最近揚げ物が多くなっている食生活を見直さなくては、と思いながら豊洲に向かって歩いていて、
「今日は魚だな。それも生の魚にしよう」
と心が固まったのですよね。
ただ、刺し盛りが魅力的なお店って実はあまりなくて、かといって土曜の寿司大さんに参戦するほどの心構えはできておらず。
と、そこで思い出されたのは、前週に話題になっていた大和寿司さんでした。
豊洲の「土曜マルシェ」のイベントで登壇された歌舞伎役者の市川海老蔵さんが、振る舞われた大和寿司の握りを食べながら、
「見りゃ分かるんですけど、これ大将が握ってないな」
と指摘したのに対して、大将を"シンちゃん"と呼ぶ間柄だという豊洲市場協会の伊藤会長が、
「私はシンちゃんが握ってると思う。あとで聞いてみましょう」
と異を唱える場面があったのですよね。
結局海老蔵さんたちが確認されたのかどうかは分かりませんが、少なくとも観覧客としては真相は闇の中に。
機会があれば、確認しておきたいと思っていたのです。
築地時代は寿司大さんと場内の人気を二分していた大和寿司さん。
豊洲では観光のメインとなる水産仲卸棟から離れた青果棟で、屋外店舗になっているため、お客さんはめっきり減ってしまっています。
この日は朝早いとはいえ土曜日にもかかわらず、並ばずに空席に座ることができました。
5時半オープンで6時頃に入ったので、1巡目では席が埋まらなかったのだと思います。
ビビりなので、大将から遠い席だったらお寿司だけ食べて帰ればいいと思っていたのですけど。
幸か不幸か、バッチリきっちり大将の目の前の席に座ってしまい、直接質問できることのできる環境が整ってしまいました。
日頃の行いがいいのか悪いのか分かりません。
気さくに話しかけてくださる大将。
3言に1回くらいは高級魚「のどぐろ」を勧めてくださいます。
まず鯛を。鯛…、たい…、タイ…、
「大将、今日ここで食べタイと思ったのはですね…」
煮イカはツマミで。イ…カ…、イ…
「イちカわ海老蔵さん、先週市川海老蔵さんがここのお寿司を食べているのを、会場で拝見しておりまして…」
「海老蔵さんが召し上がっていたお寿司も大将が握られたんですか?」
はい、聞きましたよ。
シンプルに、答えはイエスかノーになる質問をぶつけました。
ところが、間が悪かったようで大将は、
「んーー」
と何か言いかけたようにも見えたのですが、下を向いて手元に集中し始めたのですよね。
さっきまでニコニコお話してくださっていましたが、突然真顔になられたので、これはタイミングが悪かったなと。
大人しく鰤をいただきます。
「鰤、いいでしょ。最近は九州のもいいんだよ。あとのどぐろもあるからね」
"のどぐろ"という言葉が出たのを余裕ができた合図と見て、もう一度、
「あの、先週海老蔵さんが召し上がっていたお寿司も大将が握られたんですか?」
しかしまたここで、大将は次のネタの切り付けに集中します。
さすがの僕も、これは聞いちゃいけないヤツなのかもとは思ったのですけど、せっかくなので意を決してしばらくしてからもう一度挑戦してみましたが、なぜかこの質問のときだけ僕の声がカウンターの向こうに届かない様子なのですよね。
さすがにそれ以上は失礼と思い(←遅い)、
「のどぐろお願いします」
と〆に注文すると、大将は「はいよ!」と再び満面の笑みに。
あきらめて大将にご挨拶して、レジに向かおうとしたところで、
「今日もマルシェのイベントは色々やってるから、寄ってみて!」
と声をかけられたので、やっぱり聞こえてたんかーーい!とは思いましたが、時すでにお寿司。
真相は闇の中、さらに闇の奥深くに葬り去られてしまったわけですが、随分広い店内にたくさんのスタッフさん、握り手も恐らく6人いらっしゃった状況からいって、大将1人で5人前握ったということはないのではないかという気がいたしました。
これは完全に推測ですが。
さらにいえば、大将の表情と態度を目の当たりにした僕の感想としては、海老蔵さんの言葉をお借りすると、
「見りゃ分かるんですけど、これ大将が握ってないな」
と確信に近い思いで、大見得を切らせていただきたいと思います。
あと海老は絶対注文するべきでしたよね、というのは反省。