この日は夕方の回で「鮨はしもと」さんへ。
久しぶりに1席で予約が取れたので、のんびり気ままにお寿司をいただきます。
友人とおしゃべりしながら食べるありがたみを思い知ったこの1年ではありましたが、贅沢な話、ひとりで黙々と美味しいものに向き合う時間というのも好きだったりはするのですよね。
まずは煎り銀杏。
油のコクと強めの塩気。
最初は平目と赤貝から。
岸和田の赤貝。
甘みよりも磯の香りが主張強め。
大間の平目。
かれいに比べると、空気をたっぷり含んだようなふわふわ感は抑えめで、歯応えとしてしっかり感じる食感。
真鯛とかのイメージに近いように思います。
旨みもしっかり。
鰹。
赤が鮮やか。
鉄分を感じる赤身らしい旨みに、見た目よりガッツリ脂の乗った鰹でした。
藁で燻した香り、鼻から抜ける辛子の風味。
秋刀魚一夜干し。
焼き台で秋刀魚を焼いていたので、今日の焼き物は秋刀魚なのかと思いきや少し手を加えられて登場。
一夜干しにした秋刀魚を焼いてひとり分ずつにカット、肝ソースを乗せた上に大葉、浅葱、胡麻。
今年はまだ秋刀魚をいただいていなかったので他との比較では何とも言えませんが、物足りなさを感じないどっしりとした脂。
ひと口サイズではありますが、肝のソースと合わせて秋刀魚の味がギュッと詰まった1品でした。
今年は美味しい秋刀魚にありつけない覚悟ができていたので、嬉しい誤算でした。
茶碗蒸しは穴子。
穴子料理らしく、甘いツメとワサビを添えて。
甘みが加わるとほぼプリン。
ふわとろプリンの中に、集中していないと気付かないほどにふわふわに仕上がった穴子の身が紛れています。
ここから温かいお茶にチェンジ。
定番の鰯巻き。
ガリ、大葉、たくあん、胡麻、浅葱を赤酢で〆た鰯で巻いてあります。
鰯の脂が大分弱まったので、かなり爽やかな印象にまとまっていました。
おつまみ3種盛り。
今回はあわびがここに乗ってきました。
牡蠣味噌漬け。
チーズか、ムースかといったような質感。
今回はまたいつにも増してクリーミー。
あわびと肝ソース。
歯触りはゼラチン質を思わせる軽い軽い歯応え、そこから一転して中心部辺りはコリッと強めの食感が出ます。
軽快。
筋子味噌漬け。
いつもよりは、やややわめ。
味も食感も一粒一粒に詰まっているので、ひとつずつ食べても十分魅力が分かるのですけど、ある程度の数を口に入れていっぺんに口の中で弾けさせるのがやっぱり至高。
焼き物はのどぐろ。
脂をバチバチ言わせながらの登場です。
尻尾側ですが、強い脂乗り。
こちらの焼き物は、お酒と合わせる前提ということもあってか個人的には若干塩気が強めに感じることがあるのですけど、殊このお魚に関しては「これくらいでないと」と思えるほどに強い脂。
すだちは大根おろしに搾って、さわやかおろし(適当命名)にして魚と合わせていただきます。
ガリ、指拭き。
というわけでここからは握り。
天草の小肌。
肉厚ですけど脂はほどほど。
酢締めの香りと魚の風味の一体感が印象的に残る1貫です。
ごつっとして重めのお湯呑み。
すみいか。
大きくなってきても、はかなさとフレッシュさのあるネタですねえ。
新いかとの比較でいうと、大学1年生くらいのイメージ。
長万部のほっき。
強い甘み。
赤身。
この日のまぐろは塩釜。
ネタの向こう端をくるんと巻き込んであります。
漬けにはせず、まだ夏のまぐろっぽさも感じる酸味がほんのり。
中とろ。
脂はしっかりですが、赤身に近いさっぱりした後味。
春子鯛。
前回追加でいただいたとても感動したネタですが、今回はコースの中に。
かなり厚みがあって強い旨み。
春子鯛とシャリの赤酢の味が合わさると少し梅に似た酸とか香りとかが感じられます。
甕のようなお湯呑み。
口付近のくぼみを指に乗せてぐびぐび。
佐島の鯵。
「鮨はしもと」さんでは珍しい産地な気がしますが、やっぱり網獲れのようで、脂乗りより歯応えと爽やかな旨みが印象的でした。
ガリをぱくぱく食べていたので追加をいただきました。
❝端っこ❞があるのが嬉しい。
大とろ。
蛇腹っぽい部位ですけど筋の入り方がほどほどで、ほどよい脂、ほどよい旨み。
バランスのいい大とろという感じでした。
鰆。
藁で燻した香り、ミルキーな脂と煮切りの塩気が合わさるとウォッシュチーズのような濃厚な食味に。
山口の車海老。
いつも火入れの加減を楽しみに伺っている海老ですが、今回はやや浅め。
歯応えはやさしめですが、生独特の食感を感じました。
中身はホットですが、クールで硬派なお湯呑み。
北海道・浜中のうに。
少しとけ気味で緩い質感ですが、却ってクリーミーさが増して甘みも強く感じられたように思います。
うにが美味しいと海苔がいい香り。
対馬の穴子。
皮目を上にして握るのは頭に近い方。
皮下のゼラチン質が際立って感じられて好み。
脂乗りも強い方なのだと思います。
薄口でやや寸胴気味、色味も渋い湯呑み。
最後に好みのタイプのがきました。
玉子。
今回はしっかり火が入った仕上がり。
特に奥の方は4面が表面になった❝角っこ❞だったので、ぽくっとした食感を強めに感じられてよかったです。
しじみのお椀で〆。
1品1品、集中して味わうことができて大満足のディナーとなりました。
人としゃべりながら過ごす時間全体の満足感と、良さはそれぞれですけど、どちらも大事にしていきたいなと思いながら、ごちそう様でした!