美しいフランス料理が食べたいなという動機で未訪問のお店を色々検索して選んだランチへ。
Élan。
シェフは15歳で渡仏して修業された後、帰国して「シェ松尾」に長く勤められていたそうです。
SNSで流れてきた白いお皿に色の映えるお料理が、とても魅力的だったのですよね。
つゆひかり。
注文したドリンクが品切れだったということで、こちらの静岡県産の烏龍茶にしてみました。
苦み、甘みがしっかり出つつ、すっきりした後味。
お料理に合わせて異なるパンを提供されるということで、最初にラインナップを見せてくださいます。
右上のものはこれから焼くのだそう。
「ファーストパンは~」と紹介されて出てきたのは、カヌレ型で焼いたブリオッシュ。
しっとり、少しもっちりした食感で、甘いバターの香り。
発酵クリームを加えて軽く仕立てたホイップバターを合わせます。
ブリオッシュの濃厚さと軽さ、バターの濃厚さと軽さが絶妙に噛み合います。
勝浦のかつお、赤色の野菜、ビーツ、アマランサス、赤しそ。
前菜1品目は、赤で統一した1皿です。
チコリにビーツとしそのソース、オーガニックの燻製シートをかけた鰹のタルタル。
アマランサスの絡んだ大根が美しいです。
大根の味がかなり強くて、鰹のタルタルが旨みと酸味をベースにしたソースのようなポジションになっていました。
さっぱりとして1品目に相応しい軽やかな口当たりが印象的でした。
北海道のホタテ、白色の野菜、新生姜、柚子、ホワイトセロリ。
こちらは打って変わって白で統一した1皿です。
北海道はサロマ湖の特大ホタテを、表面にサッと焼き色が付く程度に焼き上げてあります。
千葉の小蕪、生姜ソース、柚子とオリーブオイルの雪に見立てたパウダー。
白いビオラの花で華やぎます。
ふくよかな食感のホタテが、ほんのりと旨みと甘みを漂わせます。
要素を重ねて味わうと、どこか日本風な香りになってかぶら蒸しを思わせる1皿でした。
きな粉のフランスパン。
焼きたてで登場したので香りが広がりますが、味はとても素朴寄りです。
お料理に合わせるのに持って来いなパンでした。
北海道の羅臼のぶり、緑色の野菜、水晶文旦、マイクロクレソン。
続いてのお魚料理は緑。
厚切りのぶりのローストに緑の野菜を散りばめて、ソースはグリーンペッパーのマスタードのソースとバジルのオイルのソースで緑の2種使い。
ぶりの上には水晶文旦を薬味に仕立てたものが乗せてあります。
ここを使ってこそ、とも言うべきぶりの脂の乗った部位に限って使われていて、さっぱりしたガルニをその脂でまとめ上げるような1皿でした。
コクと香りの要素を加える2種のソースが絶品。
3つ目のパンは、紫芋の食パン。
ほんのり甘みと独特の香り。
青森のバルバリーの鴨、紫色の野菜、シャドークイーン、紫カイワレ。
メインは紫で統一。
黒いお皿との組み合わせも印象を引き締めます。
鴨は身質は固めですが、「噛めば噛むほど味が出る」という説明のあった通り。
脂よりも身の味が印象に残る鴨です。
鹿児島の山芋、長野の大根とにんじん、小笠原のラディッシュ、軽井沢のカリフラワー。
深みのある色の赤ワインと胡椒のソース。
どのお皿も無理に色を付けることなく素材そのものの色で統一感を出しつつ、味の重ね方やバランス、組み合わせも計算されている印象があって味の中にも色が表現されているような表現がお見事でした。
食べながら気が付きましたけど、食パンに紫芋を入れてあったのも紫に統一するためだったのですねえ。
ル・レクチェ、王林、和栗、レモン、シャンパーニュのはちみつ。
デセールは黄色。
レモンの風味濃厚なソースにアイス、洋梨とりんごはコンポートで栗は甘露煮。
香りよい蜂蜜で仕上げてあります。
想像したより酸味は少なくて、蜂蜜のまろやかな甘みに合わせてチューニングした感じのバランスでした。
ル・レクチェと王林は皮を剥いてコンポートにしてあるので分かりにくいですけど、どちらも黄色いフルーツなのですよね。
ここでも色へのこだわりが垣間見えましたし、さらに言うとどちらも酸味が少なくて甘みに寄せた味わいなのでこのお皿に向く食材でもあるのだと感じました。
食後のドリンクとお茶菓子。
ルイボスティー&キャラメル。
お茶も素敵な感じで選択肢がありましたが、想像のつかなかったこちらに。
キャラメルの風味が色濃く感じられて、むしろルイボスティーっぽさが薄かったように思いました。
ビターチョコレート、カヌレ・ド・ボルドー。
ビターチョコのフレークに一口サイズのカヌレ。
店名は「生命の躍動」を意味する"élan vital"から取っているということで、力強い生命力を感じる色合いのお料理が続きましたが、生命の還るところというイメージなのかデセールは大地を思わせる茶色。
食と見た目について考えていた時期でもあったので、美しい料理を食べたいモチベーションがあったのですけど、素晴らしいお料理を前にするとただただ「いいな」と思っていただいてしまったのでした。
次は人と来て歓声を上げながら楽しみたいなと思いつつ、大満足でごちそう様でした!