5月28日(火)、1年ぶり3回目のカンテサンスへ。
ジーパンに無地のシャツしか着なくなった僕でも、ジャケットなぞ羽織ってめかし込んじゃいます。
基本的にお料理の撮影はNGなお店なので、今回は写真がありませんが、なかなか伺えるお店でもないのでメモ程度にテキストで残させていただきます。
ちなみに個室のみ撮影OKとなっていて、幸いにも前回個室で食事したときの写真があるので、イメージ画像として差し挟みながら書き進めますね。
この記事執筆現在、ランチ営業はやめていらっしゃって、毎日17時~、20時半~の2回転制になっています。
毎日ちょうど2か月後の予約が解禁になるので、空席さえあればその2か月間の予約が可能というルールだそう。
平日の17時スタートの席は比較的取りやすいと伺っていましたが、僕は4月の頭に電話して「火曜の17時スタートの席」と絞ってお願いしたら、この日しか空席がありませんでした。
ちなみに電話が通じるまで200回以上電話したら、iPhoneだと200件までしか残らない通話履歴は、
「03-62××-××××(200)」
という表示だけ残して他は全て消えました。
正真正銘、予約の取れない名店です。
といってもこの日のこの枠は満席というわけではありませんでした。
そもそも全席埋まるように予約を取っていない可能性もあるので「空席」と言っていいのかは分かりませんけどね。
テーブルについてくださったサービスの方は、前回の個室のときと同じ方で、ちょこちょこユーモアのあるジョークを挟んでくださる男性で、今回もちょこちょこ楽しませていただきました。
お料理について質問すると、即答で返してくださいましたし、ワインの説明もどれも自分の言葉で丁寧にお話してくださいました。
アミューズはフィンガーフード。
サブレ生地の上に、生のカマス、刻んだニンニクと焼き茄子。
焼き茄子を使ったソースって「中華」っぽい風味になりがちですが、今回はシンプルに甘みと旨みの主張するパーツに。
続いてカマスがしっかり味わいを主張しつつ、最後はサブレの香ばしさが残ります。
続いて小さな冷製スープ。
確か「バイカラー」という沖縄のとうもろこしで、スープの中にはソルベも。
トップに乗せたヒゲは香ばしさと、出汁のようにはっきりと旨みのある出汁のような役割に。
とうもろこしって驚くほど甘い品種が増えていますが、それにしても甘いとうもろこしでした。
次が山羊のババロワ。
山羊のミルクと生クリームだけで作るというババロワに南仏のオリーブオイル、北部の塩。
さらに、見た目も食感もどことなく似た雰囲気のあるマカデミアナッツとゆり根。
山羊のミルク特有のニオイはほとんど感じず、味のイメージとしてはヨーグルト。
近くで見ると実は結構こわい山羊も、遠めに見ればかわいい、そんな距離感をしっかり保ったような素材の活かし方かも。
そこにしっかりと動物性の旨みを感じます。
これは本当に傑作。
続いての前菜は、馬肉のタルタル。
牛の胃袋・センマイを刻んだものを混ぜ込んで、上にはディル。
ユッケなんかをイメージしてよさそうな、分かりやすい「味のする」タルタルでした。
続いては、お皿に敷かれたクレープ生地に穴子のフリット。
上にアルファルファのようなサラダが乗って、ソースというよりはドレッシングで和えてありました。
ナイフとフォークも用意されていましたが、クレープで巻いて手に持って食べることを推奨されたので言われるままに。
なるほど、かぶりつくとサラダとドレッシングの醸し出す雰囲気が庶民的なソレで、どこか懐かしささえ感じる食体験。
ただクレープ生地にドレッシングが浸透してきたので、途中からフォークとナイフを使っていただくことに相成りました。
穴子も食感にボリュームが出るような形で揚げられていて、ふっくら美味しくいただけました。
最後の前菜は、スペアリブのグリル。
ソースには鳩のレバーが使われていました。
下味に甘みがあるからか、分かりやすい美味さのスペアリブ、骨周り最高。
そこへ、説明通りクセなく細マッチョな感じのスマートに肉々しさを主張するソース。
魚料理は、宮崎県産・スギという魚自体の見た目はサメ、料理としての見た目はブリやカンパチのようなものの、レアなロースト。
ピンクみを残した火入れで、とろんと可愛さを感じる食感、味わい。
ソースは水菜とドライトマト、そこへ香り付けにクミン。
クミンの風味が主張しすぎない感じで絶妙だな、と思いきや、口を開くとはっきり「カレー」になったり、色々な表情のあるソースでした。
付け合わせにふきなど。
肉料理は、小振りなうずらのムネとモモ。
小さな個体のムネなので火が入りすぎないように両面に粉を厚めに付けたような生地で挟んで火を入れてありました。
蒸されてふっくら仕上がった身。
モモは表面がパリッと軽妙な食感でしたが、比較して脂の多いこちらは獣っぽい香りも強めでした。
ソースはグランマニエやオレンジ果汁などを使って、口に入れると強く強くオレンジを感じるもの。
付け合わせの白いんげん豆も、単品のおかずとして明確に美味しさを感じる1品でした。
「ここからデザートが4品ございます」
という甘い言葉に嬉しい悲鳴をグッとこらえます。
デザート1品目は、チョコミント風アイス。
失念してしまったのですが、ミントのような香りのするハーブか何かの真緑色のアイスにビターチョコのチップ。
何がいいってこのビターチョコチップがとてもよかったです。
続いてココナッツのブランマンジェ、上にカットしたスイカ、ライチ、ライムの泡。
想像をはるかに上回るココナッツの香り高さに驚き。
スイカともケンカしないどころか、見事に一体感のある妖艶な味わいになっていて面白かったです。
3品目は恐らく焼菓子が出てくるのがパターンのような気がしますが、今回はケイクノワゼット、ヘーゼルナッツのケイクでした。
焼きたてで温か、香りが凄まじいです。
添えられたアマレットの生クリームは、アルコールをしっかり感じる甘くちょっと辛い香り。
これも絶品。
最後にスペシャリテのメレンゲのアイス。
サクサクの焼きメレンゲを粉砕してアイスに仕上げたものなわけですが、緩くなめらかにとろけかけた食感は、まるで柴咲コウの言うがままに待った何とかゲンダッツのそれ。
アイスの王様はバニラのようなイメージはありますが、謀反を起こしたらもしかしたらもしかしかねない王道を感じるいい味なのですよねえ。
最後にピスタチオのお茶菓子。
雰囲気がありつつも、緊張しないで食事を楽しめる空間づくりがお見事。
料理は、華やかな見た目ながら、味わいが分かりにくくなりすぎないように調整されているのを感じました。
僕のような素人でも素直に楽しめる内容でありがたいです。
価格はおまかせコース1本で22000円に消費税、サービス料がかかって、あとはドリンク次第といったところ。
これが25000円ちょっとで堪能できると思うとお値打ちですね。
SNSの趨勢で、「映え」重視の食文化が跋扈しているとも思える昨今ですが、もちろん何が正解ということはないのでしょうけど、写真をNGにしているこのお店が君臨し続けているというのは何か誇らしく感じられるところがあります。
またお邪魔できますように。
ごちそう様でした!