この日はありがたいことにお誘いいただいて「鮨はしもと」さんへ。
以前はよくお会いしていたみなさんともすっかりご無沙汰してしまっている今日この頃でしたので、とても楽しみにしていました。
時間になって店内へ。
時期が時期だけに常連のお客さんが多くて、この日もカウンターは最初から和やかな雰囲気でした。
店員さんもここ最近でガラッと入れ替わっていらっしゃったと思いますが、随分みなさん慣れてきたご様子。
僕なんかはまだまだですが、「この常連さんにはこれ」みたいなパターンも頭に入っているようできびきびと動かれていました。
突き出しは枝豆からスタート。
時期も終盤で、走りのさわやかな風味とは違いますがちょっと熟れたような、深みのある味に。
ぽりぽりと食べ進めながら、ご主人の手際よいお仕事を拝見。
久々のみなさんとのお話も弾みます。
お湯呑みは好みにドンピシャな、直線的でゴツゴツしたこちらからスタート。
ツマミはまず平目とミル貝。
カレイが出ることが多いように思いますが、今回は久しぶりに平目。
ミル貝。
厚みがあってイメージよりやわらかい食感で、ちょっとホタテに近い感じ。
しっかり甘みと昆布みたいな海藻系の旨み。
平目。
ふんわりふくよかなやわらかさですが、以前に比べると少し食感があるかも。
旨みもしっかり。
かつお。
このところいつ食べても戻り鰹のようにガッツリ脂の乗ったかつおのことが多かったのですけど、こちらはかつおらしい爽やかな酸のある香りを感じられるものでした。
藁で燻した香りがより引き立ちます。
「はしもと」さんでは和辛子を添えて。
辛みではなく香りがすっと酸味ととけ合います。
脂の乗っているかつおだと濃厚な味わいと辛子の相性がいいイメージですが、酸味ともよく合いますねえ。
続いてのお湯呑みは、指にかかって持ちやすいこちら。
飲み口は意外と薄めなのがポイントです。
表面がいくらで埋め尽くされた茶碗蒸しは、中にたっぷりの湯葉。
湯葉はそれ自体の味、食感はもちろん、大豆の出汁が全体に回っているような印象でした。
表面のいくらは後乗せだと思いますが、少し火が入っていて皮目がやや固め。
ぱっつんと強めに弾けて、仕上げに散らしたゆずの香りと勢いよくぶつかります。
あわび。
かなりサイズのあるあわびで、ゼラチン質の強めな透明感のある質感。
ふるふるとはかない食感ながら、きりっと角の立っているところがゼリーっぽい感じ。
あわびを食べ終わったところで、シャリと細かくカットした白いか、そして肝ソースを合わせていただきます。
エッジの効いたシャリの酸味と、ビビッドな白いかの甘み。
主張の強い要素を、風味濃厚な肝ソースで力強くまとめ上げます。
すみいかゲソ。
握りで登場するすみいかのゲソは、炙ってつまみで。
火が入って縮んだゲソはかなり小振りですが、このか弱い足がふにふにと絶妙な口当たりを生んでいます。
小さくても炙りの香ばしさは一人前。
マヨネーズがほしくなってしまう味わい。
いわし巻き。
ガリ、大葉、浅葱、ゴマ、たくあんをシャリなしでいわしと巻物にしたもの。
定番のお料理ですが、やや直径が大きかったような。
脂が軽めで、その分いわしのさわやかな香りが際立っていました。
また薬味系の甘みや香りもくっきりと。
こちらも定番つまみの盛り合わせ。
筋子味噌漬け、あん肝。
筋子味噌漬け。
前回はときしらずの筋子を使われていて、その濃厚さもすごかったですが、比較してみる面白さも合わせて今回もバランスのいい味わいでよかったです。
ねっちり。
あん肝。
甘く炊かれることで、あん肝自体の脂の旨みが強調されます。
焼き物は目光り。
先日市場でも見かけたところでしたが、塩焼きでいただくのは初めてかも。
しっかり網焼きの焼き目が付いています。
身薄ながらよく脂が乗って、弾けんばかりに皮目がバッキバキ。
脂と身のボリュームのバランスなのか、意外にエボダイとちょっと近いようなイメージでした。
ガリと指拭きが登場。
ここから握りが始まります。
お湯呑みは薄口のものに。
小肌。
かなりサイズのある小肌で、脂乗りもしっかり。
酢締めの香りは後味にスッと感じる程度で、味の濃い小肌でした。
すみいか。
ゲソのときもそうでしたけど「新いかかな?」と思ったくらいだったので、若いすみいかだったように思います。
ぱすんと独特のはかない食感。
真鯛。
皮目が残っているのがお気に入り。
湯霜にしてクニッと独特の口当たりになった皮目は、その下たっぷり旨みを蓄えています。
身にももちろん旨みがあって、二段構えのように味に立体感が出ます。
少し厚い飲み口のお湯呑み。
鰤漬け。
表面が焼いたお肉のような色になっている柵から切り出された鰤漬け。
綺麗にサシが身になじんでいます。
脂が軽やか。
北寄貝。
こちらの面にサッと火を入れてあるので、口馴染みのいい食感に、甘みと旨みのバランスのとれた味わい。
軽い火入れなので、個体差も大きく出るネタのように思います。
赤身。
薄く広く切り出して、少し巻き込む形で握ってあります。
身の柔らかさを感じさせつつ、巻き込んだところの空間の効果で口の中に香りが広がるように思います。
この日のまぐろはすべて塩釜。
中とろ。
脂はしっかり乗っていますが、夏のまぐろらしい軽やかさ。
ほんの少し赤身より厚く切られている分、舌に重みを感じます。
続いてはごつごつとしたお湯呑み。
真鯵。
鯵というと「釣り鯵」がステータス的にいわれることがありますが、「はしもと」さんではあえて網で獲ったものを使われています。
脂は控えめで、ぷりっとした弾力が魅力的。
そしてさわやかな香り。
大とろ。
蛇腹の部分ですが、脂は控えめかも。
筋のところに旨みがあるので、大とろにしては甘みよりも旨みよりの味わいだったように思います。
車海老。
絶妙な火入れでバッツンと気持ちいい歯応え。
中に仕込んだ濃厚なミソの味と海老の甘みも迫力があります。
バフンウニ。
軽めの味わいのウニがモリモリ。
少しくびれのあるお湯呑み。
春子鯛。
こちらは追加の1貫。
パールのような輝きが美しいです。
かなり厚みがあってもっちり、旨みもしっかり。
最初のお湯呑みに戻って。
似ていますがちょっと違うお湯呑みでもう一杯。
写真を見て「なんでお茶をおかわりしたんだっけ…」と一瞬分からなくなりましたが、ご一緒したみなさんが凄まじい量の握りを追加していた間の待ち時間だと思います。
穴子。
しっかり火が入っているように見えて、口に入れるととろっとろ。
塩でお願いしたので、煮穴子の甘みがきりり。
玉子。
この日は常連のみなさんに便乗して玉子も握りに。
切れ目を入れて開いた玉子にシャリを入れ込んで、2つにカットしたらこんな可愛い形に。
甘くマイルドな味の玉子と合わせると、シャリの酸味が際立ちます。
とはいえ今までいただいてきたシャリの酸味とは違って、きゅんきゅんするような味わい。
これはいいですねえ。
しじみお椀。
しじみで、しみじみ。
お寿司屋さんはカウンターに並ぶお客さんで雰囲気が違ったりしますが、この日は最初から最後まで和やかでいい雰囲気でした。
僕もああいう雰囲気を作れる客になりたいものだなと思いながら、ごちそう様でした!