8月22日(火)、久しぶりに若林のパリの空の下さんへ。
お休み明けでしたが、シェフのアナウンスにあった通り「ゆったり」したお客さんの出足。
前線の常連さんタイムで売り切れてしまった商品もちらほらありましたが、それでも色々購入できて大満足でした。
まずはサンドから。
かんぱちのバスク風(850円)。
かんぱちはどこの部位を使っているのか、コラーゲンたっぷりのブリッブリの食感が印象的でした。
ソースに魚介系の強い旨みがあったのですが、かんぱち由来なのかな?
和食でいう出汁と違ってオイルやスパイスが入っても、こちらから探す必要のない存在感。
過去に「スープドポワソン」として臭みと旨みが干渉しあっているような、賛否の分かれるパンチの強い魚出汁のスープを出すお店に出会ったことのあるのを思い出しました。
「本場はこういうものなんです」と出されて「そういうものなのかな」と思っていたのですよね。
でもこちらはやはり別格。
丁寧さなのか、腕の違いなのか、力強くも澄んだ味わい。
"言い訳"がまったく必要ない紛れもない「美味しさ」でした。
ラルドン(850円)。
イタリアの豚だそう。
アリュメット(=細切り)にしてあるのはバラ肉でしょうか、ニンニクや胡椒の香り。
ラルドンが敷き詰められていて見えませんが、下にはたっぷりジャガイモのピューレ。
脂身の比率が高く、ジャッキジャッキと感じたことのない独特の強い歯応え。
味の濃い豚と、香りのいいジャガイモが見事に絡み合います。
ラルドンは「ベーコンのようなもの」のくらいのイメージしかありませんでしたが、調べてみるとバラ肉だったり背脂だったり、塩漬けにしてあったりなかったり、燻製してあったりなかったり…
時代や地域によって指すものが異なるようですね。
プーレ・キューリー(450円)。
こちらは久しぶりに購入した気がします。
まず目の前にして広がってくる香りと、口に入れて鼻から抜ける香りと。
今までにも何度かいただいていますが、この日は特に鶏が分厚い切り出しだったように思います。
パンチのあるスパイスの香りの中からグンと鶏の香り、そして炸裂する脂身。
続いてヴィエノワズリー。
ヴィエノワーズ・ナチュール(250円)。
今回は3本購入。
全体にむぎゅっと詰まった生地感ながら、シュクッと心地よい歯切れ。
クープ1つ1つの長さ、深さ、火入れ。
それぞれが掛け算になって生まれた表面の食感が、ヴィエノワーズと僕の口のファーストタッチ。
この一瞬がたまらない。
3つ買っておいてよかった、4つ目も買えばよかった。
マルジョレーヌ(350円)。
かなり久しぶりに購入できた気がして、過去記事を振り返ってみたら2年ぶり近かったです。
より詰まった感がありつつ上品にほどけ、とけゆく生地は小麦粉が力強い香り。
中にはオレンジのコンフィが入っていて、形勢を一変させる妖しく艶やかな魅惑の香り。
クロワッサン・ブール(450円)。
クロワッサンと、バター増量のブールと何個ずつにしようかと並びながら考えていましたが、結局珍しくブールオンリーにしてみました。
バターが多い=焦げやすい=短時間で中心温度を上げるためにザックリ切り込んでいるのではないかとお見受けしますが、こちらのお店のことですから他にも意味があるのかも。
1つ帰り道にいただいてみましたが、焼きたてが次々追加される熱々クロワッサンとは違いますが、それでも持ち帰ったりリベイクしたりして食べるのとは別物。
中心近くに差し掛かったときのバターの勢いが圧巻でした。
そして持っていた手はバターでテッカテカで"アッカーン"でした。
そしてタルト。
バナナとココナッツのタルト(850円)。
タルト生地はサックリした中にチャリチャリした歯触り。
ちょっと塩気も感じたように思います。
バナナは特別甘みを添加することなく、焼けた香りはちょっと乾いた南風。
想像していたよりは硬派でしたが、バナナやココナッツの香りといった「期待したポイント」はすっかり押さえられて、ぐうの音も出ない1品でした。
タルト・ミルティーユ(850円)。
ミルティーユはフランス語でブルーベリーのことと説明されることが多いですが、厳密には違うフルーツなのだとか。
切り立った角、端正が出で立ちが素敵。
ピスターシュは想像より1歩こちらに迫って来るような押しの強い主張、言うなれば壁ドンの如き切迫感。
ところがミルティーユも負けておらず、バーンと巻き返す爽やかな酸の香り。
この不均質な態様が、あっちに濃厚、こっちに濃厚の波を生んでいるのだと思います。
夏みどりとマンゴーのタルトタタン(750円)。
夏の青いりんごを使ったタルトタタン、この日はマンゴー入りでした。
青いタルトタタンは初めて見る気がします。
しかもめっちゃバニラ。
「バニラ高騰のため値上げ」としているお店があったら責めないであげてほしいご時世の中、夢でも見ているのかとつい頬をつねりたくなるバニラの量。
地獄のような状況の中で、夢を見せてくれるシェフには頭が上がりません。
クレオールの夏(850円)。
パイナップル、エレール、ピスターシュのタルト。
ナパージュで覆われたパイナップルは溢れ出しそうな果汁を漏れなく蓄えていて、ひとたび歯で圧をかければとってもジューシー、そこは夏、常夏。
全体のバランスの中での感じ方なのか、ピスターシュの香りも幾分さわやか。
ミルティーユの方は"濃縮感"がありましたが、こちらはフルーティーなアロマ漂うピスターシュでした。
というわけでたくさんいただくことができて大満足。
とはいえもちろん「もっと買えばよかった」という気持ちや、狙っていたけど間に合わなかったものがいくつかあるのも確かなので、また再訪を。
リベンジを誓いたいと思います。