夏メニューをいただきに三田のコート・ドールへ。
この日は実は当日連絡だったのですけど、悪天候のおかげか、
「今日は空いてます!」
と予約を入れることができました。
初めてのテーブルに着席。
この日のメニューはメインだけ肉か魚か選べたので、お肉を選択しました。
ガス入りのお水。
コート・ドールさんのはスルジーヴァというイタリアの軟水でした。
あまり他では見かけない気がするのですけど、とても飲みやすいお水ですね。
「まず最初に、赤ピーマンのムースを召し上がっていただきます」。
初訪問前にシェフの自伝で拝読して以来、思い入れのあるメニューなのですけど、ようやく再会することができました。
メニュー説明で「赤ピーマンのムース」と聞いたときの気持ちの高まりといったらもう。
赤ピーマンのムースと、下にはトマトのピューレ。
原型となったお料理は、斉須シェフのフランス修行時代の盟友ベルナール・パコー氏の考えた赤ピーマンのババロア。
ベルナールは、エジプト人の名優のお抱え料理人を長いこと務めた経験から強烈な個性ある味わいに寄っていったのだとか。
シェフが「珊瑚色」と表現する淡くも濃いムースに、キラキラと輝く赤ピーマンのピューレの組み合わせを「ガスパチョのルネッサンス」と呼んだのだとか。
ムースといってものっぺり濃厚な舌触り。
記憶よりはるかに濃厚で重たいムースに、きらびやかに鮮やかな酸味を放つトマト。
ガツンときます。
正直このメニューが1番の目的だったので、この時点で大満足でした。
著書で読んだという事情も加わって、美味しいだけでなく愛らしく見えてくるメニューなのですよね。
最高でした。
シェフがこだわって使うのはJOHANのパリジャン。
正直なんてことないパンですし、温めてさえいないのですけど、料理やソースが合うように作られていてとても美味しくいただけるのですよね。
冷製梅干しと大葉 シソのスープ。
こちらも夏のスペシャリテのひとつ。
シェフが日本に戻られてから、日本の食材を自分というフィルターを通していかにフランス料理に仕立てるかを考えて作った1品。
梅干しは、日本の食卓にあって、誰もが体調を崩したときにおかゆに乗せて食べる、日本人にとって常備薬のような食材。
シェフも23歳でフランスに渡った際にはカバンに詰めていったのだとか。
この家庭的な食材を、お店の料理として地味に、それでいて表立つポジションにしたくてスープにされたそうです。
梅干しを選ぶという発想が斉須シェフらしいなあと思うもう1つの理由は、酸味。
シェフはフランス料理において酸味というものに重きを置かれていて、「酢の強烈さが不得意だとフランス料理はしんどい」とさえおっしゃっています。
味の弱い日本の野菜でフランスの味を再現するのに、よく酸味を添加されるのですよね。
その点において、梅干しはフランス料理に通じる酸味の強さであると。
中央に飾られるのは金糸瓜。
蒸かしてほぐすとこんな糸状になるのですけど、これさえビネガーでマリネしてあってしっかり酸味を感じます。
ベースはトマトなのでガスパチョに近い味わい。
アボカドが入って、エスプーマ系の食感が出ています。
そしてもちろん酸味は強烈、夏の暑さやじめじめした湿度を吹き飛ばす力強い爽快感でした。
フランス産小鴨のロースト。
奥にはジャガイモのガレットとインゲン。
パッツンパッツンに張りのある食感。
脂は案外強くなくて、身の味の濃さが際立ちます。
皿が出てきたときから香っていた、ジャガイモのガレット。
中はトロッと仕上がっていました。
口直しのソルベは、パスティス。
フランスのリキュールですね。
ハーブ系の香りですが、かなり強烈な爽快感。
太い苦みもあって、これは口が直されます。
デザーとは白ワインのムース。
北海道小樽のナイアガラというワインを使っているそう。
ベースはアーモンドの生地かな。
トップを覆うゼリーもワインで、むしろこちらの方がフルーティーで瑞々しいですね。
ワインといってもアルコールっぽいヒリッとした辛さは感じず、ぶどうの香りがデフォルメされて華やかなになったような味わい。
3層だけのシンプルな構成ですが、バランスの良さなのか印象がまったく平板になりません。
食後はハーブティーをいただきます。
食べ終わったときには、
「きれいに食べていただいて」
だったり、食後のカフェのときには、
「ゆっくり過ごしていってくださいね」
だったり。
折々のお言葉が温かくて心地よいのですよね。
この日のお茶菓子は、ヘーゼルナッツのマカロン、アーモンドのチョコ掛け、そしてパートドフリュイ。
酸味のキラキラしたキウイのパートドフリュイ。
お土産に買って帰りたいくらい味わいの光る1品でした。
この日は、決まったメニューだった赤ピーマンのムース、梅干しのスープ、白ワインのムースがどれも最高としかいいようのない品々でした。
次はアラカルトにしようかな、と思いながら、こういう思いをしてしまうと次もまたランチにしようかなという気持ちになってしまいます。
幸せでした。
ごちそう様でした!