前回訪問から大分間の空いてしまった表参道の「ラチュレ」さんへ。
色々なところで話題に挙がって、「もう全然予約が取れなくなっている」といったお話を聞く機会が特に最近多かったのですよね。
階段を降りた地下にお店はあります。
ご挨拶してカウンター席へ。
こちらのお店は、ひとりのスタッフの方が複数の作業を受け持って、縦横無尽に入れ替わり立ち代わり走り回って動く厨房の様子をカウンター越しに見られることだと思っているのですよね。
まだテーブル席を経験したことはありませんが、その点のみをもってしてもカウンターの方がお店の魅力をより満喫できる気がしています。
といっても、お店最大の魅力はやはり、シェフ自身がハンターとして狩りに出るというジビエ。
多様なジビエを使って、また驚くようなお料理に仕上げていらっしゃるのです。
こちらは鹿の血を使ったシガールの中に、鹿の血のブーダン・ノワール。
卵白が泡立つのに必要な成分と同じ「アルギニン酸」が血に含まれるため、卵白に代用できるというお話を伺ったことがあります。
シガールに甘みはあるのですけど、濃くて厚くて濃厚なブーダンの旨みで後味はギシギシ締まります。
食べにくい味は皆無で、スタートから強めの一撃として脳天にくる旨みでした。
蕪のスープ。
中には炙った帆立がゴロゴロ。
上からフリーズドライの南高梅と、花穂紫蘇。
やさしく、少し青みを残した蕪のスープ。
中の帆立は、火が入って旨みが強く出たもの。
香りもとてもよかったです。
フレンチやイタリアンで出てくる蕪のスープは、日本でいう「お粥」のイメージで、大抵「梅干し」に当たるアイテムが乗ることが多いように思いますが、今回はストレートに「梅干し」でしたね。
まったりした味わいにキーーンと目立つ酸味、塩気。
これは合わないわけがありません。
自家製のパン。
確か全粒粉のパンだったはずです。
小鳥型のバターナイフがかわいすぎますね。
使ってみたくて、ついついバターが進んでしまうという。
続いて、ちょっとパッと見だけでは何が出てきたのか分かりませんね。
とりあえず「魚の前菜」のよう。
生春巻きか何かかと思いましたが、桂剥きの大根だそう。
さらに白ワインとコリアンダーで香り付けてあります。
中には、レモン果汁で伸ばした辛子でマリネした真鯛と菜の花。
仕上げに海苔と菊の花。
中はほぼほぼ菜の花の辛子和え、鯛と海苔を合わせると鯛茶みたいなイメージ。
どこを取っても爽やかな香りがして、軽く、軽くいただけました。
スペシャリテのジビエのパテ・アンクルート。
「パテ・アンクルート」はパイ生地で包んだテリーヌ。
ジビエの種類は時と場合によって変わるかもしれませんが、この日は鹿、イノシシ、ヒグマ、アナグマ。
中心はフォアグラ。
ピスタチオもパキッと噛み砕いた瞬間しっかり香ります。
実は1番のお気に入りポイントなのは、鹿のコンソメゼリー部分。
肉の味わいを吹き飛ばすほどの旨みが詰まっています。
添えられているのは金柑のコンポート、ピクルス、プルーン。
三者三様のアクセントに。
メインは鴨のロースト。
ソースは赤ワイン、春野菜を添えてあります。
添えられた黄色い粉はスパイスミックスのパンチホロン。
パンチは「5」を意味していて、内容はクミン、
皮目を必要以上にはパリパリに仕上げず、身の方のしっとりなめらかな舌触りの仕上がりに照準を合わせてありそう。
なめらかな舌触りがはっきりと旨みの濃さ、香りの強さにつながっているのが分かります。
季節の野菜は蕾菜、ホワイトアスパラ。
「春野菜」で想像したものとは違っていて、意外性のある組み合わせでしたね。
デザートは、桜とトンカ豆。
これも一見関連のなさそうなコンビですが、香りの成分が共通しているそうです。
上に桜のクリーム、トンカ豆のアイス。
中にショコラのムース、桜のジュレ、自家製プラリネ、甘夏。
仕上げに目の前でバルサミコ酢。
これまたバラエティに富んでいるようで、食後感としてはとても一体感のある味わいでした。
食後はコーヒーと。
ヒノキの香りのフィナンシェ。
お店のイメージとしては第一にジビエが浮かびますし、デセールを担当するパティシエールも有名なところではございますが、今回は魚の前菜もとても印象的で、ひとつも油断できないなと思いました。
旨みと甘みが常に強烈で、質実しながら突き抜けた味の強さを感じることのできるコースでした。
ごちそう様でした!