コロナ禍で閉店した飲食店の中でも大きな話題となったひとつ、芝公園「クレッセント」の元シェフが駒込の地で再スタートされたと伺って馳せ参じました。
お店は「Le Lutin(ルリュタン) 磯谷」さん。
もともとあった「Le Lutin(ルリュタン) 」さんという老舗フランス料理店が、シェフを迎えてリニューアルしたということのようです。

おしぼり。

プレート。
随所に「クレッセント」の色気がムンムンと香ります。

今回は初めてということでとりあえずスペシャリテに興味があったのですけど、1番軽いコースでもいただけるということでそちらを注文しました。

冷製コンソメとヴィシィソワーズ。
旨みの強い短角牛のコンソメジュレの上にじゃがいものスープ。

バターと生クリームでスープというよりクリームに近いくらい濃厚に仕立てられたヴィシィソワーズ。
少しスプーンを進めると出てくる比較的しっかり固まったコンソメゼリーは、「旨みの強い」と説明を受けた後でも十分驚くほど旨みの強いものでした。

金箔を載せてあるところが品格。

トマトのコンプレッション。
トッピングの花以外ほぼ全部トマトで構成されるスペシャリテのひと皿。
こちらが気になっていたのですよね。

トマトのキューブの周りに、カラフルなトマトのスライス。

どの角度から見ても鮮やかに、見目麗しく仕上がっています。
シェフお一人で仕込んで盛り付けられていると思うと、気が遠くなりそうです。

トマトのキューブは、ゼリーか何かで作っているのかと思ったのですけど、これはトマトの果肉を側面の4面組み立てているだけのよう。

下からトマトのムース、マリネ、ゼリー。
トマトの甘み、酸味、旨みがそれぞれバランスよく表情を変えて姿を現します。
爽やかでデセールのように食べやすいひと皿です。
スペシャリテって一度食べたらとりあえず満足できるものもありますけど、これは毎回押さえたくなるお料理でした。

自家製のパンとバター。

メインは北海道・白糠の酒井さんが育てた子羊のロースト、トリップ添え。
「クレッセント」時代から使われていた子羊を継続して使われているということのようです。

バツッと歯ごたえがありつつも、しっとりなめらかで、きめ細かい舌触りは鶏の肝かエゾジカにも近いかも。
味は濃いというより、強い。
そしてブールノワゼット(焦がしバター)のソースだと思ったソースは、ギラギラにレモンの酸味が利いていて、お肉の旨みとパンチを激突させてひとつの味に昇華させてありました。

添えられたトリップの煮込みは、子羊のものを使ってあるそう。

野菜もほっくりした食感や甘みが際立つ仕上がり。
それぞれの要素が力強く主張する、王道かつ鮮烈なインパクトのあるひと皿でした。
ここで「子羊の一口カレーとかデセールも追加できますが……」と聞かれてしまったので、

子羊の一口カレー。
小さなソースパンに、ライスとカレーがこんもり。

ミニサイズとはいえ、爽やかめなスパイスの香りが広がります。

お肉の旨み、トマトの酸味を中心に、フランス料理のスープやソースの応用のような、重鎮の本気カレーでした。

トロピック・キューブ。
そしてデセールも追加。

「ルービックキューブみたいな」というご説明がありましたが、一面9マス並ぶ形は本当にそんな感じ。
ドラゴンフルーツ、パイン、マンゴー、キウイ、バナナ、そしてココナッツのムースが積み上げられています。

トップにはシャンティとパッションフルーツの酸味の利いたソース、パインのチップ。

泡はラベンダーの香り付けがされていて、下にはブルーベリーとグロゼイユが散らされていました。

発想の時点でまず素晴らしいですけど、仕込みの負担、盛り付けの手間などを考えると、なぜこれが1人のシェフで成り立っているのか訳が分からないような人智を超えたようなデセールでした。
夏らしい爽やかさに、ラベンダーの香りの意外性がまたよくマッチしています。

小菓子とお茶。

ドリンクはハーブティー。
おかわりもいただけました。

お茶菓子もとても豪華。
1番手前はシェフのスペシャリテのひとつだという「タルト・ヴォードワーズ」。
スイスのヴォー地方に伝わる伝統菓子をシェフなりにアレンジしたそうで、シナモンと生クリームで仕込んだシンプルなクリームを焼き込んであります。
しっかり甘みがあって、どこか懐かしい味わい。

マカロンは抹茶とフランボワーズ、真ん中にはアマンドショコラ。
伝説的なシェフがこぢんまりしたお店で落ち着いた第2章を始められたのかと思っていましたが、身を削って1皿1皿に全エネルギーを注ぎ込んだような魂溢れるコース料理が出てきて、終始圧倒されました。
またすぐにでも伺いたいなと思いながら、大満足でごちそう様でした!