お昼は築地の鮨桂太さんへ。

ちょうど伺う直前に発表されたミシュランガイド2019で、1つ星に輝いたということでお祝いしながら入店。
87年生まれとお若いながら貫録のあるご主人ですが、さすがにちょっと笑みがこぼれて喜んでいらっしゃるようでした。

奥さんにも、おめでとうございますとお伝えすると、こちらはニッコニコ。
とはいってもここからはいつも通りのペースに戻って、落ち着いてコースが始まります。

スタートは白身2種と、定番のくらげ。

大原の真鯛。
飴色の風合いをまとって、舌に絡むネットリした質感。
旨みというか、香りがよく出ていますね。

淡路のひらめ。
朝締めということで歯応えがぶりぶりしていますが、香りがしっかりしているので味わいが残ります。
さっぱりしつつ、味に芯のある優秀な白身でしたねえ。

せこがに。
今回のメインのひとつでもあった季節物メニュー。
ズワイガニのメスで、1年のうち2か月ほどしか食べられる期間がないのだそうです。

ふっくらとした棒肉は、はかなげな赤色。
「塩で茹でても味が入らない」のだそうで、霧吹き状に醤油、酒、みりんに味を乗せているとおっしゃっていました。

身の下には内子・外子・ミソを合わせたもの。
こうしてほぐされた蟹身を食べると分かりますが、蟹ってほぐすことに集中するから「黙って」しまうのではなく、美味しいから黙々と食べることに集中してしまうのですね。

ちなみにこちらのお皿。
上に乗った小鉢から足が出るような絵柄がかわいいのですけど、

ちゃんと蟹柄という演出。
「いいと思って買ったんですけど、この時期しか使えないんですよね」とご主人。
奥さんが「勢子ガニの内子は私がやったんです!」とアピールされていましたが、ご主人が「君がやったのは外子ね」とツッコまれるという、ほのぼのしたご夫婦のやり取りも優しい味わいによく合うのです。

秋刀魚巻き。
秋刀魚はもう三陸、12月ですからねえ。
しっかり締めですが、よく脂が乗っていた名残りでふよふよの質感。

横須賀のたこ。
この日は頭肉に当たりました。
ブリンブリンの歯応えに、ゼラチン質もあって食感が楽しいです。

にしん漬け。
ご主人の地元である北海道の家庭料理が定番のツマミ。
馴れて水分の戻った身欠きニシンが独特の食感、味も濃く出ています。
あと麹の甘みと。

たら白子かまぼこ。
前回もいただきましたが、今回は表面がしっかり焼き固めてあって香ばしさも増していました。
よりかまぼこらしい味わいでしたが、何か変えましたか?と伺うと「色々変えました」とのこと。

ガリ。
ひらひらに薄くスライスされています。
甘みもあって食べやすい仕上がり。

まぐろ赤身漬け。
やや酸の立つ香り、旨みの感じからしてイカを餌にしていそう。
軽めの漬け込みで、質感としては生っぽさが残っていました。

背とろ。
最初はやわらかいだけかと油断させておいて、実は香りの長く残る脂の甘みがだんだんと増してきます。

佐賀の小肌。
強い締めで、初めはキュッと酸味が来ますが、脂の旨みが強めに残ります。

煮はまぐり。
オーソドックスなものからいって、甘みは控えめで旨み推し。
身はちょっと引き締まったくらいで、歯をしっかり返す弾力。

銚子の鯖。
しっかり締め、腹側の先の方は皮下の脂肪がざっくり。
対して、血合いは締めを感じさせないとろんとした食感が印象的です。
モノ自体が最高のモノというわけでもなさそうですが、仕事で上品で上質な仕上がりになっていました。

たこ。
手のひらでまな板に押し付けて水分を抜いてから握るのですけど、前回よりも水分が残った加減が個人的には好みでした。
タコ飯とかで想像できるかと思いますが、とても香りがよいです。

鰆。
こちらは甘い煮切りが塗ってあるのがかなりインパクト。
コースの中でも、方向性が変わる意味で効果的に感じます。

温かいお茶をいただいて、終盤戦へ。

いくら。
やわらかな皮がやさしく弾けます。
新いくらの季節スタートから結構経っていますから、こうなってくると皮は固くなるイメージでしたが、そんなこともないのですねえ。

秋刀魚。
いぶしてエシャレットを噛ませて握った1貫。
胡麻油のような強めの風味がします。
秋刀魚は脂はほどほどながら、肉厚で味の濃いもの。

車海老。
レアな火入れでぷちゅっと弾ける食感が鮮烈。

小柴のすみいか。
さっくり歯応えが残っています。
ネタの馴染みがしない分、赤酢のシャリがはっきり見て取れますね。

長崎のかつお。
ご主人も出しながらおっしゃっていましたが、とにもかくにもすごい脂。
ずばーっと口の中でとろけて、かつお特有の酸味もないただただ脂の香りが広がります。

青柳。
軽い食感、爽やかな香り。

銀皮を引いてあって分かりにくいですが、鰯。
しっかりめの締めで、随分と酸を香らせますが、青魚特有の骨っぽい香りもあり。

お椀をいただきまして。

エゾバフンウニ。
色よし、甘みよし。

かわはぎ。
肝はシャリとネタの間に挟み込んであります。
シャリに直で肝が絡むところがいいですねえ。

穴子。
桂太さんの穴子は、比較的水分を飛ばしてあるように思うのですけど、どの段階での違いなのでしょう。

玉子。
中心近くは特にとろんと半生。
桂太さんは緊張と緩和、生真面目さと緩さ、その辺りのバランスがとてもいいのですよね。
良い食事をしつつ大いに笑わせてもらえる、他に類を見ないリラックス空間のように思います。
またよろしくお願いします。