お昼は代々木上原のフレンチ「sio」さんへ。
昨年11月にお邪魔して以来、まだ2度目の訪問ですが覚えてくださっていました。
日々すごい人数を相手にされながら、ですから嬉しさもひとしおです。
こういうのは、SNSがもたらした利点のひとつでもあるのでしょうか。
席に着いて、名物のおしぼりをいただきます。
イケウチオーガニックの今治タオルをお店で洗って使うというこだわりぶりなのだそう。
あったかくてふかふか。
個人的にも普段使いのタオルに今治タオルを使っているのですけど、永遠に顔面をうずめていたくなるほどに心地よいのですよねえ。
料理を待つ間、ついつい触ってしまいます。
前回は1品ごとにドリンクが付く「ソフトドリンクペアリング」でお腹がたぷたぷになってしまったので、今回は「2杯だけおすすめのものを」ということでお願いしました。
1杯目は春摘みのダージリンにローズマリー、ぽんかんで香りを付けたもの。
味わいの淡いダージリンに、酸味と苦みがじりじり。
スタートは、お店で使う野菜の端材で取ったというコンソメと、丸鶏のブロードのスープ。
お芋のような風味があったのですけど、お料理には出なかったので別のものだったかもしれません。
デンプン質のやさしい甘み。
塩は極繊細に仕上げてあるそう。
「器を手に持って、温もりを感じてお召し上がりください」
とのこと。
雪の降って冷えた日でしたから、このプレゼンテーションはなかなかニクいですねえ。
定番の前菜。
手に取っていただきます。
薄く伸ばしたトーストに、卵黄を絡めた馬肉のタルタル、ケーパー。
その上にビーツを細切りにしてクミン、フランボワーズのビネガーで和えたもの。
馬肉の脂と卵黄でまったりしつつ、酸味要素、トーストの香ばしさ。
マイルドな味わいが軸ながら、跳ねる味わいがあって印象に残る1品です。
早くも2杯目のドリンク。
2杯目は2度に分けて提供してくださるそうで、実質3杯いただけるようですね。
ありがたい。
こちらはシンプルに夏のダージリンだということ。
味わいが比較的しっかりして、特有のマスカット香。
お魚料理は、千葉県産近海キンメの鱗カリカリ焼き。
焼き茄子、紹興酒、生姜、シェリービネガーのソースは、何だか食べ慣れた中華料理の味。
白髪ねぎを合わせると、なおのことです。
机に添えつけられた引き出しからナイフとフォークを取り出していただきます。
「ドリンクも、合わせてくださいね!」
と念押ししてくださいました。
葉は菜花。
めくった下に、鮮やかなキンメの赤い皮目と、奥ゆかしく桃色じみた身。
全要素まとめてでもまとまりのある味わい(ほぼ中華)になりますし、2要素、3要素くらい抽出していただくのもまた違ったお料理のようになって楽しめました。
変わったソースではありますが、振れ幅が大きいのはコース料理として大きな魅力ですね。
パンは駒場東大前の人気店ル・ルソールさんで特注しているというカンパーニュ。
酸味が立っていて、お料理とよく合います。
ドリンクは、先ほどの夏ダージリンにカカオの香りを付けたもの。
カブと柚子のパスタ。
カラスミのパスタをイメージして、どろりとしたカブのソースをスパゲティに絡めたのだそう。
塩だけで味を調えてありますが、出汁を引いてあるような旨み。
柚子皮が香って、あと酸味が入ればかぶら漬けのようだと思いながらいただきました。
お皿に残ったソースをカンパーニュで拭っていただいたら、酸味が加わってまさしくそんな調子でした。
メインは岩中豚のロティ。
お皿に鮮やかに映えます。
トレビスの苦みを効かせたソースに、芽キャベツ、カカオニブ。
お肉はサイズは抑えめなのですが、厚みで豪快さと贅沢感が演出されています。
カカオの香りやトレビスの苦み、一見するとバラバラな要素がごちゃ混ぜになっているようで、豚肉に相性のよいマスタードの酸味がビビッドに全体をまとめ上げます。
豚自体も、身自体の香りが良かったです。
デザートは定番のブリヤサヴァランのアイス。
ブリヤサヴァランというのはフレッシュチーズの名前ですね。
店名にもかけた塩味のアイスです。
ラタフィアというお酒に苺の香りを付けたもの。
スポイトで落として味変に使います。
これもまた相性がいいですねえ。
どのお皿をいただいても、よく味見をされているからか、シェフのセンスの問題なのか、食材同士の相性、組み合わせ、バランスの良さが印象的でした。
食後のコーヒーとお茶菓子。
厚みのあるカップ。
ボテッとしたフォルムが好みでした。
コーヒーはかなりの浅煎りでしたが、それとは関係なしにかなり濁っていたのはお湯の温度が低かったからでしょうか。
随分、随分あっさりした味わいで、ハーブティー風コーヒーといったところ。
食後ということで、軽さを重視されているのかもしれません。
お茶菓子はフィナンシェ。
客の側からみて「いいな」と思う演出に溢れていて、満足感にすぎる内容でした。
多種多様な味を、絶妙に配置するシェフの采配力。
挑戦的でありながら説得力のあるお皿ばかりでした。
初回とお料理がガラッと変わっていたのも驚きがありました。
また次に伺うのも楽しみです。