前々から気になっていたお店を、最近になって人からおすすめされて思い出したので、お昼は東銀座へ。
ル・ジャルダン・デ・サヴール。
1991年創業ということで、30年近い歴史をもつ老舗。
お店は階段を降りた地下にあります。
「商い中」の札が可愛いです。
店内はオープンキッチンを囲むカウンターのみ。
やや強面のシェフが手際よく調理を進める一挙手一投足を拝見することができます。
ちょっと緊張感。
ポップなサービスプレートがちょっと意外。
リーズナブルなランチメニューもあるようでしたが、僕は食べたいお料理があったこともあって、コースでお願いします。
アミューズはとうもろこしのムース、トマト、ニンニク芽、水蛸、カレーの香り。
とうもろこしのムースで囲んだ中に水蛸。
食感が浮くかと思いましたが、水蛸をカレー風味のとうもろこしのソースでいただいている感じ。
水蛸の味と食感の強さが前面に出ていて、結構日本的な1皿のように思います。
味はかなりカレー。
ターメリックの風合い。
熱々のパンをいただきまして。
名物のガルグイユ。
自然から料理を創作する料理人、ミシェル・ブラス氏の生み出したお料理で、お弟子さんを中心に、提供されているお見えがいくつかあるようです。
この料理を食べたいがためにずっと気になっていたのですよね。
要するに、内容としては温野菜の盛り合わせ。
様々な種類の大根、ズッキーニ、オクラ、インゲン、モロッコインゲン、パプリカ、ヤングコーンなどなど。
それぞれの素材に合わせた調理で、日本料理的に言えば"炊き合わせ"ですね。
やややわらかめの食感になるまで火を入れた野菜たちは、味が抜けることなく青っぽさを残しつつ甘さが引き出された仕上がり。
全体をまとめるのはココナツミルクの甘い香りです。
かなり想像のハードルを上げて臨んだのですけど、軽々超えてくる素晴らしいお料理でした。
これだけを毎日食べに伺いたい傑作。
にんじんのスープ。
黄色があざやか。
バターが濃厚に香りつつ、人参はしっかり甘み。
濃厚ながら飲みやすい味に、少しホイップされたような、ほわりとした口当たりでした。
魚料理は真鯛の白ワインと松茸蒸し。
蕎麦の実のリゾット風添え、だそう。
クラシカルなお料理のイメージで来ていたので、和に随分寄せた創作性にちょっと意表を突かれました。
上に乗っているのは水菜。
食べ進めて全体がほぐれると、鍋の後のおじやみたいな感じになります。
真鯛のお出汁と白ワイン、松茸の香り。
そこに水菜や蕎麦の実のエキスが滲んだ味の構成に、完璧感があります。
正直を申し上げればガルグイユ目当てで伺っていたので、衝撃的に美味しく感じました。
多めの水菜も計算通り。
肉料理は、牛ほほの煮込み。
と言われていたのですけど、テリーヌ状に成型したものが出てきて、これまた驚かされました。
フェンネルのピューレとパン粉を付けて焼いてあります。
カリカリした上に独特の甘い香りがあって面白いです。
フェンネルって魚料理に使われるイメージがあったのですけど、ちょっと珍しい気がしますね。
濃厚な脂と、さわやかな香り。
カリカリしつつも、頬肉はとろみがあって、コミカルな食感です。
魚料理に続いて、お肉料理も意表を突く工夫の凝らされた1皿でした。
デセールはレモンのゼリーと蜂蜜のアイス。
さすがにデセールは軽めでシンプルなのかな、と思ったのですけど、
まずアイスが、濃密でなめらかな仕立て。
アイスってどこも一緒なようで、口当たりや中の密度に歴然の差が出るのですけど、こちらはちょっとデセールのプロでもここまで手が行き届かなさそうなくらい丁寧な仕上がりでした。
たまたまかもしれないので、また伺って確認したいです。
それくらい印象に残るほど素晴らしかったです。
ゼリーはカルダモンの香りをつけて爽快系。
さらにネットリ炊かれたレモンの皮も入っています。
シンプルそうに見えて、味わい、食感ともにメインに負けない印象を残す素晴らしいデセールでした。
食後はハーブティーをいただきます。
お土産にクッキーをいただけます。
というわけで、てっきりクラシカルなフレンチをいただきに来たつもりでしたが、食材といい調理法といい、驚きの連続でした。
クラシカルな技法の範疇で革新的、とでも言いますか、スマートに新しい料理でとても好みでした。
またガルグイユを食べるためだけでも再訪したいですし、ガルグイユがなかったとしてもまた伺いたくなる、魅力たっぷりのお店でした。
ごちそう様でした!