9月8日(日)、8月にすぐ近所に移転したという鮨はしもとさんのお席にお誘いいただけたので、早々に新店舗に伺うことができました。
通りさえ間違えなければ、見逃すことはあり得ない貫録。
新店舗になって新たに個室を設けたようですが、まだ使用していないそうで。
外に置ききれない胡蝶蘭の保管場所になっていて、ギュウギュウに詰まっていました。
外に置く胡蝶蘭は日によって違うとか伺いましたが、こちらは定位置かもしれません。
L字型のカウンターだった旧店舗と違い、新店は一列。
カウンター向こうの橋本さんとの距離が少し近くなった上に、調理台がやや高くなったようで手元のお仕事がとても見やすくなっていました。
思わずずっと見入ってしまいます。
季節の茶豆。
ドリンクはペリエで洒落こみました。
青みの強い風味に、風味そのままでちょっとクセのある旨みの強い味。
黒埼産でしょうかね。
今シーズンは自分でもいくつかの産地のものを買ってみましたが、やはり「いい」とされる産地のものは香りが濃いですねえ。
お醤油と、塩、わさび。
この辺りは変わらぬスタイルで。
定番の青森のひらめからスタート。
いつも朝締めでふわふわ、淡い味わいが特徴なのですけど、今回は比較的歯応えが残って味も強かったように思います。
エンガワはさらに味濃く。
クエ。
肉厚ながら、しっかり寝かせてあって身はやわらか。
脂があるので、旨みの中にも甘みを感じます。
藁で燻した鰹。
鰹の強い香りには、辛子を合わせます。
赤身の濃さの割に、食べると脂がかなり強め。
色々特徴的で、主張の立ったツマミなのですけど、やっぱりそもそもの鰹の香りが力強くて素晴らしいですね。
蒸しアワビと肝のソース。
カットする前を見せてくださいましたが、相当な大きさでした。
大きければいいというものでもないのでしょうけど、やはり大きい方が香りだけではない味わいも濃くなりますし、火入れで食感も出しやすいようです。
はしもとさんでいただいてきたアワビのイメージからいうと、大分強めの食感が残っていたように思います。
とはいえ、磯の香りが浮くことなく、旨み中心の味わいの中で香りが絶妙にニュアンス程度に効いていました。
アワビを食べ終えたところで、お皿に残った肝ソースへシャリとイカを加えて、さらに追い肝ソース。
思わず「ありがとうございまっす!」とお礼の言葉出てきます。
鰯巻き。
たくあん、ガリ、大葉など。
大葉の香り、ガリの酸味なども特徴的に味わいを方向付けていますが、たくあんの甘みが入っているところが特に印象的に感じました。
酢締めにした鰯なので、こちらもさっぱり。
茶碗蒸しは、季節の新いくら。
中には湯葉、仕上げにおろした柚子皮。
柚子皮がかなり香ります
ぽぽぽぽっと軽く弾けるいくら。
中で湯葉がミルキーな出汁の役割を担っています。
筋子味噌漬けと、新いかゲソ焼き。
筋子ははしもとさんでは定番。
ネッチリと濃密な食感に仕上がっています。
新いかゲソは初めていただいた気がします。
ぷにょんぷにょんと柔らかな食感ですが、味わいはしっかりイカ焼きの風味が出ていて面白いです。
雲丹の塩漬け。
雲丹の持つ磯っぽい風味が濃縮してかなり強い味になっていますね。
焼き物はのどぐろ。
「魚がないときに重宝する」のが、のどぐろなのだそう。
新店舗になって大きく変わったことのひとつは、焼き物が炭火焼になったことで、内装などは特にこだわりがなかったそうですが、「そこだけはお願いした」と橋本さん。
旧店舗での、塩気が強めで水分をしっかり抜いた焼き物もあれはあれでよかったのですけど、皮目がバリバリで、脂で弾けんばかりに身の膨らんだこちらの方が個人的には好みですねえ。
皮と身の食感のコントラストが鮮明。
これは今後も期待してしまいます。
握りが始まる前にガリが用意されます。
きめ細かくなめらかな質感と、やさしい味付けが印象的。
指を拭うお手ふきは、新たに導入されたでしょうか。
握りは手で食べる派なので、地味にありがたいです。
小肌でスタート。
不動の一番手ですね。
脂の味が前面に出て、酢締めの香りが爽やか。
味の構成でいうと、トマトクリームみたいなイメージ。
続いて新いか。
軽く巻き込むように握ってありますが、ぽにょんと口の中で開く食感が絶妙です。
かわいい。新いかかわいい。
ぶり。
脂はまだ軽めで、まだちょっと酸味も感じられるほど。
最高潮の時期になるとシャリを飲み込むような脂乗りだったりしますけど、味のバランスとしてはこれくらいがいいように思います。
赤身漬け。
赤身は、もう冬のまぐろに近い香り、旨み。
中とろ。
中とろ、は赤身と同じ個体で、三厩産。
橋本さんの握る手元も見やすくなっています。
横一線のカウンターになって橋本さんからもお客さんが見渡しやすいようで、コミュニケーションしやすくなったというようなこともおっしゃっていました。
新店舗の高揚感もあるかもしれませんが、何だか橋本さんが楽しそうで何より。
真鯛。
八幡浜。
身のハリと融け具合、皮目の弾力に絶妙なリズム感があります。
新店舗でも注目していきたいお湯呑。
こちらは薄手で直線的な飲み口。
秋刀魚。
脂弱いけど肉厚で香りもいいです。
鰆。
藁で燻してあります。
チーズのようなコクのある旨み。
北寄。
ふやふやでコリコリで甘々。
すごく大きく見えましたが、これくらいを使うことが多いとか。
今までも見てきたはずですが、はっきり見えるようになったことでインパクトが大きくなったのかも。
まぐろがもう1貫。
カマ下の辺り。
A5ランクの牛肉のように脂が乗っています。
超濃厚。
橋本さんの足場も少し高くなっているようで、握りを置く姿勢も「上から下へ」になった感覚があります。
オーラというか、威厳が増して感じられるように思います。
お店の造りって大事ですね。
車海老。
ばつんと弾ける絶妙火入れ。
こちらはお弟子さんが厨房で火入れをして持っていらっしゃるのですけど、「厨房の方はまだバタバタしてる」とか。
橋本さんからの指示の声も聞こえにくかったり、その辺が課題だったりするようですが、「大声を出せば聞こえると思うんですけど、それも何かなと思って」と橋本さんは余裕の笑顔でした。
ゴリゴリ系。
雲丹。
強い甘み。
穴子。
ざらっとした身の食感がしっかり。
シャリ側の皮目がどろろっと濃厚。
メイチダイ。
キュッと歯にかかって表面の食感、肉厚ながらもっちりふわり。
強い旨み。
オーソドックス系。
シラカワ。
少しねっとりして、旨みに加えて甘みも。
このネタをこの厚みできますか!という意外性もありました。
玉子焼き。
つまみながら色々な話を。
以前のお店は、お客さん側の会話に入るべきか否か迷ったときは、橋本さんは「退く」選択をしていたように思っていたのですよね。
それが新店舗では、そもそも「入るべき」タイミングが増えたようで、いい意味でお店の雰囲気が変わっていました。
意外なところで意外な変化が生まれるなあと思わされることがちょこちょこあったので、今後、料理や握りにもいい変化が生まれるかもしれないことを期待しながら、ごちそう様でした!