ランチは久しぶりにコートドールさんへ。
雑誌「専門料理」の本×料理人という特集で、こちらの斉須シェフの著書『調理場という戦場』の名前がよく挙がっていて、読み返して伺いたくなっていたのですよね。
重い扉を隔てて、内側に広がるのはハレの空間。
お店はマンションの1階にあるのですけど、空気の温度、濃度、すべてが全く異なって感じられるのですよね。
「本日のランチのメニューをご説明させていただきます」。
声のいいいつものサービスの方が、丁寧にスラスラと説明してくださいます。
こちらの食いしん坊なリクエストにも、ニコッとして応じてくださるところが素敵。
"執事"とか"爺や"みたいな雰囲気の、全てを受け止めてくださりそうな笑顔なのですよねえ。
前記事、前々記事を参照していただきたいのですが、朝から水のことばかりを考えていたので、ここで改めて水をぼんやりながめます。
コートドールさんは富士山のミネラルウォーターを使っているのですけど、多分今のフレンチ界では結構珍しいと思うのですよね。
多分シェフがお店を始めた頃は、今のような"正攻法"がまだなくて、当時のベストチョイスが今も形を残しているということなのではないでしょうか。
アミューズは、定番の桜海老のトースト。
いつもグリュイエールチーズのはずですが、この日はゴーダっぽい食感、味わいでしたねえ。い
グリュイエールチーズの個体差でしょうか。
このタイミングでパンが出ます。
普通に市販のパンで、温めてもいないのに、料理に合うパンが選ばれているというこの感覚。
じんわりきます。
野菜のエチュベ コリアンダー風味。
初訪問時にいただいて以来2度目のスペシャリテ。
シンプルな野菜の蒸し煮なのですけど、フランスのもののような味わいが出ない日本の野菜で、いかにフランスの野菜に近付けるか。
冬瓜、セロリ、人参、きゅうり、ズッキーニ、玉ねぎ、ヤングコーン、カリフラワー、スナップエンドウ、トマト、ポワロー。
オリーブオイルと、強めのビネガーとレモンの酸味で、雄々しい味わいを引き出しているそう。
特に冬瓜、ポワローの香りに特徴があって印象に残ったのと、スナップエンドウは抜群にモノがよかったですねえ。
メインはお肉をチョイス。
ホロホロ鳥に衣を付けたロースト、ソースはマスタード。
さらに定番のジャガイモのガレットが添えられていました。
衣でガッチリ包まれているので、中に濃厚な脂が残っています。
表面はカリッと、中はネットリとさえ感じられる濃厚な脂。
バターで重みを付けてありながらも、マスタードの酸味が爽やかなソース。
重そうなメインながら、重さをまったく感じさせない爽快感です。
最初に「骨付き肉です」と説明されたので、ナイフとフォークで上手く食べられるか不安だったのですけど、フィンガーボウルが遅れて出てきてひと安心。
お上品に、手を使って、お上品にいただきましたよお上品に。
ジャガイモのガレット。
シンプルな味わいなので、ソースを絡めていただくのに重宝します。
いちごのスープ。
この日のデザートはこれではなかったのですけど、気になっていたメニューだったので追加。
シャバシャバで甘い苺のソースで、フレッシュないちごを和えたシンプルなデザートです。
ソースには少しリキュールが効いていたような気もします。
苺の品種は「"何とかおとめ"…えーと…、ゆめおとめですね!」と教えていただきましたが、調べたところ「あまおとめ」が正解かもしれません。
ソースの甘さは強めですが、それでもフレッシュないちごの酸味が気にならないのは、香りがしっかりしているからかもしれません。
甘くコーティングされた中に果肉が包まれている感じは、食べたことはないのですけど、縁日のりんご飴なんかに近いイメージのような気がしました。
個人的に、美味しいフルーツはそのままで食べるのが1番だと思っていますが、これはちょっともう苺を食べられなくなってしまうレベルに美味しかったですし、そう言いながら帰り道に苺を1パック買ってしまうくらい、苺の香りが印象に残る1皿でした。
追加してよかった。
そしてもう1品、キャラメルと焼き芋のスフレ。
スフレは普段「2名から」と制約のあるメニューなのですけど、今回は1人でもいただくことができました。
なので「いちごのスープに差し替え」ではなく追加をお願いした次第。
スフレは時間勝負。
焼き上がった瞬間からあとは縮む一方ですから、写真撮影もそこそこに食べ始めますよ!
いただきます!
ココットに近い箇所ほどキャラメルの風味が濃厚になっていました。
そして濃厚に、濃厚に、となったところでダイスカットのお芋が出てきます。
コートドールさんのスフレは初めてでしたが、フレーバーがはっきりしていて鮮烈なインパクトを残して消えました。
またいただきたいものです。
食後のドリンクはハーブティーをいただきます。
途中注ぎ足していただけるので、のんびり贅沢に過ごさせていただきました。
お茶菓子はフィナンシェ、マカロン、生チョコレート。
確かこのお菓子は若いスタッフに任せている仕事なのだそう。
フィナンシェなんかいつもビシッと決まっているのですよねえ。
最後に御楊枝で生チョコを突っついていただいて、ごちそう様でした。
口にするすべてが、目、耳、鼻に感じるすべてが幸せでした。
今年は伺う頻度を増やせればと思っています。
ごちそう様でした!