今年オープンして人気店街道を駆け上がっている話題のお店、錦糸町の「サウスラボ南方」さんへ。
この日はお店のプロデューサーである菊地和男さんが定期的に企画する特別メニューの会に参加させていただきます。
食通、食好きな方が揃った店内で、菊地さんのアットホームな温度感の口上から会がスタートします。
香港出身だというシェフの"トミー"さんの紹介もあって、とってもフレンドリーな方のようでした。
イベントにはワインのペアリングも用意されていましたが、飲めない組には上質な烏龍茶を提供していただけました。
プロデューサーさんはお茶にも精通されているそうです。
お酒が飲めない人はそういう楽しみ方もできそうですね。
南方XO醤。
料理に付けたりするようですが、今回のコースでは登場しないためアミューズ的に最初に提供されました。
魚介系の旨みがパーッと花開く香り良さ。
ひと口食べて、瓶で購入されているお客さんもいらっしゃいました。
揺柱冬茸羹。
冬瓜と貝柱のスープ。
老鶏、豚の爪、金華ハム。
和食で出汁というと「塩味を控えても美味しい」スープのイメージですが、ここまで旨みが強いと塩気とのダブルパンチでこそその旨みが活きるようです。
正煎鮮尤餅。
要するにイカ団子。
陳皮が入っているとかいうご説明があったかと思いますが、特別変わった方向性でもなく分かりやすい味とポップな食感でした。
椒塩蓮根。
蓮根を縦に割って使っているのがポイント。
強い繊維をザックザックと噛みちぎります。
味付けは塩胡椒、そして唐辛子の辛みに、ニンニクまで効いてかなりジャンキーな味わい。
これはお酒が進みそうです。
もうメインが何か分かってしまう準備が整いまして。
大閘蟹 公姆比較。
日本では「上海蟹」の呼称が圧倒的に多いですね。
今回はオスとメスの食べ比べでいただけるそう。
蒸したて熱々での登場です。
手前がオスで、奥がメス。
オスとメスで旬の時期も別。
10月頃からまずミソと卵をもつメスが美味しくなりますが、次第にミソが減って卵が多くなるそうです。
一方11月後半からオスが白子たっぷりになって美味しく食べられるようになると。
裏返してお腹を見ればオスとメスは一目瞭然。
奥のペンの先のようにとがった溝の入っているのがオス、手前のまん丸を描いているのがメスです。
濃厚なミソと、ポクポクした食感と滋味深い旨みの卵を堪能できるメス。
とろ~りクリーミーな白子たっぷりなオス。
それぞれ全く違った食材だという印象で、食べ比べというか、もはやどちらか一方では満足できませんねえ。
酔蟹。
紹興酒の中で泳がせた上海蟹。
こちらは身の状態としては、生です。
うわ!なんだこれめっちゃ美味い!
紹興酒がいいというのもあるかもしれませんが、ミソと紹興酒が互いの満ち欠けを完全無欠に補完し合うような、初めからこんな感じでしたとでもいうように超自然体に一体化したバツグンの味わいに仕上がっています。
蟹を食べるときは無言になるのが世の常ですが、これは作業以前に美味しさのあまり言葉を失う感動でした。
酔っ払い蟹って、食べるのは初めてではなかったと思うのですけど、こんなに美味しかったかなあ。
これは美味しい美味しい烏龍茶、ではなくフィンガーボウル。
気をつけなくてはいけないやつですね。
メインが終わってもお料理はまだまだ続きます。
郊外油菜。
青菜と、太くて味の濃いアスパラ。
何が美味しいって、これまた金華ハムが存分に魅力を発揮した出汁が素晴らしいです。
咸魚炒飯。
塩漬けにした魚を半発酵させてあるハムユイという食材を使った炒飯。
独特の香りと、旨みの強い塩気。
パラパラ仕上げがさすが。
杏仁豆腐花。
ババロアのように乳脂をこってり感じる仕上がり。
杏仁の香りもしっかり。
奶黄飽焼。
最後に、カスタードクリームを包んだ蒸しパン。
甘さの少ない生地に、卵黄の濃いふるふる食感の強いクリーム。
シンプルに素材の味を出したデザート2品でした。
料理の主張が強いコースだったので、潔くて好感がもてます。
メインである蟹はもちろん強く強く印象に残りましたが、それ以上にどのお料理も調理のレベルの高さを感じさせるものばかりでした。
食材、レシピへのこだわりの説明付きで、贅沢至極な時間を過ごすことができました。
大満足でごちそう様でした!