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美味しいもの食って写真撮って、あとで振り返ってのブログ

食べ歩きの記録です。よく食べ、よく歩きます。

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麻布十番の「Sublime(スブリム)」で発酵マッシュルームのスープ、「熊本 薔薇」、帆立貝 賀茂茄子、マコガレイ昆布締めとおかひじきのフリット、掛川深蒸し茶とまぐろ節出汁シャーベッ、的鯛のポアレ他。

お昼は初訪問のフレンチへ。
 
やってきたのは店舗情報では「麻布十番」ですが、正確には東麻布と申し上げた方がよろしいかもしれません。
かつて焼き魚の名店「藪原十区」があったエリアですね。
 
スブリム。
2015年に新橋でオープン、2017年8月にこちらへ移転して来ました。
 
シェフの経歴が面白くて、調理師学校時代に留学したパリで吉野建氏のお店に感銘を受け、帰国後タテルヨシノにてクラシカルなフレンチの修行。
その後再びパリに渡って、今度はモダンなフレンチ三ツ星のアストランスなど、さらには北欧での修行も経験されたそうなのですよね。
 
一本道ではないところに、却って意図を感じる気がします。
ジャンルは「イノベーティブ料理」とされていらっしゃいますね。
 
平日お昼ということもあって客入りはややまばら。
 
中国人と思われるお若いカップルがいらっしゃいましたが、そんなに食に詳しいわけではなさそうな印象でしたので、結構海外でも名前が知れているということなのかもしれません。
 
ガス入りのお水。
 
グラスもイノベーティブ(?)。
 
シェフ直々に目の前でキンキンに冷えたお茶を注いでくださって完成。
 
なんでもシェフのご実家のお茶を使った深蒸し茶なのだそうです。
 
器の中には、もちのパフ(あられ?)、まぐろ節出汁のシャーベット、お茶のパウダー。
 
お茶漬けとか出汁茶漬けのような風合いですが、かなり普通にお茶寄り。
 
お茶が冷たいこともあってシャーベットが融けるのはかなり遅れますが、この香りが秀逸でした。
 
この冷たさ、さっぱりした旨み中心の味わい、1品目に客が求めるものをよく捉えたお料理に感じられました。
 
続いて、プレッツェルと新潟の黒埼茶豆。
 
指でつまんでパクリといただきます。
 
プレッツェルは、シェフが「知恵の輪」をイメージしたそう。
 
小さいながらしっかり粉の味のするプレッツェルでした。
 
枝豆はペーストでプレッツェルに固定。
 
枝豆とプレッツェルと、2種類のぽくぽくという楽しい食感でしたね。
 
続いて、大分のマコガレイの昆布締めにおかひじきのフリット、柑橘のオイル。
 
おかひじきのフリットにはエディブルフラワーを、実山椒のピクルスがあしらわれています。
 
もしゃもしゃした食感で、香ばしいフリット
 
もっちり弾力を残した昆布締め、酸味のアクセントも加えた味付けで、さっぱり軽やかな1皿ですね。
 
パンはエスキスサンクのカンパーニュだそう。
 
クラストはぎっちり詰まって、クラムもずしりと重みがあります。
 
説明なく出されたので、最初は何かと思いましたが「焦がしバターのホイップ」なのだそうです。
 
たっぷり空気を含んだ軽い口当たり、舌の上で融けるときにちょっと甘みを感じます。
 
軽すぎてドンドン食べてしまう、危険なバターでした。
 
北海道猿払のホタテのポアレ、下には賀茂茄子。
 
ホタテの上にはオランデーズソース、サマートリュフ、ホタテのチュイル。
 
ホタテのチュイルは、海らしい香りに海老をも思わせる香ばしさが加わっていました。
オランデーズソースは辛子のような香りを感じたのですけど、気のせいかな?
 
ホタテと賀茂茄子の香りが意外に近くて驚き。
 
口の中で崩れた後は、繊維質の感じが動物か植物かにはっきり分かれて面白かったです。
 
スペシャリテの発酵マッシュルームのスープ。
マッシュルームは静岡県の長谷川農園のものだそうです。。
 
下にはマッシュルームのソテーと温泉卵、上にはフレッシュのマッシュルームのスライス。
 
「発酵マッシュルームって何だ」という僕の心の声が聞こえたのか…、
 
実物を見せてくださいました。
発酵で発生したガスで膨らんでいるのか、パンッパンになっています。
 
塩をして、半真空状態に3週間ほど置くのだとか。
シェフはマッシュルームの仕込みの勉強のためだけにオランダに研修に行かれるなどしたそうです。
 
マッシュルーム推しのスペシャリテというと、修行先である「アストランス」のシャンピニオンのミルフィーユが思い出されますね。
 
そもそもマッシュルームの香りはかなり好きな部類なので、美味しくいただけることは想像が付いていたのですけど、動物系のスープでも入っているかのような旨みの強さには驚きました。
バターと生クリームで整えてはあるそうですが、これだけで「ビーフストロガノフ」と言われても成立しそうな、むしろそれ以上にシャープな旨みの感じられる飲み口。
 
「とりあえず温泉卵を入れておけ」みたいな発想は好みでないので、料理の説明を聞いているときは味がぼけそうで不安でしたが、温玉でマイルドにすべき旨みの強さでした。
 
これはまたいただきに伺いたいです。
ちょっと自分でも真似してみたくなりましたが、発酵のところはやはり繊細なのでしょうねえ。
 
メインは肉か魚から選べたので、魚をチョイス。
この日は和歌山の的鯛のポアレでした。
 
「買い出しのプラムのソース」と聞こえた気がして驚きましたが、ちょろっとなめたらアサリっぽかったので多分「貝出汁のクラム」とおっしゃっていたのだと思います。
 
粉がわりとしっかり付いて、ムニエルのような仕上がりですね。
ソースはサーブ時に注がれますが、じわじわと浸みていく感じがよいです。
 
緑のはハーブのオイル。
 
落花生が敷いてあって、独特の香り、食感と魚との組み合わせが新鮮でした。
 
「熊本 薔薇」と名付けられたデセールは、一面が阿蘇山の火山灰をイメージしたというグレー一色で薔薇は花びら1枚見当たりません。
 
とげとげしい気持ちになって「これが薔薇のとげを表現しているのですか?」と聞きたくなったところで、
 
液体窒素でパリパリに砕いた薔薇の花びらが散らされました。
 
とはいえ、この演出だけで「薔薇」と名付けるのは安易だなと思っていましたが、
 
中心の大きな"石ころ"は薔薇のアイスなのだとか。
 
他に、黒いのは竹炭のメレンゲ、白いのはタピオカ粉とバニラ、下には薔薇の香りのするマスカルポーネのグレーのソース。
 
パカッと割ると、なるほど中は薔薇色!
 
そして食べ進めるうちに驚かされるのですけど、この薔薇のソースを覆うグレーの層や、マスカルポーネのグレーのソースもはっきりと、むしろアイス以上にはっきりと薔薇の香りがするのですよ。
 
バニラの香りや、メレンゲの甘みや食感のアクセントも機能していて、演出、味ともに優れたデザートでした。
 
アイスを覆っている層は"ゼリーシート"みたいな口どけをすると思ったら、ローズウォーターとゼラチンなどを液体窒素で固めたものなのだとか。
この融け方と香りの立ち方が秀逸だったのですよねえ。
 
お店の方も「今だけの予定だけどスペシャリテになるかも」とお話しされていました。
 
食後のハーブティーとお茶菓子。
 
栗の蜂蜜のフィナンシェは甘さが強くて、焼きはちょっと入れ過ぎ。
 
裏がガチガチになっていました。
 
このカップ!
 
コーヒーにせよ紅茶にせよ、日本茶にせよ、こういうちょっとマットな感じというか、ざらつきがあって薄手の飲み口のものが好みなのですよね。
 
買い取りたいくらい好みなカップでした。
 
というわけで大満足のランチでした。
メインは1皿ですが、皿数は十分ですし、これで4500円って凄まじい値付けですよね。
 
事前情報から想像された方向性の魅力というのは随所に感じられましたし、その中でいい意味で裏切られたり、想像のさらに上を行かれたり、終始楽しいランチになりました。
発想力、創造力、というのもこちらのお店の大きな魅力の1つかと思いますので、回数を伺って、多くのお料理に触れてみたくなりました。
 
ごちそう様でした!

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