2月16日、豊洲市場の「土曜マルシェ」で行われたトークセッションを見に行ってまいりました。
スペシャルゲストとして参加した市川海老蔵さんの発言を中心に、大手メディアでもニュースにされていましたが、肝心の内容はあまり伝えられていなかったので、ここに書き残しておきます。

といってもそれだけですと"お堅い"内容になってしまうので、たくさんの写真と、現場で印象に残った小ネタを交えながら進めますね。
因縁の江東区長に小池都知事のジャブ~ただではお寿司を食わせない~
小池百合子都知事、山崎孝明江東区長、魚河岸会会長、豊洲市場協会会長、という登壇者の顔ぶれを聞いてまず気になったのは、小池知事と他のみなさんとの関係。
去年の今頃は丁々発止やられていましたからね。
にぎわい施設「千客万来」をめぐって最後まで争った2人
見ているこちらがソワソワするなか始まって、まずは大和寿司の握りずしが一人前ずつ桶で登壇者に提供されました。
用意できた方からお召し上がりください、というところで小池知事が、
「お寿司というのは、日本の食のキラーコンテンツでございまして…」
と語り始めるんですね。
そんな調子で朗々とおひとりで話し続けていたのですが、しばらくして、
「はい、みなさんが食べている間、ワタクシがつないでおきましたのでね」
とおっしゃいます。
なるほど、さすが元キャスターということで、周りへの気配りをされる方なんだなあと感心したのも束の間。
「そろそろちょっと区長も、食べているだけじゃなくて、感想のひとつもよろしくお願いしますよ」
と、あの因縁の江東区長に切り込んでみせたのですよね。
油断していた区長
お寿司を食べていた区長はモゴモゴしながら「美味しいですねえ」とおっしゃるのが精一杯。
仲に何も問題ないかのように見せつつ、サクッとマウントで上に立ってしまう小池知事のしたたかさを見たような気がいたしました。
ちなみに海老蔵さんは小肌から召し上がったことを司会者に指摘されると、
「味の薄いものから食べたいですからね」
と答えられていました。
お寿司がお好きだというお話は以前から聞いたことがありましたが、この日も言葉の端々に感じさせるものがありました。
「さすがよね」と感心していた小池知事も、その後しっかり小肌から召し上がるのを確認しました。
江東区と歌舞伎の深いつながり~別荘ください~
続いて、江東区と歌舞伎の深いつながりを、山崎区長が説明。
まず、初代團十郎が子宝に恵まれず、成田山に祈願したことで2代目を授かった、ということがあったそうです。
成田山に感謝と信仰を捧げた初代團十郎は、それ以後、成田山が江戸で出開帳(布教や宣伝のための活動)をやるたび、出演して人を集めた。
これがのちに「成田屋」という屋号にもつながった、ということなのだとか。
それから4代目は、江東区の木場に別荘を持っていて、"芝居校"のようなものを作った。
そこで大変多くの歌舞伎役者を育て、功績を遺したとされ「木場の親玉」といわれた、とこれは海老蔵さんが説明していらっしゃいました。
区長は、このつながりを受けて、300年以上の歴史をもつ歌舞伎界での海老蔵さんの襲名と、豊洲で市場がスタートをする時期が重なったのは、感慨深いものがある、と語られていました。
海老蔵さんは、
「わたしもぜひ、江東区に別荘をお願いいたします」
とお願いしたら、区長に「豊洲の億ションがいっぱいあります」と返されて、
「自分で買う感じですか?ハハハハ。交渉は決裂ですね!」
と笑っていらっしゃいました。
魚河岸と歌舞伎の深いつながり~感謝です~
続いて、魚河岸と歌舞伎の深いつながりを、魚河岸会会長が説明。
「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」という演目で、主人公の助六が身に着ける"江戸紫の鉢巻き"は7代目團十郎のときから200年にもわたって魚河岸から提供される慣習になっているそうです。
初めの頃は他に、下駄、引き幕も贈っていたそうですが、「だんだん経済的に厳しくなって」きたそうで、今では「鉢巻きの目録のみ」になったのだとか。
と、そこで海老蔵さんが、「ちょっといいですか?」と口を挟みます。
もともと魚河岸だけでなく、蔵前や吉原からも提灯や煙管をもらう習わしがあったものの、それらはなくなったのだと説明して、
「魚河岸さんだけ。目録のみですけれど、本当にありがとうございます」
と頭を下げていらっしゃいました。
司会者が「海老蔵さんも『嬉しい』とおっしゃっていますが」と話を続けようとすると、また海老蔵さんが割って入って、
「嬉しい?そういうことではなくて、ありがたい。
歌舞伎十八番の演目の中で『助六由縁江戸桜』というのは、市川家にとっても、歌舞伎にとっても大変大きな演目。
魚河岸様から華を添えていただくということは、歌舞伎俳優のみならず、我々は感謝。感謝しております」
と最後まで感謝の気持ちを強調されていました。
ずっと黙ってた市場協会会長が言いたかったこと
イベントの最後に一言ずつ求められたところで、豊洲市場協会会長が、マイクの電源を探してゴソゴソやっていて、
「電源はないのでそのまましゃべれます!」
とツッコまれていましたが、何を隠そう"最後の一言"まで1度もマイクを握られなかったのですよね。
そして開口一番、
「海老蔵さんが、『大和の大将が握った寿司じゃない』とおっしゃっていましたが、私は店主のシンちゃんが握ったものだと思いますよ。あとで聞いてみましょう」
と宣戦布告されていました(笑)。
というわけで、大変勉強にもなり、見ごたえもあり、そして何よりとても楽しい会でした。
終始バランス感覚よく、やや踏み込んだ発言をする海老蔵さんの頭の良さがとても印象に残りました。
土曜マルシェは、今の場所では3月いっぱいで、それ以降は6街区で規模を拡大して開催されるのだとか。
また今後も楽しみにしたいと思います!