この日の夕方はひっさしぶりのパリの空の下さんへ。
4月になってようやく今年初訪問となりました。
今回はストック用のパンドミと、魚系のサンドが狙いでしたが、パンドミは既に売り切れ。
魚系のサンドは僕の前まで4種類残っていましたが、前の方でそのうち2つがなくなってしまってハラハラしました。
そんな今回の戦果はこちら。
カンパチの中落ちサンド(750円)。
パンオレ生地にたっぷりのカンパチ中落ち。
骨周りの身は、脂を持ちつつ筋肉質な弾力のある食感に強い旨み、魅力たっぷりの部位ですね。
旨みと紙一重というか、旨みと引き換えにというか、においも出やすい部位かと思いますが、
翌日や翌々日くらいにいただいても、むしろ味が濃くなっていくように感じられました。
魚自体の質、処理、あるいは火入れ、マヨソース、そのいずれかか、あわよくばそのどれもが揃っているのかも。
トン・アスペルジュのサンド(750円)。
まぐろと季節野菜のアスパラガスのサンド、こちらはパンドミですね。
まぐろがモリモリで埋もれていますが、アスパラもたっぷり入っています。
アスパラの食感って、サンドイッチの1具材としては歯応えが強くなりすぎてしまいそうですけど、
食べてみると違和感なく絶妙に主張のある食感で、独特の香りもしっかり残した見事な火入れでした。
まぐろもしっとりした仕上がり、コラーゲンたっぷりなのだそうです。
タルト・シトロン・アンシエンヌ(750円)。
アンシエンヌは「アンシャン・レジーム」のアンシャンと同義だと思います。
クラシカルな、古風なタルトシトロンといったところでしょうか。
クレーム・シトロンにはピールがゴロゴロ、ざっくざくと入っていて、全体に素朴な食感。
苦み、旨みが前に出てきた落ち着いた味わいですね。
タルト生地も気持ち強めの食感でしょうか。
以前は小さなタイプのをいただきましたが、今回のアントルメをカットしたサイズの方がクレームはしっとり仕上がっていたように感じました。
タルト生地とのバランスを考えても、こちらの方が抜ける香りがさわやかですね。
あまおうのタルト(950円)。
久しぶりに購入できました。
中心部近く、9割方赤みの差した熟度の凄みのある大粒のあまおうです。
タルトはピスターシュ。
杏仁や甘酒にも近いような、酔ってしまいそうな香りよさ。
どっしりしつつも舌の上でネットリととけてゆく妖艶さ。
あまおうのインパクトがすごいタルトですが、食べてみるとピスターシュの印象が全体を包み込むのですよね。
あまおうのインパクトはもちろんすごいのですけどね!
ナパージュしただけではなく手を加えてあるかと思いますが、このあまおうだけでも別次元の完成度。
歯応えは残しつつ、全体がしっとりして、歯で圧をかけ始めた瞬間に香りが解放されて激流のように鼻から抜けていきます。
食感も風味も、ただの"美味しい果物"というのとは全く別次元になっているのですよ。
これが"フランス料理の仕事"がなされているということなのでしょうか。
このところ頻繁に伺えずもどかしい限りですが、やっぱり凄まじい魅力を持ったお店でした。
もう絶望的なまでに何度も感激させていただいてきているのですけど、
伺えない間にさらに美化されてしまったその記憶さえも、軽々越えていく圧倒的な隔世感でございました。
ありがたやありがたや。
また伺います。