この日は久しぶりに北品川の「カンテサンス」さんへ。
去年は2回伺えて、今年も定期的に…と思っていましたが、12月にようやく初訪問となってしまいました。
貫録のある重い扉を押して中へ。
今回は写真NGのダイニングだったので写真はありませんが、食事の内容を文章で書き残しておきます。
定番料理や、以前個室で写真を撮ったことのあるお料理もあったので、それだけ過去の写真を添えてみます。
まずはアミューズ。
暖かいアーモンドプードルのサブレの上にセイコガニの蟹身と蟹味噌。
これは以前いただいたアミューズで上には蛸が乗っていましたが、このスタイルのフィンガーフードです。
こちらのお店では、料理やデセールに使う焼き菓子を焼きたてで使うので口に入れたときの口どけや、チーズにも近いバターの香りにまず圧倒されます。
蟹味噌の香りも温度が相まってより豊かに。
最初の前菜は小さなグラスに入ったスープ。
これは前回いただいたもので、中身は違いますがこのスタイル。
今回は「熊のスープ」とのこと。
響き的には「くまのプーさん」と空耳するワードでしたが、ツキノワグマとアナグマの旨みの強く出たスープでした。
紫色のチコリみたいな野菜のアンディーブの苦みが風味の肝。
前菜2皿目は、緑色の直方体が登場。
鮮やかな緑の正体はほうれん草のクスクス。
中には細かくカットした牛タン、さらに上には鶏のから揚げのような見た目のリードヴォーのフリット。
少量ながら牛タンがとてもいい味で全体を覆っている1品。
サクッと軽い食感のリードヴォーも印象的でした。
前菜3皿目は、スペシャリテの山羊のミルクのバヴァロワ。
山羊のミルクで作ったバヴァロワに食感の似たゆり根とマカダミアナッツを散らして、ゲランドの塩とプロヴァンスのオリーブオイルで原色で色をつけるような風味付け。
説明を受けた通り❝混ぜずに❞口に入れると、それぞれの要素が、一体感、そして変化…渾然一体となって、複雑とシンプルを両立するような味わいを生み出します。
前菜4皿目は定番といってもよさそうな茄子のプレッセ。
これも以前いただいた際の写真。
フォアグラのテリーヌ、シェリービネガーでマリネした茄子、カカオのチュイルを重ねた1品です。
ひんやりして濃厚なテリーヌに、フルーティーな甘みのシェリービネガーがとても印象的。
前菜5皿目はタルトフランベ。
本来薄焼きの生地に玉ねぎやチーズを乗せて焼き上げる料理ですが、こちらはかなり厚めの生地を焼き上げて生ウニを乗せてありました。
アクセントに桜海老の香ばしさ。
魚料理はクエのポワレ。
両面をカリッと焼き上げて、あとは余熱で火を通して中心部はレアな仕上げ。
ソースはキノコ。
恐らくソース以上にポワレ側のバターがかなり濃厚に香っていたように思います。
落花生と蓮根のペーストのフリットを添えて。
お肉料理は小鴨のロースト。
小鴨って多分初めていただきましたが、鴨に比べると随分ソフトな食感ながら、じっとりとろけてレバーを思わせる濃厚な旨みはしっかり鴨のソレ。
ソースはみかんのタイム、添えてあるのはメープルの香りを付けた海老芋のフリット。
ナイフはペルスヴァル。
鴨料理が得意だったフランスの星付きシェフが、自分で鴨をよく切れるナイフを手がけるようになった末に結局ナイフ職人になってしまったという逸話を持つ銘品。
やわらかいお肉は逆に切りづらくなりそうなところ、スパッといけました。
デセール1皿目はあんぽ柿のソルベ。
ねちっと粘りがあって、強い甘みが印象的なソルベでした。
柿の甘みは風味もベースのしっかりした感じがいいですねえ。
デセール2皿目はココナッツのブランマンジェ。
これがこの日最もインパクトが強かった1品でした。
ブランマンジェの上に少量のエスプレッソを落として、さらにピスタチオをたらりとかけてあります。
エスプレッソとピスタチオオイルは完全に分離して混ざっておらず、「このデセールはまだ未完成」で口に入れることで完成すると説明がありました。
これが想像以上に鮮烈な味のマッチングで、ピスタチオオイルのちょっとヒリッとしたスパイシーな感じとエスプレッソの酸味が一致しつつ、全く別方向の苦みや風味が弾けるような。
そしてベースにあるブランマンジェのコクはとてもふくよか。
この日のお料理もすべて素晴らしかったことは間違いないのですけど、これが頭一つ抜けて印象に残りました。
デセール3皿目は、安納芋のスイートポテト。
オーブンから出したてと思われる焼きたてスイートポテトの上に安納芋のアイス、そして安納芋の皮のチップス。
軽めのお皿が多いこちらのお店でいうと、お腹にグッとくるのはこのデセールかなという感じ。
〆にしっかりきます。
最後のデセールは、これまたスペシャリテのメレンゲのアイス。
メレンゲを焼いてパウダー状にしてアイスに。
仕上げに能登の海水を吹きかけてメリハリのある味わいに。
食後のドリンクはハーブティーをお願いして、いくつか選択肢がありましたが菩提樹でお願いしました。
お茶菓子はアーモンドの焼き菓子。
最後はシェフが挨拶に出てきてくださいますが、何だかお会いするたびたくましく精悍になられていく印象。
使う食材そのもの、そしてその組み合わせ、調理法、どれにもこだわりが感じられて、驚きと感嘆の続く夕餉でした。
またすぐ再訪したくなりながら、大満足でごちそう様でした!