この日はお誘いいただいて、「銀座レカン」の元料理長が門前仲町に開いたビストロ「渡辺料理店」さんへお邪魔できることに。
何度か伺おうと思ったことはあったのですけど、いつも予約満席で機会に恵まれなかったのですよね。
シャルキュトリー盛り合わせ。
パテドカンパーニュ、白レバーのムース、ハム、そしてブーダンノワール。
白レバームースはお酒が利いていて、高貴で上品でジャンキー。隣に添えられた干しいちじくのコンフィチュールと、濃厚同士の相乗効果があります。
パテカン用のマスタードは粒ありと粒なしの両翼が揃っていました。
ブーダンノワールにはりんごのジャムと、パイ生地添え。凄みのある旨みの一方で、変化を付けて楽しめるようになっています。
シャルキュトリー自体の質の高さはもちろんさすがですが、添えてある1品1品も選び抜かれ、こだわりが光ったラインナップで、すでに大満足してしまいそうな1皿でした。
バゲットは同じ門前仲町の「たむらパン」さんのもの。
花咲ガニ パプリカムース。
パプリカのムースに惹かれるところがありますが、花咲ガニを中心としたお皿です。
パプリカのムースを敷いた上に蟹の出汁のジュレ、蟹のほぐし身、蟹味噌。
甘み、旨み、酸味がバランスよく散りばめられていて、特に蟹とパプリカがかけ離れているようでどことなく重なりも見られるところが面白かったです。
絶品です。
ポロ葱ヴィシソワーズ 大葉チョリソ風味。
ポロ葱の甘みと旨みが引き出されたヴィシソワーズに、大葉のニュアンスと仕上げに散らされたチョリソ。
植物的な香りの華やかさと、動物的な旨みのワイルドさが加わって、別軸で食味が立体的に押し広げられることによって、空間把握に時間を要するような味の表現になっていました。
エゾ鮑 ベーコンフラン 肝と生海苔ソース。
ベーコンの風味の付いたフランの上に生海苔のソース、エゾ鮑に肝のソースをのせてあります。
真ん中には海藻バター。
潮の香りや磯の香りといった爽やかな風味とは全く世界の違う、煮詰めて絞り出したような濃さの海を味わいました。
メインのお披露目がありまして。
牛フィレ肉のパイ包み焼き ウェリントン。
お肉の周りをパテで覆いパイで包んで焼き上げるイギリスのクラシカルな料理「ビーフ・ウェリントン」風の仕立てということのようです。
パイ自体がまず爆発的に豊かな風味ですが、そこへ中のフィレの肉汁とパテのリッチな脂というダブルパンチが、さらには外からペリグーソースの甘酸っぱさとトリュフのトドメの香りが加わって、笑っていいとも最後の夜の「スター全員集合」的な大団円感のある味の華やかな大立ち回りでした。
ある程度の人数を揃えて事前に予約しないと食べられないという逸品。
ご調整いただいた幹事さんに大感謝でした。
桃のコンポート ヴェルヴェーヌ・ブランマンジェ。
下からヴェルヴェーヌ(=レモンヴァーベナ)の香るブランマンジェ、桃のコンポート、バニラのアイス。
ペーシュメルバをベースにしたデセールのように思います。
バニラのアイスは温度管理がいいのか、とろんとやわらかな質感で、スーッとスプーンを通してそのまま桃までサクッとすくい出していただくことができました。
上品そうに見えて、意外とドン!デーン!と勢いのいい盛り。
遠慮なくワッシャワッシャとそれぞれの要素を合わせて、マリアージュを楽しみながらいただきました。
食後はハーブティー。
記憶が飛びそうなほどパンチを受け続けたみたいな怒涛のコース料理を、テーブルの皆さんと歓談して終了。
過去の肩書きを背負ったクラシカルな料理をベースに、ビストロという新たな肩書きを持った自負な感じられる意欲的、挑戦的なアレンジが随所に見られて、個人的には大大大好物のコース料理でした。
また何とかタイミングを見つけなければ…‥と思いながら、ごちそう様でした!