このところ、今まであまり食べてこなかった割烹系の日本料理をたしなんでいきたいなあという気持ちがあって、ランチでおすすめされていた青山の「日本料理 太月」さんへ。
ミシュランガイドでは1つ星に輝くお店です。
駅からそんなには離れていないのですけど、大通りの喧騒からはほど遠い路地裏にお店はありました。
さらに地下に降りたところにひっそりと。
恐る恐る戸を引いてお店に入ります。
カウンターと、奥に個室もあったようでした。
僕はカウンターに着席。
目の前で繰り広げられる仕込みに見入ります。
ひと口お出汁の味見から。
冷蔵庫で1時間かけて水出しした昆布出汁なのだそう。
旨みを突き抜けてすごく甘く感じるお出汁でした。
そら豆の胡麻豆腐、えごま味噌、花びらゆり根。
カウンターの向こうに用意されている時点で青っぽいのは気付いていたので、そら豆か~という感じではあったのですけど、むしろ胡麻豆腐であるというところに驚きました。
少しぽくぽくとそら豆の弾ける食感があったかと思うと青っぽい香りが広がって、そこから舌にざらりと絡まる胡麻豆腐の質感、そして胡麻の濃厚な風味が残ります。
包丁を入れてピンクに色付けたゆり根の花びらがかわいいです。
1品目をいただいている間、ご主人が鰹節を削っていらっしゃったのですけど、食べ終えたタイミングを見計らって削りたてを手のひらに直接乗せて食べさせてくださいます。
手のひらに残った分は器に払ってしまってください、とのことだったので写真はその図。
奥から時計回りに、なずなと土筆の胡麻和え、イイダコの桜煮、うすいえんどうの薄蜜、姫さざえ、根芋の湯葉煮。
真ん中に春子鯛のちまき。
さざえは奥の肝まで綺麗につなげて取り出せるかが腕の見せ所であり、緊張の一瞬。
今回は上手にいきました。
根芋の湯葉和え。
根芋というのは千葉県の地野菜とのことで、ねぎのように薄い層が重なったような形状の野菜でした。
まったりとした湯葉餡と和えていただきます。
なずなと土筆の胡麻和えは、脂質のコクを感じる濃厚な胡麻感。
うすいえんどうの薄蜜は、甘い味付けが食べ慣れない感じでしたが、ひんやり冷たくてのどごし心地よい蜜でした。
イイダコは半生に仕上げてあって、卵がとろとろ。
添えてある柚子味噌でさっぱりさせていただきます。
途中、最初の昆布出汁と先ほどの鰹節で引いた一番出汁を味見でいただけました。
目が覚めます。
春子鯛のちまきは、形状としてはシャリを包み込んだタイプの握りのような感じ。
酢締めの酸でさっぱりとした1品でした。
ほたてしんじょ、上に乗っているのは糸蕗。
先ほど出来たばかりの一番出汁がポイントです。
お出汁やほたての風味がいいのはもちろんのこと、蕗の風味もお出汁に少しずつ浸み出してくるのですよねえ。
写真では見えていませんが、浮かべてある柚子の花というのが、初めていただきましたがとてもいい味わいでした。
「苦いので苦手な方は残してください」とのことだったのですけど、イメージとしては柚子皮をさらに苦み方面に寄せたような風味。
続いてお造り。
左は割り醤油、右は酒盗の煮切り。
酒盗の煮切りは煎り酒に酒盗を溶いたようなものだったように思います。
真鯛はふんわりやわらかな質感に、落ち着いた旨み。
鮮度抜群!とか、熟成!みたいな極端なところを追求せず、絶妙なポイントを押さえたバランスのいいお刺身でした。
さよりは独特の骨ばった感じの風味に酒盗の煮切りがよく合いました。
焼き物は桜ますの木の芽味噌田楽。
網に乗せて炭火で焼いたうえで、仕上げに緑の木の芽味噌を乗せて上からさらに炭で焼き色を付けて完成。
出始めの桜ますなので、脂はこれからとのこと。
桜ますは香りのいいお魚なので、ほくほくしたこれくらいの脂乗りのものも好きなのですよねえ。
添えてあるのは煎った蕗の葉。
春が詰まった1皿でした。
蛤と浜防風。
菜っ葉はもう1種類使われていたはずですが、失念。
千葉県産の地蛤は立派な大きさで、噛むとボリュームを感じる食感。
浜防風って今まで名前以上に印象には残りにくい野菜だったのですけど、今回は茎のぽくっとした歯応えが効果的に感じられました。
このお皿にポップな印象を与えます。
お食事はほたるいかのちらし寿司。
カウンターの向こうで仕込んでいらっしゃいましたが、混ぜご飯にかなりたっぷりの具を投入しているのが見えました。
たっぷりの錦糸卵でまったくご飯が見えませんが、混ぜ込んである具はレンコン、椎茸、それから高野豆腐だったと思います。
たっぷりの錦糸卵でやさしい味。
ご飯のお供。
お椀は赤出汁。
実は焼き麩だったと思います。
甘味は豪華3種盛り。
右手前から桜アイス最中、山芋の苺大福、抹茶プリン。
アイスが融けやすいということで、この順番でいただいていくことにします。
直前に最中でサンドされているようで、最中がパリッパリ。
桜の模様だけかと思ったら、ちゃんと桜の塩漬けの風味が感じられるアイスでした。
大福餅の生地で白い餡と苺を包んだ苺大福。
白い餡はミルク餡みたいな味わいだったのですけど、「山芋の苺大福」ということだったのでこの餡の部分に山芋が使われているのでしょうか。
苺の酸味がフレッシュ。
抹茶プリンは上の黒蜜こそ甘いものの、下の抹茶プリンそのものは渋くて苦みの強い大人味。
クリームはもちろん、お茶自体のコクが感じられるような1品でした。
というわけで、割烹のお料理が食べたいと思っていた気持ちのストライクゾーンど真ん中にハマるお出汁の魅力と季節のものを堪能できるランチでした。
また季節ごとにお邪魔したいな、と思いながら大満足でごちそう様でした!