築地を離れ、ふらふら寄り道しながら清澄白河へ。
12月のイルトラムさんです。
月代わりのメニューをいただきに毎月訪問しているわけですが、2016年は4月が抜けてしまったので今年ようやく12ヶ月全ていただくことができました。
まずはフォカッチャ。
「上に散らしたのは海苔…ではありません」と提供されたのは、定番のズッパ。
1度"海苔"の印象を植え付けられたら、真ん中のうずらの卵も合わせて"月見とろろ"ナンチャラにしか見えなくなりますね。
本当はマッシュルームのズッパに黒トリュフです。
黒トリュフはぽくぽく食感。
うずらの卵は、前回はパクッと食べてから気がついたのですが、丁寧に半熟仕上げになっています。
何といってもメインのマッシュルームが全体を支配する香りを放っていて、満足感がありますねえ。
鶏の温玉よりも、うずらくらいの方が主張がほどよくてバランスも良く感じられました。
定番のブッラータですが、いつものカリフォルニア産ではなく今月は発祥の地プーリアのもの。
酸味が少なく、かといって甘みが強調される感じもなく、旨み系のコク深い味わいだったと思います。
ソースは金美人参、くるみとディルをあしらってありました。
土っぽさや青っぽさが印象的。
定番のハーブが用意されまして。
鮮魚のフィルム蒸し。
毎月の恒例ですが、いつもと違うのはソースが「すり流し」になったこと。
といっても内容が変更になったわけではなく、このところ毎月「すり流しと言ってもいいと思います」という説明が続いていたのが晴れて正式名称になったということのようです。
魚は平目、"すり流し"は銀杏でした。
昆布出汁の香りがツンときます。
スペシャリテのチコリの1時間ロースト。
シェフの料理はいつもとても実験的なのですよね。
冒険的や挑戦的、という意味合いではなくて、対照実験をされているような感じ。
基本となる条件を設定した上で、一部を変更して結果への影響を計る。
このチコリなんか特にそう。
調理はあえて変化させずマニュアル通りにすることで、その個体や、季節の温度感、湿度感などが仕上がりに反映されるという。
聖護院蕪、柚子、ラビオリ。
まずは柚子、続いて蕪、と冬に温もりを感じる香りが続きます。
しっかり火を入れて青っぽさの飛んだ蕪は甘みが前面に。
葉っぱのパウダーがちょっと苦みを加えます。
重みのあるかぶら蒸しのようなイメージ。
パスタ2皿目はトマトベース。
シシリアンルージュのソースにパスタは手打ちピチ。
目の前でボッタルガをかけてくださるサービスは「かけ忘れただけです」とのこと。
もっちもちのピチはシェフが冗談でおっしゃる通りほとんど、うどん。
イルトラムさんにしては珍しくニンニクを使ったソース・アリオーネは味わいが骨太になっているので、パスタに負けない力強さでバランスが取れていました。
メインは鴨のロースト。
バルサミコと蜂蜜のソースに薔薇の実。
塩漬けにした生胡椒というのが珍しかったですね。
「結構しっかり辛いので気を付けてお使いください」
とのことでしたが、爽やかな香りが強い、というイメージで食べにくい辛さは感じませんでした。
鴨特有のギュッと締まりながらもきめ細かくほぐれる食感。
旨みと香りがグググググと広がる、力強い味わいでした。
生胡椒と組み合わせると、バッチバチに火花が散る感じでこれまたよかったですね。
イルトラムさんでは鴨も何度かいただいたことがあるかと思いますが、イメージよりもかなーり力強い仕上がりでしたね。
結構角の立った印象でしたが、生胡椒との相性のよさに唸らされました。
珍しくドルチェも追加。
定番のジャージーミルクのジェラートでした。
今年もまあ本当に色々とお話させていただいて。
料理はその人を映す鏡のようなもの、とは言い得て妙だなと思うのですが。
イルトラムのシェフの最初の印象は「寡黙なイケメンシェフ」といったところでしたが、慣れてくるととても飄々としておしゃべりな方だということが分かってくるのですよね。
かと思うと、意外なところでイメージ以上に熱いところを垣間見せられたり、そういえばこの日はワインショップの開業日だったようでしたがその話も最初は驚かされましたねえ。
(食べ始めて1時間くらいしたら「今13時なので、今オープンしました」と言われました)
華やかで軽やかなお料理に見えて実は努力と根性に裏打ちされていたりする、さらに意外なところで変化を付けてくる。
シェフの料理はシェフの印象と重なるなあとしみじみ感じる年の暮れです。
何やら見据える先に僕らの想像しえない何かがあるのカモ、見据える先にあるカモ。
また来年もどんな素晴らしい料理を用意して僕らを迎えてくれるのかと考えると楽しみな限りです。
今年1年ありがとうございました。
また来年もよろしくお願いします。