銀座から虎ノ門は移転した「ラルジャン」さんへ。
「タテルヨシノ」で修業した後渡仏し、さらには北欧で研鑽を積み、帰国後は麻布十番「スブリム」でシェフを務めた方のお店です。
銀座の大通りを一望できるロケーションから、今度は霞ヶ関のすぐ裏手に移って、店内は基本的にオープンキッチンを囲むカウンター席になっていました。
ノンアルコールカクテルも充実していて、こちらはピーチのドリンク。
南国の風合い。
茄子とムール貝。
カヌレ型の生地で作った器に、紫蘇の香りを纏った焼き茄子のタルタル、ムール貝を詰め、茄子のエスプーマで蓋をしたもの。
焼き茄子の甘み、香りがとても濃厚で、見た目から想像しなかった味のバランスなのでちょっと驚き。生地の感じはパニプリを思わせるものがありました。
シマアジと梨と柚子。
修業元である「タテルヨシノ」のフルーツと魚を合わせるお皿を、シェフなりにアレンジしたという1皿。
シマアジ、梨に梨のジュレを合わせて、柚子の泡とディルのオイルで仕上げてあります。
梨みたいに甘みの強い要素をなまざかなと合わせるイメージはあまりありませんでしたが、柚子の泡が意外に主張が強く、上手くお皿上の要素をまとめ上げる役割を果たしていました。
ディルも味の方向をデザートではなくお料理に決定づけるような楔になっていて、存在感があります。
掛川茶とフォアグラ。
低温でじっくり火を入れたフォアグラは、シェフの実家で育てた掛川茶のペーストを周りに纏わせたもの。
フォアグラの濃厚でクリーミーな味わいに、周りの掛川茶は渋みで後味の調子を軽い方向に整えるようなイメージ。
チョコレートに煎茶を合わせるようなことに近いかもしれません。
添えられているのはラタフィアワインというデザートワインのジュレ、ローストピスタチオ、緑のソースはこちらも掛川茶なのか結構ビターなアクセントになっていました。
掛川茶で余韻を柔らかくして、周りの要素で今度は賑やかに。
さらにトーストしたブリオッシュが提供されて、小気味いい食感やバターの甘い香りが加わります。
かなり要素が多様でとっ散らかった感じになりそうですが、フォアグラとお茶という個性の強い2つの味を中心にまとまりのある1皿になっていました。
パンは、デンマークの方がパンを焼く広尾の「ブロッド」というお店のサワードウのようなライ麦パン。
閉店した日暮里の「ヴァーネル」さんにいたスタッフの方もいらっしゃるとか。
パンに添えられたバターは、毎朝お店で作られるというフレッシュバターとホイップ焦がしバター。
このホイップ焦がしバターが、今まで食べたバターで1番軽くそれでいて味が濃厚で、何回食べても止まらなくなる美味しさなのですよね。
春菊と蛤と白甘鯛。
シェフの好みなのか、コース全体を通して緑が多く使われている印象があります。
見た目のインパクトから春菊が濃いのは分かりますが、蛤のお出汁もかなり強めなスープ仕立て。
白甘鯛は品のいい繊細な旨みが負けそうかと思いましたが、バターのように甘いコクのある脂がスープに柔らかさを生んでいました。
メインも目の前でコンソメが注がれて完成。
高原コーチン。
名古屋コーチンのブランドである柔らかな弾力と旨みの上品な地鶏を焼き上げたうえで、これまたスープ仕立てでの提供。
歯応えのあるスライスのトリュフ、味の濃いマッシュルーム、そして面白かったのは銀杏で、独特の風味と食感の個性が際立ちつつ、コンソメによく馴染んでいました。
薔薇と灰色。
初めてシェフのお料理を食べたのが、このデセールを出し始めた日で、シェフに不安そうな表情で「いかがでしたか……?」と聞かれたのをよく覚えている1品。
まだ出しているということは、自信のデセールなのかも。
熊本県産の薔薇のアイスに竹炭パウダーでコーティングし、周りには竹炭のメレンゲ。
白いのはバニラパウダーを散らして、熊本の溶岩の周りの火山灰をイメージしているよう。
さらに仕上げは……
液体窒素で凍らせた薔薇の花びらを散らして完成。
最初の見慣れない真っ黒なデセールだったところから一転、黒を活かした鮮やかな色合いになりました。
味わいもとても華やか。
薔薇の風味にバニラの甘い香りが華を添える、高貴な味わいのデセールでした。
ミニャルディーズ。
和紅茶のキャラメルティームース、静岡の横須賀しろのクッキー、掛川茶の生チョコ、マシュマロ、柿のタルト。
移転前同様、食材にこだわり、手の込んだお茶菓子をズラッと並べたミニャルディーズが、どれも味が立っていて魅力的でした。
銀座のお店が思い出のお店だったので、いてんは正直寂しい思いはあったのですけど、変わらぬ絶品のお料理をいただくことができてまたここで新しい思い出を作りたいなと思ったのでした。
唯一発酵マッシュルームのスープがなくなっていたのは残念ですが、また出会えることを楽しみにしつつ、ごちそう様でした!