり沈んで天ぷらを支えているようなのですよね。
これはこれは!気付きませんで!
これはもちろん、文句のない美味しさ、ウマさ。
豚肉の脂と火の通った玉ねぎの甘みと、とろみのあるカレー出汁。
小口切りのネギがまたキュッと後味を引き締めます。
そうこうしているうちに最後のかき天はぶよぶよに。
これがまたね、醍醐味です。
お箸で持ち上げると、衣が垂れ下がって出汁も垂れてどこに跳ねるか分からず危険だったので、
思い切ってひとくちで口に放り込みました。
幸せ幸せ。
卓上にあった「カレー用スパイス」も試してみましょう。
チリパウダーみたいなことなのでしょうか?
そばに加える一味唐辛子に近い感覚で、辛みというよりは唐辛子の香りが加わるようなアクセントだったと思います。
大分堪能していますが、今回のメインのお目当ては実はこれではなく・・・
春野菜の天ぷら盛り合わせ(ハーフ)。
これこれ!春野菜って個人的に大好きなのですけど、飲食店で提供される期間は短かったりして、気付いたら終わっていることも結構多いのですよね。
今年も無事にありつけてよかったです。
アスパラとふきのとう。
スナック菓子にも近いようなしっかりした旨みの魅力的なアスパラガス。
サラダとか他の食べ方をするのとは全く別の食材のようですね。
春野菜の象徴のような独特の"爽やかでエグみのある"ふきのとうも強い香り。
春の爽やかな空気と、芽吹きの"生命の力強さ"を感じることができますね。
蕾菜、菜の花、1番右は葉っぱだったのですけど明日葉でしょうか。
こちらもどれも食感をよく残して、ほのかに青みのある香りがしっかりと感じられました。
卓上の塩をちょちょっとお皿に用意して、ちみちみと当てながらいただきました。
というわけで用意してきた通りの注文ができて、構えたところにバスーン!と直球が来たような気分爽快な満足感でした。
ちなみに細かい計算は分かりませんが、かきカレーそば(1550円)、春野菜の天ぷら盛り合わせ(1200円)を、
それぞれ"ぬき"と"ハーフ"でお願いして、合計2000円ちょうどでした。
これで無事に春を迎えられそうな気になりつつ、
もう1度くらいどこかで春野菜天をいただきたいなあなんて考えながら、ごちそうさまでした!