今月もランチ訪問のil tramさんですが、外は雨こそ降らないものの翳りの染み付いたような空模様。
ランチにしては珍しくロウソクに火が灯っていました。
ガスなしのお水をお願いして、コースがスタートします。
まずはオニオンヌーヴォーのズッパ。
直訳すれば新玉ねぎということになりますが、こちらは品種名のようです。
素材の特長は"みずみずしさ"や"生で食べられること"にあるはずですが、
「しっかり火を入れて水分を飛ばしてやりました」
とシェフから季節感への宣戦布告とも言うべき仕上がりに。
水分が多い分、多少油を控えてもじっくり炒めやすいのではないかとか邪推はできますが、実際どういったところに良さが出ているのかは判別できませんでしたねえ?
チーズはペコリーノロマーノとのこと。
焼かれて乳脂の甘みが飛んで脂も抜けるので、塩気含め味も香りもエッジの効いた感じに。
砕いて少しスープと合わせるだけで随分はっきりしたアクセントになりました。
エッジの効いたチーズをさらに温玉でマイルドに戻します。
クロックマダムみたいなイメージの、鉄板な味の組み合わせでしたね。
フォカッチャ。
今回はイタリア小麦が多めになっていたりするのかな?
甘さが控えめ。
今月のブッラータ、ソースはマーメラス。
さらにカシューナッツ。
マーメラスはエンドウ豆の1種で、日本では生産者が1人しかいないことで知られます。
甘みのある豆の香りに、カシューナッツはコクのある油脂感。
鮮魚のフィルム蒸し、魚は今月も定番の真鯛でした。
リボンを解いて慎重にフィルムを開くと、香りがむわっと…
聖護院蕪のすり流しに、大黒しめじ、ニョッキ。
何というか、かぶら蒸し風ですね。
真鯛から出た脂と、大黒しめじの香りで、和に寄っています。
ハーブは後半に入れて印象を変えますが、ちょっと多めに入れていまうのがミソですね。
チコリの1時間ロースト。
このところお皿にメッセージを"落書き"してくださるのが定番になっていましたが、
「今月は真面目に盛り付けました!」
とのこと。
ベルギーのチコリはやや小振り。
しっかり火が入った断面の焼き色は、赤みを帯びた茶色で鮮やか。
トリュフオイルの香りも然ることながら、キャラメルのような甘い香りとチコリの複雑な苦みやら渋みやらの味わいのインパクトが強め。
今月のゴルゴンゾーラは水分が抜けて締まったもの。
チコリのオイルで丁寧に伸ばすようにいただいたので、却っていつもより馴染んでいただけた気がします。
パスタ1品目はラビオリ、ソースはバターナッツとクミン。
出てきただけでクミンの香りが広がります。
ぺっとり濃厚。
ラビオリはバラカというチーズ入り。
酸のある味わいと、トリプルクリームということでペーストにコクを加える乳脂感。
パスタ2品目はキタッラ、ソースは牡蠣とチャイブ。
キタッラはイタリア語の"ギター"で、長く張った弦で切って作ったことからこの名前が付いたそう。
断面が四角くなるのが特徴ですね。
ペーストは昆布出汁っぽい香りとか、アサリのような滋味とか、色んな味を感じましたが、基本的に牡蠣しか入っていないとのこと。
牡蠣って、深い味がしますねえ。
メインはマンリッツァ豚。
本来は黄ニラが添えられたそうですが、この日は仕入れがなかったとのこと。
低温調理ということで、身、脂ともに落ち着いた質感。
身の色、脂の張りから火入れの妙が伝わってきます。
赤味噌のソースとパプリカ。
と、ここで、"黄ニラ"がなくて僕が「キニイラ」ない顔でもしていたからか、
「脂身も食べます?」
とシェフからお声がかかったので、アブラマシマシに。
こんな感じ。
トリミングされていた脂身がガッツリ出て来ました。
豚と赤味噌ということで組み合わせとしては味噌カツ。
いるとりゃーのまんがりっつぁでらうみゃー。
脂身も低温調理ですかね。
表面に出ているからか、身よりは強めに火が入っているような気がします。
というわけで今月も品目豊富に、季節の食材を中心に楽しませていただきました。
特に牡蠣のソースが美味しかったなあ。
また来月もよろしくお願いします!