夕ご飯も温泉宿「由縁別邸」さんの中でいただきます。
お店は茶寮の隣りにある「割烹・月かげ」さんです。
旬の食材を楽しむ会席料理のコースです。
代田で晩年を過ごした歌人・齋藤茂吉の歌集のタイトルからとった店名「月かげ」と同様、コースの名前「のぼり路」も歌集からとったそれのようです。
茶師十段厳選・玉露。
スタートは食前茶から。
二番寄りの一番だしくらいの濃度高めの旨みとほんのり甘み。
するする飲める感じというよりは、グッと喉に来る感じの濃さの旨み。
少量ですが、お腹から内臓が活性化される感覚になります。
先付は大分県産有機野菜のサラダ 自家製玉ねぎドレッシング。
カダイフを砕きつつ、玉ねぎの甘みがやわらかいドレッシングで和えながら食べ進めます。
肉厚な葉物と、湯剥きされた甘い甘いトマト。
続いて取り皿が出てきまして、
前菜は旬の山海佳肴。
品数豊富で豪華な前菜ですが、器の可愛さも相俟ってより一層絢爛に見えます。
説明をひと通り伺ったら、どれからいこうか迷いつつ、いざ。
人参ムースにポン酢のジュレ。
フランス料理の前菜で見かけることのあるお料理の和風アレンジという感じ。
人参の甘みとポン酢の酸味でポップな味わい。
菜の花辛子和え。
ひと口ですがビビッドな辛子の風味がガツンときます。
胡麻豆腐となまこ酢。
軽めのタイプの胡麻豆腐に見えましたが、しっかりねっとりと濃厚なものでした。
器がどれもかわいいです。
鯛の塩辛クリームチーズ。
鉄板の組み合わせ。
からすみ大根。
厚めにスライスしたからすみと、サイコロカットで存在感のある大根。
こちらも鉄板のマッチングです。
お椀は薄葛仕立て 河豚うずみ豆腐 寸葱 木の芽。
「うずみ」というのは「うずめる」という意味だそうで、河豚皮をうずめたお豆腐仕立てのお料理ということのようです。
河豚のお出汁も感じられる薄葛が絡んだうずみ豆腐は、どこのひと口をとっても河豚皮がクニクニッと楽しい食感。
お造り、旬の鮮魚。
この日は長崎県産本鮪と三重県産アオリイカ。
冬のまぐろらしい深い旨み、アオリイカは寝かせた系でねっとり濃厚な質感と強い甘み。
浜名湖産生海苔とあしらい一式。
穂紫蘇を散らして、生海苔と絡めて。
風味を遊ばせながらいただきます。
焼き物は鰆の利久焼き。
蕗の薹味噌を添えてあります。
利久焼きというのは胡麻を表面にまぶして焼いたもの。
脂をしっかり落として味の詰まった身に、胡麻の香ばしさと甘みが乗ります。
蕗の薹味噌。
ひと口ですが、魚に添えて口に運ぶとかなりインパクトの強い味わい。
メインの煮物は鰻鍋。
鍋で鰻って初めていただく気がします。
聖護院蕪、九条葱、厚揚げ、木の芽、山椒。
ぐつぐつ煮えながら提供されます。
鰻の脂の広がったスープは、ちょっと肝吸いにも近いところがあるかもしれません。
煮えても味が抜けきることのない鰻はもちろん絶品でした。
後半は香りの強い山椒を振りつついただきます。
お食事の提供前に運んできてくださった釜炊きのご飯。
料理長自らシャッターチャンスタイムを設けてくださいました。
というわけで〆の食事は鶏ときのこと芹の釜炊き御飯。
それから味噌汁と香の物。
香の物には、出がらしのお茶を使ったという佃煮も付いていました。
さっぱりとした味付けですが、鶏ときのこの旨み、そして芹の独特な香りがクセになる味わいでした。
旅館で食べる粒の立ったご飯は格別。
甘味は杏仁ムース 抹茶ソース 枸杞の実。
茶寮でもこのメニューがありましたが、事前に確認して夕飯と被らないように注文していたのですよね。
杏仁豆腐に近いビジュアルですが、これはムース。
そして驚くほどエアリーで軽い質感だったので、杏仁豆腐をイメージして口に入れるとかなりギャップを感じる口当たりでした。
ふんわっと一気に広がる杏仁の香りが勢い強め。
かなり苦みのある抹茶ソース。
茶寮のわらび餅の黒蜜でも感じましたが、味変アイテムが強すぎるというか、元々の味がそれ自体いいというか、何もかけないでいただく方が個人的には好みだと感じる甘味でした。
というわけで、旬の食材を楽しむという謳い文句に嘘偽りのない内容の夕ご飯をいただけて大満足でした。
温泉宿で食べる夕ご飯という雰囲気、環境のよさも加えて心から幸せな時間を過ごせました。
ごちそう様でした!