この日の夜はお誘いいただいて、昨年オープンして話題を呼んだ注目の中華料理のお店へ。
南方中華料理 南三(ミナミ)。
昨年は錦糸町の「サウスラボ南方」とこちらが本格中華のお店としてオープンして人気を博しましたが、こちらは未訪だったのですよね。
名前がよく似ています。
賑やかな6名の宴です。
シェフは名店「黒猫夜」出身の方で、ちょっとマニアックな雲南、湖南、台南料理の3つの"南"にちなんで店名を名付けたそうです。
春菊、30年切干大根、烏龍茶茶葉の和えサラダ。
スタートのサラダからただ者ではない一皿が出てきました。
30年切干大根というのは読んで字のごとし、台湾の30年物の切干大根なのだとか。
まさかの同い年です。
絡めてある油の旨いこと旨いこと。
春菊が肉厚で力強い風味だったのですけど、それをほんの風味付けと化してしまうほど全体の味がバランスよく整っていました。
いい味。
いきなり人気の理由をガツンと見せつけられたところへ…、
冷菜6種盛り合わせ。
見た目が華やかなだけでなく、1品1品の中に覚えきれないほどの食材が盛り込まれているようです。
説明を聞き逃さんと集中しようとしますが、意識が飛びそうなほど1つずつの説明が魅力的。
枝豆の紹興酒漬け。
常連のみなさんが「ヤバいやつ」「止まらないやつ」と仰っていた1品。
シンプルですが、甘い香りが加わっただけで突然贅沢な味わいに感じられるようになります。
サワラの塩レモンソース。
皮目を燻したサワラに塩レモンとマスタードが爽やかなソース。
メイン食材より上に乗った薬味モリモリのソースが主張する面白いバランスの構成。
コースを通してこのイメージが結構多かったですけど、慣れてくるとソースの方がむしろ楽しみになってきます。
芽キャベツとアヒル卵の炒め。
ピータン寄りの独特の香りと旨みのある卵。
クセになる味わいです。
よだれなまこ。
よだれ鶏のなまこバージョンということでしょうか。
香辛料と薬味たっぷりのソースに漬かったなまこをつるんとさっぱりいただきます。
鯖スモークとカブのハイビスカス甘酢漬け。
鯖といえばそれだけでも美味しいのに、そこへスモークを乗せ、甘酢漬け、それもハイビスカス甘酢を乗せるという盛り込み振り。
それでも決してうるさくない、甘みと香りと旨みとこれまたバランスのいい味わいに整っています。
酔っ払い海老。
こちらも紹興酒漬けですね。
もちろん鉄板の香り良さ。
どれも甲乙つけがたいというか、全部大当たりなのですけど。
個人的にはアヒル卵の独特の味わいと、鰆に乗った塩レモンソースが印象に残りました。
凍頂烏龍茶。
最初はジンジャーエールを頼んでしまったのですけど、こちらの方が売りっぽかったので注文。
お湯が切れるころにお店の方が注ぎ足しにきてくださいます。
羊のウインナー、豚の大腸のネギ挟み揚げ、アヒルのタン。
こちらはお店の定番。
見るからにクセの強いお肉料理3品盛りです。
豚の大腸のネギ挟み揚げ。
こちらは「熱いうちに」とのことでしたので、サクッと。
大腸の脂とネギのトロッとした感じ、肉の旨みとネギの甘みが絶妙にとけあいます。
アヒルのタン。
骨をしゃぶるようにして、肉を引きはがして食べます。
凝縮した旨み。
羊のウイグルソーセージ。
様々な食感のお肉や香辛料が肉詰めになっていて、フランス料理のアンドゥイエットを思い起こさせるような食味のバラエティー感です。
オオタニワタリとつぼみ菜の炒め、雲南のオリーブ。
二刀流メジャーリーガーかな?と思ってしまいそうな名前の「オオタニワタリ」は、シダ科の植物だそうで、食べるとモロヘイヤのようなちょっと粘りのある口当たり。
こちらは雲南オリーブ。
むかごくらいのサイズ感で、ケッパーのように小粒で強い味。
つぼみ菜で食感にボリュームを出しているのも秀逸。
お肉の旨みも手伝って、まったく飽きが来ないどころかどんどん食の進む1皿でした。
雲南ポルチーニの春巻き。
「雲南省にもオリーブがあるんだよ」に続いて「雲南省にもポルチーニがあるんだよ」。
熱々でバリッバリの皮を噛み砕くと、中からなるほどネットリした食感で香り高いポルチーニが登場。
シンプルな見た目でいて、とても贅沢な1品でした。
ここから大物が続いてフィナーレへ向かいます。
鮟鱇と白子の紀州豆鼓煮込み。
複数種のスパイスをガッツガツに効かせたあんこう煮。
そこに白子を加えて、"紀州豆鼓"で旨みをプラスしてあります。
香りからして凄まじいのですけど、旨みが出るタイプのスパイス使いで、鮟鱇・白子からも旨みが出つつ、紀州豆鼓は独特の風味を放っていて、振り返ってみると足し算につぐ足し算の味作りなのですけど、これもやっぱりうるさくない。
こちらの料理はそういった心境の繰り返しなのですよね。
6人いらっしゃったこともあって、鮟鱇の全部位は確認できませんでしたが、この味と風味のるつぼにあって、食感のサラダボウル感とくれば、脳の中心が痺れるような刺激を感じます。
白子、あん肝。
クリーミーで濃厚なコクまで加わって、本当に抜かりない味。
紀州豆鼓というのはこんな感じ。
粘り気があって、どこからどう見ても納豆みたいな感じでした。
「納豆」といわれれば誰一人として疑う人は現れないとさえ思います。
ラムのロースト ニラミントレモングラスソース。
オーブンでしっとり焼き上げたラム肉に、刻んだニラ、ミント、レモングラス、パクチーを刻んで油で仕上げたソースをたっぷり盛ってあります。
厚切りで肉々しい食感、力強い味わいのラムもとてもいいのですけど、これはまたソースが素晴らしすぎますね。
めちゃめちゃ爽やかなのに、これだけでも食べられてしまう味の整い方なのですよね。
黒い胡椒のような粒は「木姜子」という香辛料なのだそう。
テカテカになっているのが分かると思いますが、基本は油ベースのソースなのですけど、ちょっと瓶に入れて持ち帰らせてほしいくらい絶品でした。
バランスが悪くなりそうで、バランスが完璧。
繰り返しになりますが、その連続です。
アヒル卵、雲南ジロールのカルボナーラ風米線。
また登場した味の濃いアヒルの卵を使って、今度はカルボナーラ風。
麺はぶりんぶりんにコシの強い米線。
太めの冷麺みたいなイメージですね。
麺と見分けしにくいですが、上にジロールがたっぷり盛られています。
麺、卵と食感と味が濃いところへ、胡椒がビリビリに効いています。
口の中でバッチバチにケンカしながら一体になる一皿でした。
杏仁豆腐、苺ソルベ、桃の樹液。
ぷんと香る杏仁は本格派、そこへ苺を合わせてイチゴミルクにする意外性がニクいところ。
そして風味としての主張は淡いものの、食感でインパクトを残す桃の樹液。
杏仁豆腐がここ最近で食べた中ではトップといってもいいほど香りよく、コクがあって濃厚で印象的だったのですけど、この苺のソルベはちょっとそれを超えてくる鮮烈な爽やかさでしたねえ。
またこの両者とてもよくかみ合っているので、どちらも強く強くいい印象ばかりが残りました。
というわけで、かなりのボリューム、品数でしたが、どれも完成度の高い味に作り上げられていて正直驚かされました。
また伺ったらどんな料理が出てくるのか、楽しみでなりません。
ごちそう様でした!