お昼は広尾のOdeさんへ。
2017年9月にオープンしてから立て続けに2度伺ったのですが、今年に入ってまだ行かれていなかったのですよね。
これまで2回は、コの字型のカウンターのちょうど正面の席でしたが、今回は反対のこちら側に。
「壁の向こうが厨房なので、音がするかもしれません。恐れ入ります」。
最初に一組ずつ回っていらっしゃるシェフとご挨拶。
レストランの厨房の音も楽しめるとは、贅沢なくらいです。
まずお茶のスパークリングから。
炭酸の酸味をはっきり感じるほど、イメージからすると炭酸がお茶に勝ったバランスでしたが、これがなかなかにちょうどよかったです。
ホットミルクにマーカオという台湾の胡椒。
以前はなかったと思いますが、アミューズに合わせるアイテムとして。
アミューズ。
一応予約の際には「以前の訪問状況」を把握されていたようでしたが、料理になるとゼロからご説明いただけました。
ドラ○ンボール。
オマールのムース、カカオバター。
お隣はヨーロッパからいらっしゃったカップルだったのですけど、スタッフの方が「This is Japanese…」と説明を始めたところで男性の方がかめはめ波のポーズを始めていらっしゃいました。
やっぱり通じているのですねえ。
小さいながらに重みの口に残るタイプのアミューズですが、ほの温かいミルクでさらりと洗い流してくれます。
口に残った粗挽きのマーカオをかじったら、爽やかな香りがするのが秀逸。
福岡の太秋柿、カラスミと焦がしバターのソース。
お隣のポーランドのお客さんから「Wagashi(ワガシ)」という単語が聞こえてきて、なるほどと納得。
表面にはフェンネルのつぼみ。
口に入れたタイミングではなく、噛み砕いたタイミングで香るので時間差があるのが面白いところ。
しゃきしゃきした柿の食感は筍と勘違いするほど。
甘さはさほどなく、味わいの印象はカラスミと焦がしバターに譲ります。
"Wagashi"という発想に至らなかったのは、僕が単純に鈍感なこともありますが、僕は"フランス料理"を食べに来ているのに対して、海外のお客さんというのは"日本のフランス料理"を食べに来ているという違いがあるのかなあという気も。
サツマイモとフォアグラのタルト。
軽い食感のタルト生地の中にフォアグラのムース、鳴門金時のスライスで蓋。
表面にはほうじ茶の飴、中心に岩塩一粒。
フォアグラはひんやり濃厚、甘すぎずホクホクした鳴門金時に飴の甘さが添加。
Odeさんの前菜は、説明がないと分からない世界観ながら、食べると分かりやすく、やさしく美味しい味わいなのが特徴的なのですよね。
パクッとひと口。
"Signature dish"、お店の看板メニューである「灰色」の一皿。
カウンター、壁がグレーに統一された店内にあって、グレーの皿、グレーの料理。
秋刀魚、ローズマリーでマリネした尾崎牛のタルタル、黒にんにく、ビーツ、秋刀魚の肝ソース。
何より特徴的なのは、秋刀魚の頭と骨を使ったグレーのメレンゲ。
タルタルは酸味をまとって、ビーツや肝ソースは甘み寄り。
秋刀魚や尾崎牛はさっぱりしながらも旨みが濃縮されていて、バランスがよく、それぞれに主張のある一皿でした。
フォカッチャもこのお店のお気に入りポイントのひとつ。
前回訪問より、かなり濃厚な味わいになっていた気がしますが、水分がずば抜けて多くてもっちんもっちんの弾力は相変わらず。
素晴らしかったです。
たら白子とウニのリゾット、干した舞茸のフリット、しめじ。
縮みほうれん草で包んであります。
たら、ウニの磯っぽい香りに負けない茸の香りがすばらしいですね。
縮みほうれん草のイメージからいうと、かなりいい意味でエグみのしっかりした味わい。
旨み甘みでやさしい味わいのリゾットに、斜めに挿し込むような風味でよいですねえ。
魚料理は函館のたら、牡蠣の泡のソース。
泡のソースはシェフが前にいらっしゃったシックプッテートルの十八番でしたね。
かぼちゃのニョッキに銀杏。
この辺りに秋色。
もっちりした後チャキッと歯切れのよい身質のたら。
牡蠣の香りをまとって、磯っぽさがふくよかになります。
お肉料理は定番の川俣シャモ。
中にモモ肉を詰めたガランティーヌになっていました。
ソースはカリフラワーのエスプーマ。
太い旨みながらさっぱりした香りの川俣シャモに、まったりとしたカリフラワー。
モモ肉のジューシーな脂が溢れます。
カリフラワーとシャンピニオンのソテー、カリフラワーのピューレ。
シャモのジュも吸って、はっきりとした味に。
メインが終わったところで、グレーの店内に映える金のスプーン。
デザートはほうじ茶のアイス。
もちろん一筋縄ではいかず…、
ほうじ茶アイスの下にはポン菓子、葛切り餅、干しあんず。
上には黒蜜ソースとオレンジの皮。
ポン菓子、葛切り餅は、食べ慣れた風味、食感ではありますが、フレンチの中に入る面白さ。
黒蜜ソースとオレンジの皮など、組み合わせの妙もさすがのセンスでした。
お茶菓子は酒粕まんじゅう。
もちろんただのおまんじゅうではなく、レーズンと干した和梨が包まれています。
和と洋がほどよくフュージョンしていますね。
目の前に出された瞬間に僕が気が付いてニヤッと笑ってしまったので、
「これ見よがしに置かれておりますのは…」
とスタッフの方が説明を切り替えてくださった、左奥のチョコレートはゴボウのチョコがけ。
まったく違和感なくて面白かったです。
お茶はシナモンと山椒の効いた紅茶をお願いしました。
かなり出が薄かったのですけど、確かに香りがかすかに感じられました。
食後にはこれくらいがいいということでしょうか。
Odeさんは、とにかくどの料理も分かりやすい美味しさなのがいいですね。
作り込んであるわりに、食材の味わいがストレートに出た仕上がり。
目にも贅沢お料理の数々で極上の時間を過ごすことができました。
意識的に配された和のイメージもお店の方向性を感じさせるものだったかもしれません。
また今度はあまり間を空けずに伺いたいと思います。
ごちそう様でした!